インフォバーンで働く社員へのインタビュー企画。今回は、コミュニケーションデザイン第1事業部のコンテンツディレクター・白濵久史さんのお話をお届けします。
編集者、ライター、ディレクター、イベントプランナーなど、コンテンツに関わるさまざまな領域でキャリアを積み重ねてきた白濵さんが、インフォバーンに入社したのは2021年6月のこと。それ以来、数々の案件で培ったそのスキルを発揮されています。
歩まれてきた経歴の紆余曲折と、そのなかでも特に力を注いできた領域だというコピーライティングへの向き合い方、そして「キャリアは立体的にとらえるべき」と語るその仕事観について、お話をうかがいました。
インド哲学の研究生、コピーライターになる
――学生時代は、どんなことを学ばれていたんですか?
僕は大学でインド哲学を専攻していて、そのまま大学院まで進みました。「高学歴ワーキング・プア」という言葉がありますよね。そこからするとインド哲学は、身内でも「潰しがきかない」とされているようなニッチな分野で、研究を続けている学生には実家がお寺でゆくゆくは住職になるような人が多いんですよ。
その点、僕はまったく将来のことは考えずに、「哲学は何か面白そうだな」という軽いノリで入っていました。インド哲学は研究対象が主に仏教系とヒンドゥー教系の2つに分かれるんですが、僕は後者です。具体的には文献研究をしていて、いろいろな経典の時代ごとの解釈の違いを調べていました。まあ、ハッキリ言って地味(笑)。
――サンスクリット語の文献を読んでいたんですか? いやいや、すごいですよ。
サンスクリット語を英語に訳して、さらに英語を日本語訳に訳して、という地道な作業をしていました。よく東洋的な伝承で「徳の高い人は耳たぶが大きい」みたいな訓話があるじゃないですか。僕も図書館にこもって苦労しながら文献を翻訳したら、それが「偉いお坊さんの金玉がめちゃくちゃデカかった」という話だと判明したことがありました(笑)。
――学問としては重要だったりするんでしょうけどね(笑)。
当時の僕としては、「めちゃくちゃくだらないなあ、自分は何をこんなに苦労しているんだろうか」と思うときもあって……。本当に突き抜けた知的好奇心がないと、モチベーションが続かない気がしますね。
そもそも僕は、学部生時代にまったく就職活動をしてなかったんですよ。リクルート・スーツを着始めた友達に「なんか今日、パリッとした格好してるじゃん!?」って聞いていたくらいで、社会で働くことをまったくリアルに考えられなかった。
ただ、大学院に進んでから、求人媒体の会社でライターのアルバイトをしていたんです。当時は一般家庭にまでインターネットが普及し始めて、求人サイトもどんどん生まれていた時期です。その会社から社員として誘われたので、結局、大学院は辞めて社会人になることにしました。
そのあと一時、音楽雑誌の会社に移って編集の仕事をしていたんですが、ずっとコピーライティングの仕事に興味があって。実は僕の父親は広告業界でアートディレクターをしていて、小さいころから広告が身近だったんです。宣伝会議の「コピーライター養成講座」に通ってコピーライティングの勉強もしてました。
今はわかりませんが、コピーライターって基本的に新卒以外は経験者募集しかない職種で、応募してもなかなか通らない。そんななかでも唯一未経験からでも募集していたのが、次に入った求人情報サイトの運営や人材紹介サービス事業をしている会社でした。
――業界としてはまた戻ってきた感じですね。そこではどのような業務を?
最初は主に求人募集ページのコピーライティングをしていました。掲載企業を魅力的に紹介するコピーやテキストを考える仕事です。年間200本以上を制作していたんじゃないかな。めちゃくちゃ大変でしたけど、良い修行時代だったと思います。
そこには15年ほど在籍しましたが、入社6、7年くらい経ったころからは、実際に書くよりもメンバーの原稿をチェックしたり、教育したり、採用面接をしたりと、マネジメント業務が中心になっていって。現場に戻りたい気持ちがあったので、最後の3年くらいは新設された事業部に移って、お付き合いのある会社のホームページをつくったり、採用募集用の映像をつくったりと、企業の採用ブランディングを支援するような仕事をしていました。
――インフォバーンに転職されたのはなぜでしょう?
インフォバーンに入る前に、友人が勤めていたベンチャーに転職しているんです。イベントなどで使用する3Dホログラムのデバイスがありまして、それを使ってイベントの演出やサイネージ広告を手がける会社です。ただ、折悪くコロナ禍が来て、世間的にイベントというもの自体が開かれなくなってしまいまして……。
それならと、また転職活動をしました。キャリアとしてWebサイト、広告、映像、イベントといろいろなコンテンツに携わってきたので、手広く手がけている会社で、かつ自分のスキルを活かせる仕事を探すなかで、インフォバーンに行きつきました。今年の6月でちょうど3年目に入りますね。
コピーライティングで大切な3つの「へん」とは?
