ナレッジコモンズの「CX(顧客体験)・EX(従業員体験)を向上させる、体験デザイン入門」に参加させていただきました。講師の方からも許可をいただけたので、メモさせていただきます。ナレッジコモンズは小室さんというスーパーマンがされてる勉強会なのですが、毎回テーマが非常に面白く、個人的にもとてもおすすめの勉強会です。
中谷健一さんが講師。
講師の方は中谷健一さん。成果を上げる組織・チームを作る鍵であるCXやEXを高めるコンサルティングをされています。CXのコンサルを元々やっていたそうですが、うまくいく会社とうまくいかない会社があることに気づき、そのうまくいく共通点がEXが高いことだったそうです。つまり、CXだけやっても成果が出づらい。そのため、同時に達成するコンサルティングを展開されています。
中谷さんは、リクルートのゼクシィ出身。「現場の声を真摯に聞く」チームはめちゃくちゃ強い、と感じていて、「現場が最高!」というポリシーがあります。以下、実際にセミナーで話された内容を書いていきます。
CXDでのデザイン思考活用
IDEOのデザイン思考の通信講座に出たのですが、その時にzoomで画面シェアしながら、プログラムをやっていました。インドの主婦の方が洗濯機の横で参加していたりするんですね。ビーチでおしゃれに参加しているおじさんもいました。(笑)
それくらい、世界中で話題になっています。
PART1:体験デザイン:CXD/EXD
CX:顧客体験
EX:従業員体験
と言います。では、なぜ、今、体験デザインが注目されているんでしょうか?
体験は、人の意識と行動を変えることができますので、体験をデザインしてエンゲージメントを高めよう、という考え方になります。体験デザインはObserveからはじまります。観察する、ということですね。世界で語られるCXは観察する、という考え方に立脚しています。
CXが注目されるようになったのは、運用データと体験データを取りやすくなった、ということにも影響しています。運用データをOデータ、体験データをXデータというのですが、言ってみればアンケートです。アプリとかで0-10で評価する、みたいなアンケートを受けたことはありませんか?それがまさにXデータになります。あれは押した瞬間にパイチャートなどが変わっていたりするんですよ。それくらい、高速に解析されるようになったんです。
では、どんなデータを調査するんでしょうか。顧客の体験と従業員の体験を測るためのデータ収集の例は以下のようなものがあります。
Xデータはいずれも心理的なデータになっています。Oデータは購入履歴とかですね。実際、いっぱい購入してくれていても、めちゃくちゃ怒っている人っているんですよ。これまではそういう顧客に気づけなかったんですが、OデータとXデータを重ねることで、分析ができるようになったんです。こういう計測分析Web/可視化のサービスも増えてきています。
よく使われる指標ではNPS/eNPSという概念があり、NPSとはNet Promoter Scoreの略です。0-10で評価をしてもらうことで、現状のエンゲージメントを評価することができます。例えば、若い人はエンゲージメント高いけど、中間管理職ではエンゲージメントが低い、とかそういうことがわかるんですね。
一方で、実はトータルな評価に影響を与える体験と与えない体験が存在します。つまり課題が抽出出来たとしても、全部をやらなくてもよいんです。
これを4象限で分析し直して、優先改善課題を見つけ出す、なんて手法もあります。ここしかやらなくていい、というのが組織にとっては、とても取り組みやすいんですね。3ヶ月これだけやろう、みたいな方針が立つと。
この図でいうと、ピンクの「優先改善課題」のところに特化することが出来ます。
トータル評価は「あなたは近しい友達や家族に推薦したいと思いますか?」というNPSのアンケート評価を0-10段階で聞いていきます。例えば、「社員旅行」を例えると、その社員旅行のNPSも取ります。この二つの相関係数を取り、統計的に相関しているかどうか、を調べる、という流れですね。
では、どのように体験デザインのループをまわしていくのでしょうか。OODA-Loop(ウーダ・ループ)という考え方があります。
ここでもOデータやXデータを使って分析を回していきます。
・・・とここまでの流れで、一度会場から質問を受け付ける流れになりました。
会場質問1)従業員体験のアンケートにおいて、匿名性を維持するのか?
従業員の匿名性を維持するのはとても信用面で重要です。EXD調査を匿名性なしでやると、よいしょが入っちゃいますからね。経営陣にもローデータを渡さない、と最初に明言して調査したりします。匿名だからといって、聞くからにも変えないといけない責任が発生しています。軽い気持ちで聞いたりすると、2年目・3年目にどんどん点数が下がっちゃうんです。「去年も答えたよ」みたいな感じになって、EX調査がEXを下げるという事態が起きたりするんですよね。(笑)要するに、聞くからには現場の声を元に変えないといけない。
本当によくしたいという場合は、100問くらい聞くこともあります。本当に立て直すときは、こういうことをやったりするんですね。年1回だと30問くらいまわすというのが多いですけどね。
会場質問2)人の目で見ないと因果なのか相関なのか、わからないことあると思うが?
実際、そういうことはありますね。やはり、分析する人がリーダーシップをとって、やっていくしかないですね。
会場質問3)設問数が多いアンケートを以前やった時に、答えた人はそもそも満足度が高かった。回答しない人は不満な人が多かった。そういう問題はどう解決するべき?
