海外に新しい拠点をつくる。現地企業との取引を始める。日本企業が海外で事業を広げるとき、その最前線には、現地への赴任や出張に奮闘する社員がいます。事業は、人がいてこそ前へ進む。だから、人を守るための備えは、表面的な福利厚生ではなく、企業が挑戦を続けるための基盤を整える必要があります。
インターナショナルSOSジャパン株式会社(以下、インターナショナルSOS)は、世界の医療・セキュリティリスクマネジメントをリードする企業です。1985年の創業以来、この領域を切り拓き、現在では世界90ヵ国・1,200ヵ所以上のネットワークを通じて、海外で働く人々と企業を支えています。
今回は、人事の石神さんと採用担当の大原さんに、インターナショナルSOSが「働く人を守る」ことに向き合う理由と、その姿勢が日々の仕事や社内文化にどのように根づいているのかを聞きました。
<この記事の登場人物>
インターナショナルSOSジャパン株式会社
人事部(HR Director) 石神裕司さん
インターナショナルSOSジャパン株式会社
人事部(HR / Talent Acquisition Specialist) 大原教子さん
異なる業界を経て、働く人を守る会社へ
──まず、お二人のこれまでの経歴と、現在の役割を教えてください。
石神:日系企業で人事や営業を経験した後、インターナショナルSOSへ入社し、現在は人事として組織づくりや社員サービス全般に携わっています。
入社前はアシスタンス事業というものがあることを知りませんでした。ただ、インターナショナルSOSの事業内容を知った際、この会社のお客様のカウンターパートになるのは人事の方が多いと聞きました。私は、人事の次に長い職歴が営業なので、人事の目線で現場の方と話しながら、売上にも貢献できるかもしれないと思ったんです。
大原: 私は2025年4月に、当社で初めての採用専任担当として入社しました。約9年間のアメリカ生活と現地での就職、日本の機械系商社での営業を経て、夫の海外赴任に伴い約5年間タイで暮らしました。
長く海外で生活してきたため、事業のイメージは持っているつもりでしたが、入社後、医療だけでなくセキュリティや国外退避まで支援していると知り、その規模と専門性に驚きましたね。
見落とされがちな「人のリスク」
──海外事業を成長させるうえで、「人を守るための備え」はどのような役割を果たすのでしょうか。
石神: 多くの企業は、海外展開において、市場規模や法制度、為替、物流、政情などのリスクを考えます。ただ、どれほど優れた事業計画や設備があっても、それを動かす人がいなければ事業は続きません。ところが、人に関するリスクは、何かが起きるまで見えにくい。「これまで大丈夫だった」「保険に入っているから十分だ」と言われてしまうこともあります。
海外駐在員や出張者が突然働けなくなれば、本人の治療だけでなく、現地業務の引き継ぎや代替人員の確保、ご家族や取引先への対応も必要になります。判断が遅れれば、影響は事業全体へ広がってしまうんです。
大原: 海外で働く人を守る必要性は感じていても、「何を、どこまで準備すればよいのか」が分からない企業は少なくありません。だからこそ、企業ごとの状況に応じて、必要な備えを考えることが大切です。
石神: そのため当社では、国や地域を一律に「危険」「安全」と分けるのではなく、ご支援対象となる方々の渡航目的や期間、業務内容、ご本人の健康状態まで踏まえて判断する「リスクベース」の考え方を大切にしています。
事故や病気が起きてから対応するだけではなく、平時から必要な備えを整えておく。そうすることで、有事の際にも落ち着いて判断でき、事業への影響を抑えられます。人を守るための安全対策は、単なるコストではありません。社員が安心して力を発揮するために欠かせない備えでもあります。
何も起こさないための備えから、起きたあとの回復まで
──具体的にはどのような支援を行っているのでしょうか。
大原: インターナショナルSOSでは、渡航前の教育や医療・セキュリティ情報の提供、アラート配信から、緊急時の相談、治安悪化時の退避、医療搬送、危機後の回復までを一気通貫で支えています。何かが起きた後の対応だけでなく、「何も起こさないための備え」から関わっていることが大きな特徴です。
私自身、タイで息子を出産した際や、別の疾患で夜間に緊急入院をした際に、アシスタンスサービスに助けられました。タイは、実は医療が非常に発展しており、医療ツーリズムが成立するほど高い水準の医療サービスが提供されています。都市部の大規模な病院であれば英語も問題なく通じますが、たとえ日常会話に不自由がなくても、体調が優れない中で、日本語でも聞きなれない医療用語を外国語で説明を受け、判断するのは簡単ではありません。海外で安心して相談できる相手がいることは、働き、生活する人が前へ進む力になると実感しました。