――インフォバーンに入社してからは、どのような案件を担当されましたか?
個人的に印象深い案件としては、コピーライティングを担当したものが多いですね。たとえば、新たな製品ブランド・ラインのブランディングページを制作した案件です。昔から付き合いのある映像制作会社にお願いしてスタイリッシュな写真を撮ってもらいつつ、それにハマるコピーをつくって、すごくカッコいいページに仕上がりました。最近の案件でも、制作したサイトのヘッドラインを提案したら、お客さんから「感動しました!」と喜んでもらえてすごく嬉しかった。
やっぱりコピーライティングは自分にとって、いちばん力も時間も注いだ領域なので、その経験は裏切らないんだ、一つの財産として自分の中にあるんだ、と実感できると嬉しいですね。
――白濵さんは、どのようにしてコピーを思いつかれるのでしょうか?
どんな会社にも、その会社の想いやカラーがありますよね。僕は人が好きで、相手と話していると、その人の本音や言葉にできない想い、心から伝えたいことが見えてくる。それをコピーとして乗せたい、良い形で伝えたい、という気持ちが第一にあります。僕の場合、オリエンテーション資料だけ読んでも、あまりアイデアが浮かんでこないんですけど、実際に人と対峙して話すことで良い言葉が浮かぶことが多いです。
それはおそらく、たくさんの企業を取材してきた経験からだと思います。人材や採用に関する悩みって生々しいじゃないですか。表にはとても出せないような苦労話を取材中に聞くこともある。カッチリとした大企業から、社員数人の小さな企業、社長がお酒を飲みながら出てくるようなぶっ飛んだ会社まで、たくさん人と会って話をしてきたことが、僕の仕事につながっている気がします。
――コピーライティングで大切にしている視点はありますか?
まずコピーの方向性として、クライアントが伝えたいことから外れてはいけませんよね。それはコンテンツのディレクションと同じで、おかしな方向に行かないよう気を配っています。
ただ、相手が言ったことをそのままコピーにしても、それはそれで良くない。僕のコピーライターとしての修行時代にお世話になった方がいて、その方からはよく「『言葉の摩擦係数』を考えろ」と指導されていました。引っかかりがないツルっとした言葉では、人の目には止まらない。たとえば「社員みんなが仲良い会社です」と言われても、まったく響かないですよね。「摩擦係数が高い言葉を選べているか」「引っかかりをどうつくるか」は、常に意識していることです。
僕はコピーライティングには、3つの「へん」が必要だと思っています。1つ目の「へん」は、普遍や遍在など「あまねく」の「遍」です。これは、誰が読んでも何を言っているのかがわかるとか、普遍的であることが必要ということです。
2つ目は「かたより」の「偏」です。「言葉の摩擦係数」もそうですけど、世界観や引っかかりを生み出すには、ある種の偏りというか、個人的な価値観のようなもの……たくさんの偏在している要素の中から、ピッタリくるものをチョイスできるような感覚が必要です。
最後が、「かわっている」の「変」ですね。人の心に残るものには、一瞬「ん?」と思わせるところがあります。切り口や言い回しが、普通では思いつかないようなものであることを心がけないとな、と思ってます。僕はやっぱりコピーに自分が持っている個人的な価値観も乗せたいんですね。それが見た人にとって、解釈する余地がある豊かな言葉につながると思うんです。
――わかりやすいだけでは印象に残らないし、奇矯すぎると伝わらない。そこのバランスを取りながら、短いコピーで表現するのは難しいことですね。
それこそAIでコピーをつくりだす取り組みは、生成AIが話題になる以前から盛んですが、ことごとくうまくいってませんよね。なぜかと言うと、コピーライティングというのが「つくり手の人格が反映される仕事」だからだと、僕は思うんです。
コピーライターとして尊敬できる方々とたくさんお会いしてきましたけど、変わっている人、面白い人が多いんですよね。実際に、そうした方々のコピーを見ると、生き方や個性が反映されている。そこがコピーライティングの面白さだと思っています。
キャリア観は立体的に、仕事は自由自在に
――職場としてのインフォバーンの印象は、実際に入ってみてどうでしたか?
