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ITの力で、すべての人が考古学を楽しめる未来を。ラングが考える考古学の魅力と社会貢献

株式会社ラングは2003年に創業した岩手大学発ベンチャーです。考古情報デジタル処理会社として、先端技術を活用した埋蔵文化財の形状計測を手掛けています。

例えば、世界で最も有名な遺跡であるエジプト・ギザの三大ピラミッド。その内部構造や建造方法の謎を解明するため世界各国の考古学者らがしのぎを削る中、ラングは基礎資料となる高精度の立面図を作成しました。

「誰もが簡単にアクセスでき、理解できる情報」にすることをミッションに、最先端の3Dデジタル技術を駆使し、新時代の考古学を創るため日々奮闘しています。

今回は、考古学について多くの方に知っていただきたいと思い、考古学とはいったい何なのか?どんな社会貢献をしているのか?そしてラングは考古学領域でどんなことをしているのか?といった内容を(株)ラング代表取締役の横山に語っていただきました!

プロフィール

横山 真(よこやま しん):大学、大学院で考古学を専攻したのち、株式会社ラングの取締役に就任。現在は代表取締役として、発掘調査の効率化および考古学の発展に貢献する。

考古学の力で、真実を後世に残す

——そもそも、考古学とは何でしょうか。

考古学とは、遺跡や遺物など、人類が残した物質を資料として、これまでの人類の活動を明らかにしていく学問です。

よく似た学問に、人類が残した文書・資料を読み解く「文献史学」があります。文献史学との違いは、研究の基礎資料が文書ではなく、土器や石器などの「モノ」であることです。


——考古学の魅力について教えてください。

私が考える考古学の魅力は、大きく分けて2つあります。

1つ目は、物証によって真実を明らかにできることです。

文献史学で研究するのは、人の手によって記録された文書であり、書き手の意図や主観の影響を受けやすいという特徴があります。

一方で、考古学の研究対象は文書ではなく「モノ」です。そのため、物証によって何者にも左右されない真の歴史を知れることが、考古学の魅力です。

分かりやすく交通事故現場に例えるのであれば、目撃者や被害者、加害者の証言が「文献史学」、衝突によって破損した車体が「考古学」にあたります。

破損した車体(=考古学)を分析すると、被害者や加害者の証言(=文献史学)とは異なる「真事実」が物証によって浮かび上がってくる…というイメージです。

2つ目は、学問のハードルが低く、誰でも学びやすいことです。

考古学において行われた発掘調査の結果は、調査報告書という形で公開されます。高度な専門知識がなくても、調査報告書の内容を元に誰でも考古学に触れることができるのです。

実際、普段は考古学に関係ない仕事をされていても、休日に研究を楽しんだり、学会に参加されたりする方も少なくありません。


——考古学はどのような形で社会に貢献しているのでしょうか。

「過去のことを知って何の意味があるのか?」と批判的に聞かれることがあります。

確かに、遺跡の情報は、現在の経済活動に影響を与える資料か?つまり、都市の防災計画や、原子力発電所の立地、構造設計の主要な資料となっているか?と言われたら、残念ながら現状はそうではありません。

では、「社会貢献しない学問なのか?」と言われれば、私はそうではないと思っています。

これは大学時代の教授の話です。

その教授は戦争中、軍国少年でした。敗戦直後、神話をもとに書かれた歴史教科書のほとんどの文章が黒塗りされ、真実が消されていたことに衝撃を受け、「本当の歴史は土の中にあるんだ」ということを知って、考古学者を志したのです。

先ほどの事故現場の「証言」と「物証」の例もそうですが、例えば、かつて遺跡があった場所に、道路やビルが建設されたとします。遺跡に関する記録がなければ、建設後に遺跡を研究しようと思っても、真実が分からなくなってしまいますよね。

しかし、先ほどお話ししたように、考古学では発掘調査後、遺跡の情報を調査報告書にまとめ、遺跡を記録することで、歴史に資する情報を物証として後世に残すことができます。

正しい手続きを踏んで記録されていない物証は、物証としての価値を失ってしまいます。

このように、人が「真実を知りたい」と思ったとき、十分な根拠をもった情報にいつでもアクセスできる仕組みを実現するのが、考古学が果たす社会貢献です。


考古学×ITで、誰もが考古学に触れられる社会を

——ラングは、なぜ考古学×ITを事業にするのでしょうか。

一言で表すと、「全ての人が考古学に触れられる未来を作るため」です。実現するにあたって、いくつかの課題があります。

1つ目の課題は、発掘調査では一部の遺物しか調査報告書に記録されないことです。

記録の作成には膨大な時間がかかるため、道具として作られた石器・土器から優先的に記録されます。

そのため、石器の破片などの細かな遺物は時間・費用との兼ね合いで記録されずに収蔵庫行きとなってしまうのです。

私が学生の頃、石器の破片を全て集めて統計をとったところ、当時の人類の動きが鮮明になり、大変感動した経験があります。

このような経験から、ITの力で記録を効率的に作成することで、これまで光を当てられることのなかった破片資料遺物を含めた完全な記録保存を実現できないかと考えました。

2つ目の課題は、調査結果を全ての人が気軽に閲覧できないことです。

調査結果は、発掘調査報告書という書籍として配布されます。しかし、配布先は公的機関に限定されるため、一般の方は遺跡の情報に触れにくいのが現状です。

そこで我々は、考古学とITを掛け合わせたサービスによってこれらの課題を解消し、多くの情報を、多くの人が触れられる形での保存を実現したいと考えました。

「誰もが考古学に触れられる社会」を創ることで、皆が気軽に考古学を楽しめることはもちろん、考古学者の負担軽減や商業施設建設の時短も実現できるのではないかと想像しています。


