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デザイナーにとって、トレンドとの距離感は永遠のテーマです。 新しい表現をキャッチアップすることは必須ですが、ただ流行りをなぞるだけでは、ブランドの個性は埋没してしまいます。
私たちブランコが大切にしているのは、トレンドを「採用する」ことではなく、その文脈を理解して「翻訳する」ことです。
今回は、私が「iOSの進化」と「デザインの揺り戻し」について語った過去のNoteを共有します。社名である「ブランコ」の由来にも触れた、私たちのデザインフィロソフィーの核心です。
リキッドグラス
AppleのWWDCで発表された「iOS 26」。 正直、数字のインパクトよりも、個人的には「リキッドグラス」というUIコンセプトの方が気になりました。
画面の中に、ほんのりとした光沢や立体感が戻ってきている——そんな印象です。まるで水のような質感、そこに光が差し込むと少しだけ歪みを見せるような、そんな柔らかくも精密なUI。
少し前まで「フラットデザイン」が支配的だったUIの世界が、少しずつ、けれど確実に“リッチ”な方向に揺り戻されている。その揺れこそが、僕にとってはとても興味深いものでした。
ブランコという名前の由来
流行は、揺れ動きながら循環します。 軽くなったり、重くなったり。光を取り入れたり、吸収したり。その振れ幅があるからこそ、デザインには物語が生まれます。
この感覚を象徴する言葉として、私がつけた会社の名前が「ブランコ(Bulanco)」です。
フラットとリッチ、ミニマルとデコラティブ、軽さと重さ。 常に行ったり来たりするからこそ、面白い。どちらか一方に偏ると、いつか飽きがくるし、求められる美意識も変わっていく。その「揺らぎ」の中にこそ、クリエイティブの本質があると考えています。
フラットから、少しずつ“戻る”
今回の「リキッドグラス」という表現は、2012年に登場したiOS6の頃の立体感あるUIを思い出させてくれるものでした。時代の波がまたひとつ、大きくうねり出したような予感を感じます。
ここ10年ほどは、GoogleやAppleも含めて、完全にフラットデザイン全盛期でした。影も、グラデーションも、立体感も極力排除したミニマルな世界。ある意味で、情報に対して誠実なデザインだったとも言えるでしょう。
でも、今回の発表では、その“平面さ”が少しだけ緩んでいます。 光の当たり方やガラスの質感をうっすら残したまま、情報を整理する。極端な立体感ではないけれど、ちゃんと奥行きを感じさせてくれる。
この「やりすぎない感じ」が、今っぽさでもあります。 もはや“戻る”というより、“調和する”方向に進んでいるのかもしれません。直線と曲線の間、明快さと曖昧さのあいだを揺れながら、デザインは新しい姿を模索しているように見えます。
トレンドを「翻訳」する仕事
こうした流れは、WebやアプリのUIにもきっと影響を与えていくはずです。 しかし、大事なのは「今のトレンドがこうだから、右にならえで作ろう」と思考停止することではありません。
「いまの空気の中で、何をどう選び取るか」
たとえば、ブランドのUIを作るとき。過剰にリッチにすれば、時代遅れに見えてしまうかもしれないし、ミニマルすぎると、どこか無機質に映ることもある。その間を揺れながら、最適な“今らしさ”を見極めていく——そういうバランス感覚が問われる時代です。
そしてそれは、単に“見た目”だけではなく、ブランドの「存在感」や「関わり方」そのものにも関係しています。どう触れてもらいたいのか、どんな温度感で付き合っていきたいのか。
トレンドという素材を、そのブランドに合わせてどう料理するか。私たちはそれを「翻訳」と呼んでいます。
「リッチさ」は、熱量の演出でもある
ブランドという視点で見たとき、立体感や光沢感といった“リッチな要素”は、単なる装飾以上の意味を持ちます。
「なんか良さそう」「ちょっと手に取ってみたい」と感じさせる雰囲気や熱量。そうしたものを、リッチさが持つ“触感”として表現することができるからです。
これは、物理的な接触がないデジタルの世界だからこそ、重要になる要素です。見た目だけでなく、そこに“感じる何か”があるかどうか。その感覚を届ける手段として、テクスチャや光の表現が活きてきます。
だから僕は、トレンドがどうであれ、その要素の“意味”を読み解くことを大切にしたい。 何が流行っているかではなく、なぜそうなっているのか。そして、その本質をどう自分の仕事に取り入れるか。
そんなふうに考えながら、今日もデザインと向き合っています。
「なぜ?」を語れるデザイナーへ
私たちブランコのデザインチームは、単に「キレイな絵」を作るだけの集団ではありません。 時代の空気を読み、ブランドの体温を定義し、それを最適なUI/UXへと落とし込む。そんな「思考するデザイン」を実践しています。
「トレンドに流されるのではなく、自分で選び取りたい」 「デザインの『なぜ』を突き詰めて議論したい」
そんなデザイナーの方と一緒に、新しい時代のブランド体験を作っていきたいと考えています。 少しでも共感していただけたら、ぜひ「話を聞きに行きたい」ボタンからエントリーしてください。あなたのポートフォリオと思考について、じっくりお話ししましょう。