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生徒が熱狂する体験をもたらす、 アルゴリズムを考え抜く。

川原 尊徳(かわはら・たかのり)小学校でプログラミングを始め、東京大学工学部にて代表の稲田とともに情報工学を学ぶ。その後Microsoftに入社し、Hotmailや日本語IMEなどの開発に10年ほど従事。様々なタイプのプロジェクトを経験。その後1年ほどデータサイエンティストを経て、atama plusを共同創業。ラフな服装が得意で夏は短パンとサンダルというスタイルを崩したことがない。

理論だけではない。機能開発までを担当

僕はatama plusの創業から関わり、AI教材atama+のアルゴリズム開発を行ってきました。アルゴリズムは、「勉強をワクワクするもの、自分からやりたいものにする」ことを大事に、開発を開始しました。一人ひとりの理解度を計測し、弱点を探して埋めていくアルゴリズムを、統計モデルを利用したルールベースのモデルで構築しています。

atama plusのアルゴリズムチームの特徴は、理論上のアルゴリズムだけを開発する研究組織ではなく、「実際に生徒の学力が向上する」機能の開発まで責任を持つチームです。

少し前に、生徒がある特定の間違い方をした時に、その間違い方に関連する教材を提示するアルゴリズムを開発しました。その際、リリース後のデータ解析から、想定されたほどには学習効果が高まっていないことがわかりました。原因は、アルゴリズムが意図していた教材の作成方法と、コンテンツチームの教材の作成方法がずれてしまっていたことでした。この時はコンテンツチームの教材作成方法を変更するという改善を実施しましたね。

機能リリース後に不具合を発見するのも、原因究明をするのも、その修正方法を考えることまでアルゴリズムチームで責任を持って実行できる。「生徒の学力が向上する」という目的に向かって、当事者意識を持った開発を進めることができていることに面白さを感じています。

また、このような開発ができる背景として、プロダクトに必要な教材、アルゴリズム、アプリの全てを内製しているのもatama plusの特徴です。発見した課題に対して最も効果的な解決手段を考え、生徒の学力が向上するプロダクトがつくれるように、創業当時からこの体制なんです。

「なぜ?」を突き詰めることが、このアルゴリズム開発の本質

僕がatama+のアルゴリズムを開発する上で大切にしていることは、2つあります。

ひとつは、さまざまな手法を理解し、解決すべき課題に対してフェアに比較検討していくこと。ディープラーニングなどの高度なテクノロジーを導入することを前提とせず、幅広く手法を理解した上で、目的に合わせてコストパフォーマンス高く開発ができる手法を選択することが大事だと思ってます。僕たちがアルゴリズム開発をしている目的は「生徒の学力向上」だということを忘れないようにしています。

そしてもうひとつ、フロンティア精神です。課題を解決する時、演繹的にソリューションを導くことは大事ですが、全てがその方法だと小さな改善にとどまってしまう。発想を飛躍させて、今までできなかったことを可能にするイノベーションを起こさなければ、プロダクトに革新的進歩はない。
しかし、本質的でない形で解決してしまうと、必ずどこかにひずみが出てきます。より正しい形を描き出すために、考えたモデルを様々な場面に適用して矛盾がないかを徹底的にチェックし、矛盾がある場合はなぜその矛盾が生まれるのかを考え、モデルをアップデートします。このプロセスを恐れることなく、「なぜ?」を突き詰めて答えを探求していく姿勢をチーム全体で大事にしたいなと思っています。


学力向上のメトリクスを探す

アルゴリズムの進化が進む中で、現在の課題となっているのは、生徒の学力向上を示す、より良いメトリクスを見つけることです。今までは明らかに不足している機能を追加することが多かったのですが、今後はアルゴリズムや機能が複雑化していき、本当に生徒の学力向上に寄与しているのかを正しく計ることの重要性が増してくると考えています。

このメトリクスの設計については、「学習」ならではの難しさに直面しています。ショッピングのように、ユーザーが買いたいものをユーザー自身が判断できる状況と違い、ユーザーである生徒は自分が学習すべきものを自ら判断できないケースがほとんどです。
そのため、クリック数などの取りやすいデータで計測可能な「生徒がどう判断したか」はメトリクスとしては成立せず、「最終的に生徒の成績があがったか」を表すメトリクスを取りたくなります。しかし、実際に効果が表れるまでに時間がかかる遅行指標であるため、扱いが難しくなります。

また、atama+は生徒の学力評価をするためのプロダクトではなく、生徒が学習して学力向上するためのプロダクトであることに起因する難しさもあります。生徒は学習を通してどんどん学力が向上していきます。そうすると、同じ生徒の回答データであったとしても、学習が進むほどに生徒の学力が向上するため、同一生徒が解いたデータとして単純に解釈すると誤った認識となってしまう。

このようにメトリクス設計ついてはまだまだ課題が多いんですが、世の中で誰もやっていない領域にチャレンジしている楽しさを感じています。

一方でatama+は常に大人数の生徒がサービスを使っているため、形式や網羅性にこだわらなければ、実際に学力が向上したかどうかの事実情報は比較的簡単に手に入れることができます。これにより、確実な改善サイクルを回し、変更したアルゴリズムやリリースした機能が生徒の学力向上に寄与しているかを見極めながら開発を進められることは、挑戦的な開発がしやすい環境だなと思っています。


教育を通して社会を変えるチャレンジ

アルゴリズムチームが目指すことは、中長期の視点でプロダクトにジャンプをもたらすこと。今のatama+プロダクトは全ての生徒に完璧な価値を提供しているとは言えません。まだまだ役に立てていない生徒がたくさんいます。

例えば、何かにつまずいてから勉強が嫌になったとか、勉強することの意味が見出せないとか、モチベーションの領域にまで踏み込んでいく支援ができないかなと思っています。このチャレンジは難易度が高いとわかっているのですが、「学習を一人ひとり最適化し、基礎学力を最短で身につける。そのぶん増える時間で、社会でいきる力を伸ばす。」という僕たちのMissionの実現に向けてジャンプして近づけるようなチャレンジだと思っています。

atama plusのメンバーは、目の前の事業課題の解決にも全力で向き合う一方、社会全体を動かすんだという思いを強く持っています。だからこそ、アルゴリズムチームでの大きなチャレンジを応援してくれる風土があります。期待も大きい分、プレッシャーも大きいんですが(笑)。教育を通して社会を変えていくことにわくわくできる人にとっては、これほど絶好のフィールドはないと思っています。

◆ atama plusについてもっと知りたい方はこちら! atama plusのすべてがわかる11のイベント

その2:代表稲田が語る!全社員でこだわる「カルチャーガーデニング」の話

その3:ベネッセ・代ゼミ出身者が、急成長する教育系スタートアップの伸びしろを話す会

その4:転職直後のエンジニアが、初めて機能リリースするまでの話

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