東京大学で博士号→助教という、アカデミックなキャリアから、スタートアップに転職したAstran取締役の彭に、これまでのキャリアや現在の仕事についてインタビューしました!
プロフィール
彭 思雄
取締役
東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了。大学院では創造的な思考プロセスやチームワークの研究に従事。音声・映像・生体データを活用した分析を主に行い、研究成果は経営学最大の学会であるAcademy of Managementで論文賞を獲得。新卒で中央大学商学部助教に着任し、起業に関する授業やゼミを受け持つ。2023年にAstranを共同創業。好きなバンドはUnprocessed。
好きなコトをやるよりも、重要なコトを好きになる
-1. 大学ではどんな研究をしていたんですか?
自分は昔から、人の創造性に関心があって、「アイディアはどうやって生まれるのか?」とか「どうすればより創造的なアイディアが出るのか」について、研究していました。
アイディアを思いつくプロセスって研究できるものなのか、って思うじゃないですか。でも実際、クリエイターや起業家の思考プロセスを言語化してみると、実はパターンがあります。創造もつまるところ情報処理の一種で、どんな情報を収集して、どのように処理するのか、分析できます。
個人の創造性から転じて、自分はチームや組織の創造性にも関心があって、どんなチームや組織が創造的なのかを、実際のチームを観察したり、時には心拍や脳波などの生体情報もとって、分析していました。
-2. そこからなぜAstranをやることになったんですか?
Astran共同創業者の崔と岡島は、高校の同級生です。
自分は大学では「アントレプレナーシップ論」という起業に関する授業を教えていたんですが、起業家に関する研究もしたいなと思って、創業間もないAstranにインタビューしに行ったんです。
毎週1回、オフィスに行って、Astranの事業内容の話から、人生観に至るまで、本当に色々なことを話したんですが、Astranに移る最大のきっかけになったのは、「自分の時間を何に使うべきか」という話ですね。
自分は今まで、「自分が好きで熱中できることをやる」、という方針で生きてきました。アカデミアの道に進んだのも、研究してる時が一番楽しいからでした。ただ、よくよく考えると、「何を好きだと思うか」というのはそもそも環境によって形成されるもので、その気になれば変えられるんですよね。
ここら辺の理屈は「欲望の見つけ方」という本に詳しく書いてあるんですが、要するに、自分の欲望というのは、周りの人とか、歴史上の偉人とか、漫画のキャラクターとか、なんらかのモデルの欲望を真似する形で形成されるもので、決して自分が元々持っていて、変化しないアイディンティティの一部というわけではないんですよね。
だとしたら、好きだと思えることを基礎に置くのは少しおかしい話で、それよりも、本当にやる意義のあることをやり、それを好きになる方が正しいと思うようになりました。
ちなみに、最近Xで落合陽一が「やるべきことをやりたいことだと自己洗脳で方向修正したやつが残る.」とポストしていて、同じこと言ってるなぁと思いました。
Astranの最終的なビジョンは壮大です。これは、人類にとって本当にやる意義があることだなと思い、Astranに加わることに決めました。
教育のイノベーションで、人類の幸福と発展に貢献する
-3. Astranをやる意義とはなんでしょうか?
Astranは、人類の教育をアップデートする会社です。
そもそも、人類の文明は教育によって進歩してきたし、幸福さも教育水準によってかなり大きな影響を受けます。人類の幸福や発展以上に重要なことはそうそうありません。
しかし同時に、教育は、デジタル化が進む現代においてもほとんどアップデートされていない領域です。最近は少しオンラインの学習方法も増えつつありますが、これらも、ほとんどが、既存の教材をただオンラインで見れるようにしたものです。
教育はもっと革新的に変えられるはずで、デジタルだからこその表現を活用したり、学習データを活用して教材をパーソナライズドしたり、リアル以上のコミュニティを形成して切磋琢磨したり。
これらの要素を追求し、革新的なメタバース上の学校を作る。全人類がその学校にアクセスできる。そんなことを実現できたら、人類の幸福と発展に、かなり大きな影響を与えられると思います。
これを、やりたいことにすべきだと思いました。
-4. 今はどんなことをやっているんですか?
一番大きな役割は、海外展開ですね。今はモチタンという英単語学習のアプリを日本でリリースしているのですが、これの海外版を作り、普及させることです。海外展開できるかで会社の規模が天と地ほど変わるので、なんとしてでも成功させたいですね。
モチタンは元々、海外展開しやすいように、万国共通のニーズを重視したり、ローカルな協力者を減らすよう意識しているので、海外展開のハードルは比較的低いはずです。とはいえ、その国特有の学習習慣や、好まれるコンテンツの違いはどうしてもあるので、その国の文化を深く知っている人と協力してやっていく必要があると思っています。
他にも、採用や、新機能や新プロダクトのコンセプト作り、HP作成など、事業を大きくするために必要なことは何でもやります。まぁ初期のスタートアップらしい感じですね。
-5. 今後やっていきたいことはありますか?
長期的には、自分のこれまでの関心ごとだったチームの創造性の文脈とも合流させたいです。
Astranは、グローバルにtoC向けのプロダクトを複数展開するので、かなりの創造性が求められます。新しくて良いアイディアが次々と生まれる組織にするにはどうすれば良いのか。メンバーのマインドセットや、思考プロセス、チームでのコミュニケーションの取り方や、意思決定の方法など、突き詰めていきたいことはたくさんあります。
-6. 未来の社員に向けて一言お願いします!
人生を賭ける意義のあるコトを見つけ、1人1人がそれに打ち込むことで、より良い未来が訪れるのだと思います。そして、同じコトに意義を見出せた人は生涯の仲間です。一緒に頑張りましょう!