1. 平穏に見えた受注表
毎月同じ時期に、同じ取引先から、同じような台数の発注が入る。自転車をBtoBで販売する私たちにとって、それは何年も続いてきた「当たり前の風景」だった。営業担当は既存の関係を維持することに時間を使い、新規開拓は後回しになっていた。誰も、それがいつまでも続くとは思っていなかったはずなのに、日々の忙しさの中でその不安と向き合うことを、私たちは先延ばしにしていた。
2. 突然届いた一通のメール
ある月の朝、いつものように受注表を開くと、そこには見慣れた数字がなかった。売上の大部分を占めていた大口の取引先から、一通のメールが届いていたのだ。文面は短く、事務的だった。読み終えるまでに、そう時間はかからなかった。
3. 「もう発注できません」
理由は、先方の仕入れ体制の見直しだった。海外メーカーとの直接取引に切り替える、という内容だった。価格では敵わない。それは薄々分かっていたことでもあった。社内には動揺が広がった。「値下げで食い下がるべきか」「別の大口顧客を探すべきか」。会議室では毎日のように議論が続いたが、答えはすぐには出なかった。
4. 迷いながら、動き出した理由
議論を重ねる中で、ある営業担当が口にした一言が流れを変えた。「うちが本当に売ってきたのは、自転車そのものじゃなくて、現場に合わせた提案だったんじゃないか」。振り返れば、私たちの強みは価格競争ではなく、配送業者や企業の物流現場に合わせて仕様を調整し、導入後の保守までを一貫して支える対応力にあった。そこで私たちは、単なる「販売」から、法人の輸送課題を解決する「提案型のパートナー」へと、事業の軸を移すことを決めた。
5. 今、私たちが届けているもの
今では、ラストワンマイル配送を担う企業向けに、車両の選定から運用後のメンテナンス体制までを含めた提案を行っている。あの朝の一通のメールがなければ、私たちはきっと今も「待つ営業」を続けていたと思う。失った受注の大きさ以上に、私たちは自分たちの強みを見つめ直す機会を得た。この転換を一緒につくってくれる仲間を、私たちは探しています。