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風景から辿る旅の思い出 – グリンデルヴァルト –

こんにちは、アトモフの風景情報の編集者、山口です。心に残っている旅での出会いについて、少し書いてみたいと思います。

まだ若者と言える年齢だった私は、ある年の夏、会社を辞めてスイスへと一人旅に出かけました。

学生時代はインターネットの黎明期で、海外旅行といえば割と行き当たりばったりな感じでしたが、この旅行の時は宿泊予約サイトはまだなかったものの、ユースホステルが個別に作ったサイトなどは既にあり、それを通して日本で予約をし、電車などは現地で取ったように記憶しています。

20日ほどの日程で、アルプスでの山歩きを主目的にしながら、いろんな街や村を泊まり歩きました。その出会いは、旅も半ばに差し掛かった頃、有名なアイガー・メンヒ・ユングフラウのオーバーラウト三山の麓にあるグリンデルヴァルトで待っていました。

グリンデルヴァルトで3泊過ごす予定だった私は、到着早々日本で予約しておいたユースホステルに向かいました。ユースホステルにしては珍しく村の雰囲気にぴったりな可愛いシャレーに心躍らせながらチェックインを済ませ、当てがわれた部屋に入ると、直前にチェックインしたと思われる先客が荷解きをしていました。話してみると日本人の女性で、イギリス留学中にこちらに旅行に来ているとのこと。

ユースホステルは出会いの場ですし、ここまでは普通です。話しているとお互い3泊することがわかり、こういう場合によくあるパターンだと思いますが、共通の目的地だったユングフラウヨッホまで一緒に行ったり、他の人も交えて夕食を共にしたりと、旅仲間としてつかず離れずの距離を保ちながら、3泊4日の期間を過ごしました。

話が自然と次の目的地になったとき、驚いたことに、ツェルマットで3泊、サン・モリッツで2泊という行程がまったく同じなのです。しかも、宿まで同じときました。まあどこも小さな街で、その当時の若者の一人旅と言えばの、公式ユースホステルは恐らく街に1軒しかなかったので、そうなるのは必然な部分もあったのですが、それにしても、です。私たちは、お互いまったく知らないところで計画し、実行に移した旅程が偶然ここまで一致していることに笑い合い、親近感も段々と増していきました。

さらに、驚きに拍車をかけた最大の出来事がありました。ツェルマットからサン・モリッツまで、氷河急行という観光列車に乗るのが旅の目的のひとつだったため、スイスに着いて早々座席予約を済ませていました。彼女も同じ氷河急行を予約してあるというので、一緒に列車に乗り込むと、なぜかお互い同じ車両に入り、同じ方向に歩いていきます。そう、それぞれ別に予約したにも関わらず、座席がボックス席の向かい同士だったのです。

もうなんだか、驚きを通り越して、運命を感じました。結局サン・モリッツで2泊過ごした後、最後の目的地であるチューリッヒまで行程が一緒でした。さすがに都会のチューリッヒでは宿は別々でしたが、最後に一緒にチューリッヒの街を観光して、名残惜しくお別れしました。

その後も、遠くに住んでいてなかなか会えませんが、運命の彼女との絆は続いています。彼女はスイスが気に入ってその後も何度か訪れたそうですが、私は残念ながらそれ以来行くことができていません。でも、またいつか面白い出会いと美しい絶景に恵まれたあの国に行きたい、という思いは胸に抱き続けています。

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