自社が開発する製品を、いかに多くの方々に使っていただくか。それはメーカーにとって永遠の課題です。長い間、その手法は、店頭での販促やTVCMなどのマス広告などが主体でした。けれど消費者の動きやニーズが多様化する今の時代、それだけでは人のココロを掴むことはできません。そこでシャープは2025年4月、BtoCのマーケティング部門の再編に踏み切りました。軸足をどこに置き、新たなマーケティングやプロモーションにどう挑んでいくのか。統轄部長として部門を率いる佐伯さんにお話を聞きました。
目次
商品企画からマーケティングの領域へ。コロナ禍の出来事が転機に
スマートライフビジネスグループの直轄組織、『マーケティング統轄部』とは?
“売るための施策”をつくる部門と、“顧客体験”をつくる部門で構成
家電購入から買い替えまでの間にも、アプローチできることはたくさんある
データを見る力を養おう。数字から人の思いが見えてくる!
人に寄り添い、共感し、そこから新しいものを生み出そう
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商品企画からマーケティングの領域へ。コロナ禍の出来事が転機に
1997年に入社してからの20年間、私はずっと商品企画に携わってきました。最初はパソコンから始まり、PDAと呼ばれる携帯情報端末を経て、広島で6年間、スマートフォンの商品企画を担い、関西に戻ってからは「IoT家電が社会でどう役立つのか」の実証実験に携わりました。
その後、2019年からは「SHARP COCORO LIFE」という子会社の発足と同時に出向、私のキャリアにとって、“商品企画”から“マーケティング”へと方向転換、会社人生の転機となりました。同社は、シャープの公式会員様のエンゲージメントを高めるために生まれた会社。会員サイトや直販サイトなどの仕組みをいかして、家電メーカーの枠にはまらない“新しいビジネスモデル”へ挑戦することがミッションでした。
想定外だったのは翌年、世の中がコロナ禍へと突入したことです。店頭からマスクが消え、家電メーカーのシャープがマスクをつくることを決めた。鋭い方はもうお気づきかもしれませんが、その舵取りを私たちの会社が担うこととなりました。
社会課題に応える使命をメンバー一丸となり、社内での商品化から一日でも早くマスクを届けるべく、ようやく自社サイトで販売開始!ところが、アクセスが集中してサーバがパンクダウン。様々な関連部門の協力を得て、お客様に直接ご応募していただく抽選販売の形でようやくお届けできるようになりました。実はここで面白いことが起こったんです。とにかくお客様から寄せられる『声』が膨大。しかも、一気に。「お客様の声を聴く」とはこういうことを言うのかと、気づかされた瞬間でした。この時に感じた「お客様とのつながり」「お客様の声を聞く」という体験が、今手掛けている私のマーケティングの基礎になったと思います。
そこから5年後の2025年に私たちが担ってきたマーケティングチームは、新たに編成された『マーケティング統轄部』に合流しました。
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スマートライフビジネスグループの直轄組織、『マーケティング統轄部』とは?
シャープのマーケティングは長い間、「店頭販促活動」や「TVCM・雑誌広告・屋外広告などのマス広告」などを行う体制や仕事のやり方はでき上がっていましたが、今の時代、商品を認知する機会はお客様によって本当に様々です。実際に、TVや新聞雑誌、自社WEBサイトの商品ページはほとんど見ない、スマホで特定のSNSの中で生きているようなお客様もいます。今後は生成AIに相談して買い物をするお客様も増えるでしょう。そういうお客様の変化に合わせて私たちの仕事のやり方も変えていかないと商品を知っていただくこと自体ができなくなってくる。
そういう危機感から、オフラインとオンライン、双方向からのアプローチができるチームとして一つに集約し、これからのマーケティングを担う組織としてマーケティング統轄部は発足しました。ここからは、領域ごとの特徴をお話ししましょう。
“売るための施策”をつくる部門と、“顧客体験”をつくる部門で構成
マーケティング統轄部は、「商品マーケティング部」「イベントプロモーション部」「デジタルマーケティング部」「D2C事業推進部」の4部門で構成されています。最初の2部門は、店頭展示やカタログ、TVCM、店頭実売イベントなどを通じた顧客接点つくりを行っています。新商品デビューのタイミングに合わせて、お客様に“新商品の魅力をどう伝えるか”“デビューに向けてどうPRしていくか”を、Who/What/Howで戦略を練り、クリエイティブ制作を行います。もちろん、洗濯機や冷蔵庫など、すべての商品を担当する事業部の商品企画部や営業部門と連携しながら、突き詰めていきます。
「デジタルマーケティング部」では、シャープの公式会員サイトや直販サイトの運営から、WEB広告や公式SNSでの発信などの“デジタル”を得意とする部門。テクノロジートレンドも日々変化するため、そのキャッチアップや新しい挑戦も行います。その分、失敗も多くなりますが、施策効果が数値化しやすく、振り返りや修正のスピード感を重要視して日々活動しています。
