最近、GS研修サービスの発信サイトの一部として「菅のAI日課」という小さなWebサービスを作り、試験運用しています。
内容はシンプルです。
AIに関するニュースやトレンド、そして私自身が仕事でAIを使う中で得た気づきを、毎日10〜15分程度で読める記事にまとめ、テキストと音声で届けるサービスです。
名前の通り、「AIについて毎日少しずつ触れる日課」を作ることを目指しています。
ただ、今回自分にとって一番面白かったのは、サービスの内容だけではありません。
企画からMVP公開まで、ほぼChatGPT WorkとVibe Codingを使い、3日程度で形にしたこと。
そして、そこで終わらず、そのまま約2週間、実際に毎日コンテンツを更新して運用してみたことです。
今回は、その過程で感じたことを書いてみたいと思います。
そもそも、なぜ「菅のAI日課」を作ろうと思ったのか
仕事で生成AIを使う人は、この1〜2年でかなり増えました。
一方で、周囲を見ていると、ChatGPTを使っていても、
「質問する」
「文章を書いてもらう」
「要約してもらう」
くらいで止まっているケースがまだ多いと感じています。
もちろん、それだけでも十分便利です。
ただ、自分自身がAIを仕事の中で使い続ける中で感じているのは、AIのインパクトは単なる「作業効率化」ではない、ということです。
AIを使うことで、
これまで自分一人では調べられなかったことを調べられる。
経験のない領域でも、一定レベルまで短時間で学べる。
企画、調査、文章作成、資料作成、分析、開発など、これまで別々の人が必要だった仕事を、一人でもかなり前に進められる。
つまり、AIは個人の能力の境界そのものを広げ始めていると感じています。
一方で、この変化を毎日追いかけるのは大変です。
AI関連のニュースは多すぎますし、新しいツールを一つひとつ試しているだけでも時間がなくなります。
そこで、
「重要なニュースを選び、そのニュースが自分たちの仕事にどう関係するのかまで整理する」
「自分が実際にAIを使って得た知識や失敗も共有する」
そんな小さな知識サービスを作ってみようと思いました。
それが「菅のAI日課」のスタートです。
最初から立派なサービスを作るつもりはなかった
今回、最初から完成度の高いサービスを作ろうとは考えませんでした。
まず決めたのは、MVPとして必要な最低限の体験です。
- 毎日更新できる
- Web上で文章を読める
- 移動中でも聞けるように音声版を用意する
- 1回10〜15分程度で消化できる
- スマートフォンでも読みやすい
機能を増やすよりも、
「毎日使える状態で本当に運用できるか」
を先に確認することにしました。
プロダクトを作ると、人間はすぐログイン機能やランキングや通知機能を付けたくなります。
今回はその誘惑をかなり我慢しました。
ChatGPT Workで「考える仕事」をまとめて進める
今回、企画の中心として使ったのがChatGPT Workです。
サービスのコンセプト整理から、
誰に届けるのか。
毎日どんなテーマを扱うのか。
記事をどういう構成にするのか。
Web版と音声版をどう分けるのか。
サイトにはどんなページが必要なのか。
といったところまで、かなりの部分をChatGPTと対話しながら決めていきました。
特に便利だったのは、単発の質問を繰り返すのではなく、一つのプロジェクトとしてコンテキストを持ったまま作業を進められることです。
「昨日決めた方針を前提に、今日は記事フォーマットを直す」
「実際に運用してみた結果を踏まえて、制作工程を変更する」
というように、企画そのものを少しずつ育てていくことができます。
これは、普通のチャットとしてAIを使っている時とはかなり違う感覚でした。
AIに仕事を一回お願いするのではなく、
AIと一緒に仕事の仕組みそのものを作っていく。
今回のMVP開発では、その感覚がかなり強くなりました。
実装はVibe Coding。「どう作るか」より「何を作るか」に集中する
サイトの実装では、いわゆるVibe Codingの方法をかなり使いました。
細かなコードをすべて自分で書いていくのではなく、
「こういう画面にしたい」
「スマホではこのように表示したい」
「記事ページはこういう構造にしたい」
「ここをもっと読みやすくしたい」
と、完成イメージや要件を自然言語で伝えながら実装していきます。
もちろん、一発で理想通りになるわけではありません。
表示が崩れる。
想定していた動きにならない。
デザインが微妙に違う。
修正したら別の場所がおかしくなる。
AI時代になっても、ソフトウェア開発から人類の地味な修正作業が完全になくなったわけではありません。
ただ、それでも大きく変わったと思います。
以前なら、
「このサービスを作りたい」
と思ったあとに、
設計して、技術を調べて、実装方法を覚えて、コードを書いて……と、アイデアと完成品の間にかなり長い距離がありました。
