unlockの人気コラムシリーズの第2弾です。2020年4月18日に書きました。最初のコロナ緊急事態宣言から約1年のタイミングですね。
新型コロナウイルスの感染拡大を機に、世界が不況入りした。
その前から不況は予想されていたが、そのきっかけと規模はいつも予想できないが、今回もこれまでを上回るレベルで誰にも予想できなかっただろう。
多くの企業にとって、不況は危機である。しかしその一方で、「ピンチはチャンス」とよく言われる。本当だろうか?
不況時の経済現象
まずは一般的な不況時のピンチ、つまり不況のデメリットを改めて整理したい。
<不況のデメリット>
・消費や投資の絶対額や機会や頻度が縮小し、モノやサービスが売れにくくなる
・コスト上昇の影響を価格転嫁しづらい
・労働者の賃金が上がりづらく、解雇が発生しやすくなる
・資金調達の難易度が高まる
「ピンチはチャンス」なのか?
このようなデメリットや危機が発生する不況。当然相応の難しさはあるものの、我々としては、基本的にこの危機をチャンスと捉えている立場だ。
その理由として下記の4つを挙げたい。
1.不況時のメリットを活かせる
不況は先に挙げたデメリットだけではなく、好況時下のデメリットが好転するというコインの裏表の側面を持っている。これが「ピンチはチャンス」と言われる一般的な所以である。
不況のメリット
・人の採用がしやすくなる
・モノの値段が下がり、資材や原料等の調達がしやすくなる
・売るのが難しくなるので、商品やサービスの品質、価格、コストが磨かれる
・雇用不安が高まるため、仕事や組織の緊張感が高まり、仕事の品質が向上したり、社内改革が行いやすくなる
・不採算事業の撤退など、経営の健全化のために思い切った決断を行う機会が増える
日本社会の構造問題でもある人手不足問題による影響が、求人倍率上は緩和されるだけでも多くの企業にとってチャンスと言えるだろう。
一方で、難易度が上がるのがやはり「販売」だ。新規事業における「販売」が概念として抜け落ちがちなので要注意。これまで以上に慎重に検討し、粘り強く取り組む必要がある。
※新規事業によくある誤解 #1「新規事業は、新しい商品サービスを作ること」
2.パラダイムシフト
これまでの不況よりも、大きなパラダイムシフトが起こる。今回の不況の最大の特徴。人の価値観が変わると行動が変わる。大きなチャンスと考えるべきポイントとなる。
一般論としても、新規事業は法改正のタイミングや、技術革新、そして今回のような大きな災害などによる価値観変化のタイミングで生まれやすいと言われている。
今回コロナショックで起こる社会構造の変化
項目のみ列挙すると下記のような変化が起こると考えられる。
・人の関与度の低下圧力の高まり
・効率化に対する後ろめたさの減退
・非DX、非デジタル化企業の求心力低下加速
・企業の内部留保に対する批判の減少
・団塊世代の引退加速
・企業の再編と買収型起業の増加
・中高年と若い世代の収入差の縮小
・女性の社会進出の増加
・都市部への集中度合いの減少
・プライバシーと安心安全との均衡変容
※上記の詳細と「コロナ後に伸びる新規事業」についてはこちら
3.緊急度の高い仕事の減少
新規事業は立ち上げというものは、重要度は非常に高いが、緊急度は案外高くない場合が多い。新規事業に限らず、重要度は高いが緊急度が高くない仕事は、重要度は低いが緊急度が高い仕事などにより、後回しにされがちだ。つまり我々は日々忙殺されているのだ。
今回の新型コロナウイルスによる不況は、他の不況と異なり、経営者にとても時間ができている。社会全体的に多くの仕事がストップし、夜も飲みに行けず、休日もゴルフに行けず、自宅待機なのだ。こんなに時間ができることは、多くの人にとってこれまでなかったはずだ。
4.内部留保あるうちに
約半年ほど前の日経新聞に「内部留保、7年連続で過去最大」という見出しが踊った。批判されがちな内部留保だったが、皮肉にも今回のコロナ・ショックにおける企業の生命力を大きく支える形となった。
感染拡大収束と経済回復がどの程度のペースでやってくるかだが、新規事業のある意味での原則において、新規事業は資金に余裕があるうちに行うべきである。
理由は、一般的に新規事業立ち上げはお金がかかるものであり、その事業が成長して次の柱となるまでには少なくとも3年以上の時間がかかることが多いからだ。
そして「貧すれば鈍す」という言葉もある。余裕があるうちの意思決定が求められる。
まとめ
新型コロナの収束が見通せない状況において、このような内容は呑気に映るかも知れない。
一方で前述したように、新規事業立ち上げには時間とお金がかかるものであり、今回のコロナ禍により大きなパラダイムシフトが起こること、そして人手不足時代に優秀な人材を確保できるチャンスが拡大していること。
これらを念頭に置いて社会や身の回りを観察することで、機を逃さず、次の新しい世の中に対応した事業を生み出すことができるはずだ。