システムのライフサイクル
モノではないソフトウェアは、変化し続けることによって、寿命を延ばし、いつまででもその価値を維持することができる可能性があります。実際、スマホアプリの更新頻度はかなり上がっています。長年にわたって、広く使われているアプリほど頻繁に更新を繰り返していますが、それによってシステム自体の健全性を保ち、価値を維持、向上させています。更新が止まってしまったアプリは忘れられて、OSのアップデートによって使えなくなってしまったります。WEBサイトも同様で、見た目や操作感が頻繁に見直され、時には完全にリニューアルされます。そうしたことができない(しない)アプリやWEBサイトは結局消えてしまうわけですが、一方で業務で使われるシステムなどは、その操作感や仕様が変わらないことによって評価される場合もあります。つまり、システムによってそのライフサイクルには違いがあるので、個別にライフサイクル自体をあらかじめ計画、設計するべきなのです。
WEBサイト、スマホアプリは、企画、設計、製造、テスト、納品、保守という物理的なモノのような概念で作り出すものではありません。小さいサイクルを高速で回すことによって、ユーザーの反応を探りながら、育てていくべきものなので、あらかじめそうしたサイクルを設計してそれを回すための仕組み、体制を確立することが重要で、この場合のシステム開発では素早く実装し、確実にリリースする技術が重視されます。間違いがあれば、すぐに直してリリースするスピードがあれば、個々のバージョンの品質確保に過剰に時間をかける必要はありません
一方で、業務システムにおいては、その業務自体の継続が最重要なので、ライフサイクルは比較的中長期のスパンで考えた方がよく、WEBサイト、スマホアプリとは根本的に異なります。取り扱う業務の寿命がもちろん関わってくるわけですが、繁茂に作り直されると、業務に支障が出ることは明らかで、事前に業務を分析して必要な機能を吟味し、使い始められるまでに十分な品質を保証しなければならない場合もあります。
とはいえ、単純に上述の2パターン(WEB、スマホアプリと業務システム)で捉えればいいわけでもありません。昨今、業務システムもWEBサイト、スマホアプリとして実装されることも多くなってきているのは、いろいろな業務においてもドラスティックな変化が起こっており、スピード重視で発展してきたWEB系の実装技術は、業務システムにも適用されてきています。とはいえ、サイクルには明らかな違いもあるので、WEBサイトやスマホアプリの「ノリ」を業務システムにも適用してしまうと、業務がうまく回らなくなる可能性があります。つまり、それがコンシューマー向けのWEBサイトであろうと業務システムであろうと、システムのライフサイクルのあり方は、個別にデザインすることが重要だと言えます。
会計上資産として計上したソフトウェアもその価値を償却していくわけですが、メンテナンスコストを適切にかけることで、資産としての価値をある程度保つことができるという考え方もできます。逆にシステム開発が企画される際に、運用、メンテナンスも含めた財務面の計画がなければ、不具合や外部からの攻撃などへの対応や、顧客への説明、謝罪などによる想定していないコストや、顧客の離反、システム開発者が開発に専念できないという負の効果が発生して、利益の圧縮、生産性の低下を引き起こし、ソフトウェアは不良資産化することになります。
システムライフサイクルをデザインするのは誰か
日本のIT業界は大手企業の大規模システム開発によって発展してきて、ウォーターフォールと呼ばれるプロセスに沿って業界構造が出来上がってきました。システムの企画、要件定義は「上流工程」と呼ばれ、この部分を大手システムインテグレーターが主に行い、それ以降の工程を行う開発会社に発注します。設計以降のプロセスでは、設計、開発を主に行う会社、テストを専業とする会社、運用を専業とする会社など、工程ごとに会社が分かれていたりします。
もちろん、中には複数の工程をカバーする会社も存在しますが、システムのライフサイクルを構成する各工程は大抵の場合、会社や組織を跨いでいることになります。こうして会社、組織を跨いでしまったサイクルをうまく回すのは実は大変なことで、大手都市銀行の巨大システムなどでは、サイクルの破壌によって大規模障害を起こしてきました。
WEBサイト、スマホアプリの爆発的な普及によって、近年この業界構造は崩れてきています。デザインというそれまで業界にはなかった要素の重要性が増し、単純にWEBサイト、スマホアプリの方が業務システムより圧倒的に多くなり、IT業界はそちらに最適化されつつあります。それでも、いわゆる開発の工程だけ、あるいはデザインだけをやる中小の会社が多く、ライフサイクルを回すのには適さない構造がまだ残っています。一方で自社のサービスを完全に内製し運用している会社は、ライフサイクルを完全にコントロールできますが、そうした現代に最適化された状態で誕生し、成功している新しい会社も増えつつあります。こうした状況下で、システムライフサイクルのデザインは重要性を増してきているのです。
にも関わらず、システムライフサイクルをデザインする専門職は今のところ存在しません。システムの企画、設計、製造、テスト、運用のそれぞれの専門職は存在しますが、ライフサイクルをデザインするためには、これら個々の専門性を横断的に評価する必要があり、かつ会計的な知見も必要になります。なので、まずはまとめて答えを出してくれるような「誰か」は存在しないと認識した上で、システムを企画する際には、そのライフサイクルに関わる人、組織を洗い出して、もし企画時点で埋められない部分があれば、そこを手当てするところから始めれば、かなり先手を打ったと言えるかもしれません。
ITがあらゆるビジネスに関連してくることは最早言わずもがなではありますが、それだけにシステムのライフサイクルを管理することはビジネスに直結してくる重要なファクターであることは間違いありません。
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