そうですね。そこは永遠の課題ですね。アンケートに答える人は推奨者だったりもしくは、強烈な批判者だったりする。でも、その議論になると、EXDなんて出来ないし、意味ないよね、という話になりすぎてしまうので、そもそも改善が出来なくなってしまうので、インセンティブをつけて、回答数を増やすとかにすることもある。ちなみに100円くらいのインセンティブをつけると、10倍になったりします。どちらかというと、処理は大変ですけどね。
ただ、いずれにしてもバイアスはかかるので、その上で、正確性をとるのか、改善するというところをとるのか、を選択する必要があります。2年くらいやると平準化出来たりしますね。
人と企業がエンゲージすると収益が変わる
CXとEXがループとしてまわりだすと、「お客様が褒めてくれたり」します。アンケートとること自体で従業員のモチベーションに貢献出来たりします。その結果、収益に貢献出来たりします。
CX・EXの体験デザインの成功の鍵は「変わる覚悟」になります。変わること、と関係しないことはやらない方がいいでしょう。トータル評価指標の業界内比較とかをしても、あまり意味がないです。NPSって南米とかはラテンのノリで評価がそもそも高いですからね。そこ比べても仕方ないですよね。日本だと「私にはそもそもおすすめできる友達がいません・・・」みたいになったりしますからね。それは関係ないですよね(笑)変わることが重要です。
XD成功企業が押さえている極めて重要なこと
・理念・戦略の明確化
・仕事の中心に据える:行動/考え方の定型化
・優先改善課題の行動転換の仮説・推進力
・チーム横断の情報共有
XDとかって流行っているので、一時的なものと捉えられがちなんですよね。楽しいよね、で終わってしまうような取り組みだと意味がない。優先改善課題が見えたとして、「明日からコミュニケーションしよう!」「おー!」みたいになっても意味がない。もっと細かく現場に落とし込まないといけないんですね。
体験デザインの基本ステップ
傾聴し、文化を作っていきます。みんなでやってるのが当たり前、ということにしないといけませんね。部長だけが言ってるんではなくて、従業員がお客さんからの評価を聞くのが当たり前、ということにしないといけません。いきなりディズニーを目指すと言われてもピンと来ないですよね。なので、ステップバイステップです。
一方、変化が数字で見えるのは最短で2年後、という感じです。2年は長いと思うか、2年後になれるんなら今始めようと思えるかは人によって違います。
「体験デザイン改善と変革」→デザイン思考の助けが必要
経営者はEXを真剣にやるとほとんどの場合、凹むんです。日本の経営者は大抵の場合、-30点とかっていう赤点評価になることが多いですからね。普通は「もうやらん!」ってなるんですね。モチベーションクラウドとかは、経営者が凹みづらいように設計されているんです。だから売れているんだなあと思ったんですね。
デザイン思考について語るときに我々が語ること
デザイン思考というと、
・イノベーション
・デザイナーの思考法
・発散と収束の繰り返し
・顧客中心・人間中心
・プロトタイプ
などがよく語られます。
ですが、
・一部の人・部署しか意味を理解できない
・デザイン思考を経営にいかせる人材がいない
そんな理由で小難しい流行り物として矮小化されているような気がしています。では、日本のデザイン思考、これでいいんでしょうか。もちろん、問題ですよね。ではここで、デザイン思考の旨味を入れまくったデザインスプリントという考え方をシェアします。
デザイン思考の手順については、「HELLO,DESIGN 日本人とデザイン」が一番よかったので、おすすめします。
デザインスプリントは、製品の改善用途に開発されましたが、現在は様々な課題解決に生かされています。手順が型化されているのも特徴です。個人的にはデザインスプリントジャパアンのワークショップがおすすめです。金土日の3日間のワークが体験できます。いきなりまとめちゃうと、デザイン思考の本質は、「グループ・ジーニアス」発生メソッドだった、ということなんですよ。
「凡才の集団は孤高の天才に勝る」という本があるんですが、デザイン思考メソッドと完全に通底しています。IDEOには「いかなる個人よりも全員のほうが賢い」という言葉があります。一言で言えば、「三人寄れば文殊の知恵」ということですね。多様性のあるチームの凄さってこういうところにありますよね。
「俺たち、今、やべええ」ってなるくらい、仕事に感動するのって難しいじゃないですか。デザインスプリントやると、こういうのを感じるんですよね。
デザイン思考の本質はこういうところなんじゃないか、と個人的には思っています。集団による天才をうむ発生メソッドなんですね。創造性を高めて、思考停止を払拭するアプローチを2つやります。まず、面白いのは、「話さない」ということなんです。そうではなくて、「ポストイットに意見を書かせて投票させる」んです。匿名なんで、本当に良いアイディアだけしか残っていかない。普段の会議ってどれだけ忖度しているか、わからないですよね。
デザインスプリントは時間/手順のブースト効果があるので、デザインスプリントは、潜在的な力を引き出してくれるんです。活用するだけでEX向上に寄与することができますからね。
メンバーは4-6名で、狂ってるアイディアを出してもらいます。プロトタイプ&フィードバックにこだわり、完全匿名でやります。口にせず付箋に描き、シールを使って投票・決定していくという流れです。
でも、覚悟を持って小さくはじめてください。デザイン思考を元にソリューションを作って少しずつ大きくしていくのが良いでしょう。顧客理解と従業員の能力解放でチームのイノベーションに貢献することになります。
最後に:
忖度なしで狂ったアイディアを出していく、という考え方は本当に素晴らしい取り組みだな、と思いました。うちの会社の中でも、こういう活動はどんどんやっていきたいですね。