「クライアント企業の力になる」ことを大事にする会社であったことが良かったです。長くBtoBの仕事をしてきたので、クライアントとの向き合い方、取材の仕方、情報の引き出し方については覚えがありますし、意見や企画を出してコンテンツの形にする仕事もやってきたことなので、自分のキャリアを活かせる感覚はすぐに湧きました。
特に最初の担当案件は、僕の経験を見てアサインしてもらえて、人材系企業の案件だったんですよ。実際に業界知識として知っていることも多かったので、馴染みやすかったです。
入社当時に印象的だったのは、取材の許可取りやパートナーさんとの契約といったプロセスを丁寧に踏んでいるところですね。そのあたりは、比較的なあなあでやっていたり、担当を分けている会社も多いなかで、インフォバーンでは案件担当者が責任を持って自らやっています。
――同僚の社員については、いかがでしょうか?
まず「人が良い」と感じましたね。コミュニケーションに気遣いがある人が多くて、一緒に働くうえで気分よく過ごせる。趣味人も多いので雑談をしていても楽しいし、業務外のことでも勉強になることが多いです。僕は刺激を受けて、読む本のジャンルの幅も広がりました。
あと、20代前半くらいの若手社員でも、しっかりしていて優秀ですよね。これは新入社員採用のスタイルから来るものじゃないかと思います。たとえば、営業色が強い会社だと、「右向け右」と言ったらガッとそっちを向けるタイプの人材を欲しがったりしますが、インフォバーンの場合は、自律・自走できる人、自分の意見を言語化できる人を選んで採用しているんじゃないかと思います。若いうちからバンバン大きな仕事も任されていますし、大変な仕事でも乗り越えていきますし、年齢はずっと下でも「すごいな」「優秀だな」と感じる人が多いです。
――働きやすさについては、どうでしょうか?
インフォバーンは働き方の自由度がすごく高いですよね。リモートで働くこともできますし、忙しくはあっても仕事量が増えすぎてパンクしないように配慮してもらえます。僕には娘がいて、夜は面倒を見たり晩御飯をつくったりする必要があるんですが、家庭と仕事をちゃんと両立できています。
昔は家に仕事を持ち帰って休日にこなすことも多かったんですが、インフォバーンに入ってからはほぼありません。それと社員みんなが疲弊しているような職場だと、「子どもの行事があるので、この日は休みます」とかってなかなか言い出しにくいじゃないですか。そういう空気もまったくないです。
――今後、インフォバーンでやりたいことはありますか?
インフォバーンは武器が多い会社だと思うんですよ。サイト制作や記事制作が中心にありつつも、イベント運営や映像制作もするし、コンテンツやマーケティングに関わるクライアントからの依頼に対してなんでも応えられる土壌がある。
実際に、付き合いができた企業の方に、たまたまインフォバーンが映像制作もしていることを話したら、「ちょうど今、映像をつくりたかったんです」と仕事の依頼に結びついたことがあります。ある意味、僕が勝手に営業をして受注したわけですけど、社内で歓迎してもらえたし、プロジェクトとして進められています。
インフォバーンは業務の面でも自由度が高いので、そのチャンスを活かして新しい仕事をどんどん開拓していきたいですね。
――最後に、この記事を読んでインフォバーンに興味を持ってくれた方に、メッセージをお願いします。
先ほどの話につながりますけど、インフォバーンは社内にWebやコンテンツのディレクターもいれば、デザイナーもアートディレクターもいて、クリエイティブに関することは一通りできる体制があるじゃないですか。だから、その武器を使って、いろんなことをやってみたいとか、自分で率先してプロジェクトを進めたいとか、挑戦に前向きな人が来てくれたら良いんじゃないかと思います。
キャリアの話をすると、僕はいまだに将来のことをちゃんと考えてないです(笑)。「なんとかなるだろ」って楽天的な気持ちがいつもある。それは自分が、仕事より何より「気分よく生きていたい」という想いが強いからだと思います。
昔、メンバーの人からキャリアやいろいろな相談を受けました。そのなかで、「得意⇔不得意」と「好き⇔嫌い」の四象限で仕事の向き不向きを考える人が多いなと感じたことがあります。もちろん、それも一つの考え方だし、僕も一つひとつのタスク単位でその捉え方をするのはありだとは思います。ただ、仕事ってもっと立体的なもので、軸は縦にも斜めにもあると思うんですよ。それなのに、「苦手な仕事だ」「嫌いな仕事だ」という想いに振り回されちゃうと、仕事がつらくなるだけじゃないですか。
「働き方」と「生き方」って、年齢を重ねるとどんどん近しいものになっていく気がしていて。だからこそ、キャリアはもっと柔軟にとらえて、「自分がいちばん心地良い位置はどこか」を考えたほうが良い働き方ができて、それが良い生き方につながっていくんじゃないのかな、と思っています。そのあたり、僕は自由でいたい、自在でいたいと思いながらインフォバーンで働いていますね。だから個人的には、いろいろな経験を積むなかで、目の前にある仕事に飽きてきたような人は、キャリアパスは抜きにしてインフォバーンに合う気がしています。