最後の「D2C事業推進」ですが、ここは少し特殊な部門かもしれません。お客様からの声に耳を傾けて、モノを売るということを超えて、家電周辺、もう少し広くとらえると「家の中での悩みや困りごと」に寄り添い、それを解決するソリューションの形でお客様にお届けするチーム。当社の家電を長く大切に使いたいというお客様に向けての消耗品交換やメンテナンスをするサービスなど、商品を買っていただいた後の気持ちにも寄り添い続けることで、お客様との絆を深めていきたい。そして、次に何か家電を買い替えようという時には「またシャープにしよう」と思っていただきたい。あ、もちろんかつて私たちが手掛けた「マスク」もこのチームでお客様に今もお届けしています。様々な衣類を清潔に快適に保つための洗濯機ですが、衣類によっては、家で洗濯できずクリーニングに出すものもがあったり、冬服などは冬の間のクローゼットを占有してしまうという悩みもよく聞きます。そこで、クリーニング業者様とタッグを組み、シャープの“プラズマクラスター”のある専用ルームで大切なお洋服をクリーニング後もお預かりするサービスを提供もしています。このような「顧客体験の向上」を創造するマーケティング組織、ちょっと変わっているかもしれませんね。
家電購入から買い替えまでの間にも、アプローチできることはたくさんある
シャープ製品を気に入ってご購入くださったお客様が、10数年後の買い替え時にまたシャープ製品を選んでくださるという保証はどこにもありません。もしかすると「シャープの製品を使っている」という意識すら、もう無いかもしれません。
けれども、もしもその方が“シャープ自体のファン”であれば、ご購入の確率はグッと上がります。私たちマーケターは、ついつい“目の前の商品をどう売るか”ということを考えがちですが、実はそれだけじゃない。『購入後のお客様が当社の商品を使い続けていただける間の“いい体験”を提供し続けられるか』を考えること、今後はもっと大切になってくると思っています。いろんなカタチでお客様に寄り添い伴走することで、信頼関係が深まり、結果“次もシャープ”につながると思うんです。
昨年当社は新スローガンを発表しました。「ひとの願いの、半歩先。」。これは、今後のマーケティング活動指針ともぴったりです。「顧客起点」「顧客理解」そのものだと思っています。
「コロナの時、家電メーカーなのによくぞマスクをつくってくれた!」と、今でも言ってくださるお客様もいます。ありがたい話です。私のマスクへの思い入れが強いと言われればそこまでなのですが、お客様との絆がある、そう私個人として感じています(笑)。もちろん当社の家電を気に入って使い続けてくださるお客様も含めて、そういうひとをもっともっと増やしたい。それが結果として、会社の財産になっていくと考えています。
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データを見る力を養おう。数字から人の思いが見えてくる!
これからのマーケティングは、いかにデータを分析できるかがカギを握ります。私たちが扱うAIoT家電は稼働データや、WEBサイトログや検索ログなどはまさにお客様の声が詰まっています。データ分析は今後AIを使ってもっと高度かつ迅速に見れるようになっていく。そこから、お客様自身ですら気が付かない声に寄り添い、少し先回り。データを見る力を養うことは、シャープが新たに掲げた『ひとの願いの、半歩先。』というコーポレートスローガンにも通じていくでしょう?“ひとの願いの、半歩先。”を行こうと思えば、“何を願っているか”を掴む必要がある。いわゆる「顧客理解」ですね。お客様が今何に困っていて、何を望んでいるか。それはどんな方たちで、どこに住んでいて、どんな媒体から情報を得ているのか。もちろん、直接お客様との対話の機会も今後作っていきたいと思います。お客様のことをとことん知ることこそがマーケティングの基本。それが「シャープならではの価値」の創造につながると考えます。
人に寄り添い、共感し、そこから新しいものを生み出そう
結局、私たちがやるべきことは「人に寄り添って共感し、その人の気持ちに響く“何か新しい提案”を考えて届けること」なんです。なので、新しく迎える方には“共感力”と“創造力”、そして“数字とデータを読む力”という3つのチカラを求めたいですね。人の心理や行動に興味があって、そこに自分がどうアプローチすれば喜んでもらえるんだろうと本気で考えられる方。その上で、「これがいい!こうしたい!」と思ったことに、自信をもって挑めるような方と一緒に仕事ができれば最高です。
また、キャリア採用というと経験やスキルがフォーカスされがちですが、私はそうは思いません。何をやってきたかよりも「何がしたいのか」が明確で、意欲も含めて一本筋が通っていることの方を重視したいですね。そういう方は臨機応変に対応しながら、大いにチカラを発揮できるはずです。というのも、シャープは常に“世の中にないものをつくる”ことに挑んできた会社。新しいことにどんどんチャレンジできる風土の中で、「これは自分が成し得たこと!」と胸を張れるチャンスはいくらでもあります。ぜひシャープという会社で、お客様に寄り添いながら、自分の爪痕を残してください。
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※記事内の部門名、役職名、内容はインタビュー当時ならびに掲載当時のものです。
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