Vibe Codingでは、その距離が一気に短くなります。
今回も、企画を考え始めてから約3日で、実際に触れるMVPまで持っていくことができました。
音声版も作ってみた
「菅のAI日課」では、記事だけでなく音声版も用意しています。
通勤中や移動中でも利用できるようにするためです。
音声生成にはElevenLabsを利用しました。
ここでも、実際に運用してみて初めて分かったことがありました。
Webの記事として読みやすい文章と、耳で聞いて分かりやすい文章は、完全には同じではありません。
文章では問題なくても、音声にすると長すぎる。
見出しや箇条書きは、読み上げると不自然になる。
さらにTTSは文字数がそのままコストにも影響します。
そのため途中から、
Web掲載用の最終版
と
TTS用に少し短く整理した音声版
を分けるようにしました。
これも、企画段階では想像していなかった運用上の発見です。
そして、そのまま2週間毎日運用してみた
MVPを公開したあと、約2週間、実際に毎日コンテンツを作って更新してみました。
ここで強く感じたのは、
「作ること」と「運用すること」はまったく別の仕事だということです。
AIを使えば、Webサービスそのものを作るハードルは驚くほど下がっています。
でも、本当にサービスとして続けようとすると、
今日何を書くのか。
どのニュースを選ぶのか。
どこまで調査するのか。
どんな視点を加えるのか。
文章をどこまで短くするのか。
音声版をどう作るのか。
毎日どういう工程で更新するのか。
という問題が次々に出てきます。
2週間運用して一番分かったのは、技術よりもこちらの方が難しい、ということでした。
AIで文章を作ることより、「何を伝えるか」の方が難しい
今回の運用を通じて、もう一つ重要だと感じたことがあります。
生成AIを使えば、文章自体はいくらでも作れます。
ニュースを要約することもできます。
記事らしい文章を書くこともできます。
でも、それだけでは読む理由になりません。
重要なのは、
「なぜこのニュースを今取り上げるのか」
「自分たちの仕事にどう関係するのか」
「ここから何を考えるべきなのか」
という部分です。
だから「菅のAI日課」では、単なるAIニュースまとめにはしたくないと思っています。
ツールの使い方を紹介すること以上に、
AIによって仕事がどう変わるのか。
個人の能力がどこまで拡張されるのか。
これから職場で求められる競争力がどう変わるのか。
そうしたことを考える材料を届けるサービスにしたいと思っています。
MVPの目的は「完成させること」ではなく「分からないことを見つけること」
今回、3日でMVPを作り、約2週間運用してみて、MVPに対する考え方も少し変わりました。
MVPというと、
「最低限の機能を持ったプロダクト」
と説明されることが多いと思います。
でも今回、自分の中では、
MVPとは、頭の中では分からなかった問題を、現実に出して見えるようにするための装置
という感覚が強くなりました。
作る前はWebサイトの機能を考えていました。
作った後は、毎日のコンテンツ制作工程を考えるようになりました。
運用を始めると、今度は「誰が毎日読みたくなるのか」「何に価値を感じるのか」が気になります。
実際に形にしたから、次の問題が見えてきます。
完璧になるまで考え続けるより、小さくてもまず現実に出してみる。
AI時代には、このサイクルを回す速度そのものが、かなり重要になるのではないかと思います。
一番面白かったのは、「一人でできること」の範囲が変わったこと
今回の経験で、自分が一番面白いと感じたのはここです。
企画を考える。
市場や情報を調べる。
コンテンツを作る。
Webサービスを実装する。
音声を作る。
公開する。
運用しながら改善する。
以前なら、それぞれ別のスキルが必要で、場合によっては複数人のチームが必要だった仕事です。
それが今は、AIと複数のツールを組み合わせれば、一人でもかなりのところまで進められます。
もちろん、AIが全部やってくれるわけではありません。
むしろ、
何を作るのか。
誰のために作るのか。
どこまでやるのか。
何を捨てるのか。
出てきたものが本当に良いのか。
そうした判断の重要性は以前より高くなっている気がします。
でも、「自分にはそのスキルがないからできない」という理由で諦めなければならない仕事は、確実に減っています。
これが、私が最近AIに一番可能性を感じているところです。
「菅のAI日課」自体は、まだ本当に小さなMVPです。
これから改善しなければならないこともたくさんあります。
ただ、今回の3日間の開発と2週間の運用を通じて、
AIは単なる便利なツールではなく、
個人がアイデアを現実に変えるまでの距離を、一気に短くする存在になりつつある
ということを、自分自身で改めて実感しました。
そして「菅のAI日課」でも、これからそんなAI時代の変化やチャンスを、毎日少しずつ伝えていきたいと思っています。