——「誰もが考古学に触れられる社会」をつくるために、ラングではどのようなサービスを展開していますか。

大きく分けて2つあります。1つ目は、3Dスキャナの「SOMA」です。

遺物を従来の約50倍の速度で一括スキャンできるシステムで、全国の発掘調査機関に向けて販売しています。

SOMAを使用することで、これまで記録されなかった細かな遺物も含め、資料群全体を3Dデータとして取得・記録できるのです。


LANGweb
SOMAは大型のガラステーブルを持ち、そこに並べた物体を一括してスキャンします。 資料を並べて [SCAN] ボタンを押したら、あとはSOMA任せで計測が完了します。その間 (1) センサーの姿勢を変える (2) 対象の姿勢を変える (3) 複数データをマージするなどの付帯作業を必要としませんので、計測者は ...
http://www.lang-co.jp/corner380513/pg2501450.html


2つ目は、画像処理技術「PEAKIT」の提供です。

PEAKITとは、遺物のデータを解析・可視化する技術をいいます。各地の発掘調査で得られた遺物のデータを、私たちがPEAKITデータに変換してお返しします。

従来の実測図作成サービスよりも、安価かつ短期間でデータ作成できるのが特徴です。


LANGweb
岩手県盛岡市にある考古学の会社。遺跡や出土遺物の三次元データ化、図面作成を行なっています。3D解析技術の研究も積極的におこなっています。
http://www.lang-co.jp/service/service_sekkiP.html

考古学に興味を持ち、楽しみながら貢献してほしい

——続いて、ラングが求める人物像について教えてください。

「考古学やラングの技術に興味を持ち、楽しみながら働ける人」と「長く働いてくれる人」です。

どれだけITスキルに長けた人であっても、興味のないことに対しては成果を出しにくいですよね。反対に、興味さえ持っていれば、技術は後から身についてくると考えています。

「働かされている」という感覚をもつのではなく、仕事内容に興味を持ち、自分から進んで挑戦する能動的な方とご一緒したいです。

また、長期的にコミットしていただくことで、「ラングのことなら何でもわかる!」というプロフェッショナルな状態になっていただくのが理想です。

現在、社内では千葉というエンジニアが1人でラングの技術周りを担当しています。これから入社される方には、彼の技術を全て継承するつもりで、長期的に活躍してほしいです。

なお、長く働くにあたって、居住地域も重要だと考えています。ラングは盛岡に拠点を構えており、移転の予定はありません。そのため、盛岡に興味を持っていただける方や雪国に抵抗のない方ですと嬉しいです。


——仕事を通して得られる経験について教えてください。

ラングでは、課題発見から解決までの一連の流れを経験できます。

入社後は、私たちと一緒に遺跡を見学するところからスタートします。

現場を自分の目で確かめ、専門家から直々にお話を聞くことで「この研究方法は非効率ではないか?」「もっとこうしたほうがいいのでは?」といった、現場に対する疑問が芽生えてくるでしょう。

このように、自分で発見した課題を解決するまでのプロセスを経験できます。

特に、異業種で活躍していた方であれば、より新しい視点で課題意識を持てるのではないでしょうか。

私のように考古学に長年携わっていると、現場に対する先入観を持ってしまい、課題と認識すべき点も「当たり前」とスルーしてしまう可能性があります。

これから入社される方には、ぜひラングに新たな風を吹かせてほしいです。


——ITスキルの面では、いかがでしょうか。

開発から保守・運用まで、幅広い業務を担当していただけます。プログラミングや画像処理など、多岐にわたるスキルが身に付くでしょう。

入社後は、社内で唯一の技術担当者である千葉のもとで業務をこなしていただきます。

彼の仕事ぶりは、私が「そこまでやるか?」と感じてしまうほど丁寧です。彼の背中を見ながら丁寧な仕事ぶりをダイレクトに学べるでしょう。

彼は知識が幅広く、教え方も丁寧です。彼自身、ネットワークや開発の知見を身につけたのは大学卒業後で、社会人になってから熱心に知識をキャッチアップしました。

彼のように、これから技術を身につけたいと考えている方も安心して業務に臨めるでしょう。


——最後に、読者へのメッセージをお願いします。

ラングは会社の規模が小さい分、役員との距離が近く、会社全体を俯瞰して見ることができます。

また、私たちは今後システム販売等によって業態を大きく変化させようとしている段階です。

変化を楽しみながらラングを成長させてくれる方に、ぜひとも入社してほしいです。

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