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就職活動面接での「ホンネ」と「タテマエ」


渋谷。
時計は21時を過ぎ、ほろ酔いで駅に向かって歩くサラリーマンたちも多い。
僕はまだ先輩に付き合わされていた。
土間土間という居酒屋チェーンを出た僕らは、ふらふらと光の方へ歩く。

考えて見れば、お世話になっている先輩に少しでもお返しができればと飲みに誘ったのだが、
先輩は完全にお姉ちゃんのいるキャバクラの方に向かっていた。

「先輩、今日ごちそうするとは言いましたが、そこまでごちそうとは言ってないですからね!」
「な、何セコイこと言ってんだよ!俺はただ、お前に採用と選考のコツを教えようとしてるだけだろ!」
「なんで選考のコツを教えるのにキャバクラ行くんですか・・・。」
「ん〜だから、それは行けばわかるから。」
財布の中身を確認した後、しぶしぶ先輩の後をついて雑居ビルの地下へと下る。

「いらっしゃいませ〜♪」
なんだかいつも自分はこういうところが慣れない。
両脇に女性がついてくれたはいいが、何か定型文で話をされているようで、逆に気を使ってしまう。

水割りにした不味そうな鏡月でとりあえず乾杯しておいた。
先輩は早速、となりの女性と話し始めた。
自分と話すときよりもテンションが8倍くらい高い。

「先輩、お姉ちゃんと絡みたかっただけじゃないすか・・・。」
「おいおい、ふてくされんなって。これこそが選考のコツだろ。」
「どこがですか!」
「お前はいつも表面しか見ないからなあ。この構図が企業担当者と学生という風に見えないのかねぇ。」

確かにそう言われると・・・見えない。全然見えない。楽しんでいるおっさんと、仕事をしている女性だ。

説明会も終わり、選考を進めているのに受けてくれている候補者の志望度がイマイチ上がらない。
大体が他に志望している企業があるので、そちらに気持ちがもっていかれてしまっているのだ。
あわよくば、その解決策の糸口でも見つかると思っていたが、それは酒と一緒に流れていくことになるのだ。

「先輩、楽しそうですね。」
「まあな、でも俺はこんなとこ来てもハマることはない。」
「いや、めちゃくちゃハマりそうですよ。」
「いや、ハマらない。このお姉ちゃん達は就職活動している学生とまるで同じなんだ。」
「はぁ?」

「お前、まさか選考に来てくれている学生って、お前の会社のことを志望していると思ってない?
「そりゃ思ってますよ。え、違うんですか?」
「はぁ〜、きっとお前みたいのはキャバクラにハマっちゃうだろうな〜。
そんで、採用活動もいいとこまでいって学生に逃げられちゃうんだろうな〜。」
「どういうことですか!」
「いいか、このお姉ちゃんたちは気分よく接客してくる。たまに俺に気があるんじゃないかと思う。」
「わかる気がします・・・。」
「でもな、でもなぁ、この子たち本音は全然俺に興味なんてないのよ。商売上やってるだけなのよ。」「就活の面接でも同じ。企業にそんなに興味はないけど、内定をとるために”御社が第一志望です!”と言う。それを間に受けてはいけないわけだよ。」

先輩が何を言おうとしているか、わかったようで、よくわかならい。
確かなことは、先輩がしっかりとお姉ちゃんの手を握っていることだけだった。

本日の教訓:採用成功の鍵はキャバクラにある

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