人は、目に見えるものばかりを追いかけてしまう。
数字、成果、評価、肩書き。
手に入れた瞬間は嬉しいのに、
しばらくすると、また次の何かを求めてしまう。
ある男性がいた。
仕事は順調で、周りからも評価されていた。
忙しさを理由に、
家族との時間も、友人との約束も、
「また今度」で先延ばしにしてきた。
ある日、久しぶりに実家へ帰ると、
母が小さな声でこう言った。
「最近、あなたの声を聞いていなかったから、
元気なのか心配してたのよ」
その言葉を聞いた瞬間、
胸の奥がズキッと痛んだ。
自分は“忙しい”という言葉を盾にして、
大切な人の気持ちを置き去りにしていた。
誰かの優しさに甘え、
誰かの時間を奪い、
誰かの想いに気づかないふりをしていた。
帰り際、母は笑って言った。
「あなたが元気なら、それでいいのよ」
その笑顔は、どこか少しだけ寂しそうだった。
家に戻る途中、
彼はふと思った。
自分は何を大切にして生きているのか。
何を守り、何を失ってきたのか。
そして、これから何を選ぶべきなのか。
人生は、
“何を手に入れるか”よりも、
“何を大切にするか”で決まるのかもしれない。
忙しさに流されていると、
大切なものほど静かに遠ざかっていく。
気づいたときには、
もう戻れないこともある。
だからこそ、
立ち止まって考える時間が必要だ。
今、自分は何を大切にしているのか。
そして、それは本当に守るべきものなのか。
答えは、
いつも自分の中にある。