また入社後は、世界のニュースの見え方も変わりました。災害や紛争の報道に触れると、その土地で働く人たちや、支援に動く同僚の顔を思い浮かべるようになったんです。私はお客様を直接支援する部門にいるわけではありませんが、社員が力を発揮できるよう人事から支えることも、同じ使命につながっています。
石神: 中東情勢が緊迫した際、ある企業から、現地にいる従業員の退避に関する支援要請がありました。チャーター機の手配を進め、セキュリティの専門家も現地へ向かいました。最終的には政府の判断により別の手段で退避することになりましたが、現場では妊娠中の方や子どもを含むご家族をどう安全に誘導するかまで、細かな判断が重ねられていました。
ニュースでは「情勢が悪化した」の一言で伝えられても、その向こうには、それぞれ事情の異なる人がいます。医師や看護師、セキュリティの専門家、各地域のチームが連携し、一人ひとりを守る。その積み重ねが、お客様の事業継続を支えています。
──時代や社会情勢が変化するなかで、この事業の役割をどのように捉えていますか。
石神: 人が国境を越えて働き、経済活動を続ける限り、健康や安全に関するリスクがなくなることはありません。COVID-19によって海外渡航が大きく制限された時期にも、私たちの支援が必要とされなくなることはありませんでした。
大原: 環境や社会情勢が変わっても、海外で働く人がいる限り、その人たちの健康や安全を支える役割はなくならない。その普遍性も、この事業の特徴だと思います。
「How may I help you?」が自然に交わされるあたたかいチーム
──「人を守る」という事業の姿勢は、社内ではどのような文化として表れていますか。
石神: 困っていそうな人がいれば、自然と「May I help you?」と声をかける文化があります。未経験や中途入社で「何が分からないのかも分からない」という状態の社員に声をかける、その社員が同じ質問を2回しても嫌な顔をする人はほとんどいません。 人を助けることを厭わない人が集まっています。
その文化がよく表れているのが、月に一度、全社員が集まる「Tea Break(ティーブレイク)」です。名前の通り、肩肘を張らずに参加できるカジュアルな交流の場で、普段は接点の少ない部署の社員とも、部門や役職を越えて言葉を交わすことができます。日本語と英語が自然に飛び交うのも、当社らしい風景ですね。
コーヒーを飲みながら、業績や社内の動きに加え、医療搬送などの支援事例も共有します。現場の写真や映像を交えた報告に、胸が熱くなったり、涙を流したりする社員もいるんです。和やかに交流しながら、仕事への誇りと「私たちは何のために働くのか」を共有できる時間です。
大原: その助け合いの文化は、日々のお客様支援にも表れています。当社のサービスは一つの部門だけで完結するものではありません。24時間対応のアシスタンスセンターを中心に、医療やセキュリティ、営業などの各部門が、それぞれの専門性や情報を持ち寄って連携します。一人ひとりが自分の強みを生かしながら、チームでより良い支援をつくっていく会社です。
「Tea Break(ティーブレイク)」や年2回の全社内パーティーなど、普段から部門を越えて交流する機会があるからこそ、いざというときにも連携しやすいのだと思います。グローバル企業と聞くと少し構えてしまうかもしれませんが、実際には温かく、人と人との距離が近い。 そのギャップは、ぜひ入社後に感じてほしいです。
求めるのは、素直さとチャレンジ精神
──最後に、どのような方と一緒に働きたいですか。
大原: 入社時点で、医療やセキュリティの専門家である必要はありません。製造、人材、プロフェッショナルサービスなど、社員の出身業界はさまざまです。大切なのは、この事業の意義に関心を持ち、分からないことを周囲に尋ねながら学んでいく素直な姿勢。相手の考えに耳を傾け、自分の考えも伝えながら、協力して仕事を進められる方と一緒に働きたいです。
石神: 当社は医療やセキュリティの専門家が、同じオフィスで働く会社です。しかも世界でもトップレベルの知識と経験を持っている。その武器を手に、お客様自身がまだ気づいていない課題に気づいてもらうところから、解決までを担えます。お客様ごとに答えが違うので難しさはありますが、自分の仕事が人の命を守り、企業の成長を支えることにつながっていく。
だから求めるのは、素直さとチャレンジ精神です。専門知識は入社してからでいい。分からないことは周りに聞きながら、一緒に答えをつくっていける方と働きたいですね。人がいて、経済活動が続く限り、この仕事がなくなることはありません。医療があり、セキュリティがあり、最後は人を救う。そこに存在意義があると、自信を持って言えます。
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