atama plus株式会社に入社するまで
■■■経歴■■■
兵庫県出身。2010年に筑波大学大学院数理物質科学研究科数学専攻を修了し、ベネッセコーポレーションに入社。東大数学教材の制作、ベネッセブラジル立ち上げ、Classi立ち上げ等に従事する。その後2014年にリクルートに入社し、ビジネスプロデューサーとして派遣領域及び海外人材領域で数十のコンサルチームを統括した後、2017年7月atama plus社に入社。数学をはじめとするatama+の教材コンテンツの全体を統括する。中学・高校の数学教員免許保持。
数学や教育に目覚めるきっかけがあったのですか?
数学に目覚めたのは大検(高卒認定)を取るために予備校に通ったのがきっかけですね。
高校は2年生の時に退学してしまいました(苦笑)。小さい頃から外遊びもゲームも、とにかく友達と一緒に遊ぶのが好きだったんです。勉強も好きじゃなかったし、将来のことも全く考えてなくて、周りの友人が高校に行っていなかったり、高校を辞めていくのを見て“俺も一緒に辞めようかな”、みたいな。勢いで退学してしまいました。
高校を辞めて1年経った頃、頭のいいヤツはかっこいいとふと思ったのです。で、“頭のいいヤツ=大学生”だと思って、一念発起して大検(高卒認定)が取れる予備校に通うことにしました (笑) 。
通い始めたのは良かったのですが、1年以上鉛筆すら持っていなかったし、落ちこぼれの自分に愕然としました。試験を受けても悲惨なくらい下の方で。それで、これはもう付け焼刃じゃどうしようもないと観念して、他の科目よりはまだましだった数学の教科書を1ページ目からちゃんと読んでみることにしたんです。1冊目の教科書を読み終えた頃から少しずつ、数学が分かるようになって、急に勉強が楽しくなりました。
数学の点数がうなぎ上りに伸びていったので、最初はただそれが楽しくて勉強していました。でも予備校の恩師のおかげで、数学の楽しさそのものに気づくようになりました。数学は定義(守るべきルール)と定理(自由に解釈できる部分)があって、奥が深いなぁと。ただ、決まった答えを導くだけじゃないところがおもしろい。それで、大学でも数学を極めたいと思いました。学びによって自分の世界がぐんと広がる実感があって、なんだかワクワクしましたね。
気づけば数学の成績は全国トップクラスになっていて、無事大学生になることが出来ました。(笑)
大学、大学院でもひたすら数学一筋だったんですよね?挫折も経験したと聞いたのですがどんな壁があったのですか?
大学でやっていた数学をより極めたいと感じて、大学院に進学することにしました。数学の様々な概念を組み合わせて新しい考え方を導けるレベルまで極めたいと思ったんですね。しかし、大学院で天才的に数学ができる友人に出会って挫折しました。数学の成績もずっとトップクラスだったし、自分の研究にも自信はあったのですが、友人を傍で見ていて、自分がアカデミックな数学の世界でトップになるのは無理なんだなと悟ってしまったんですね。
トポロジー系のグラフ理論という数学と実社会を結び付けた研究をしていたこともあって、その見地が活かせるだろうと、卒業後の進路はビジネスの世界に飛び込むことにしました。
卒業後はベネッセに入社したんですよね。どんな視点で就職先を選んだのですか?
当初は金融のデリバティブ部門や保険関係のアクチュアリーへの就職を想定していました。統計学の知識を使って、世の中を良くすることが出来ると思ったからです。でも、就活をしていくうちに、 “人の人生の幅を広げる手助けがしたい”、“エンドユーザーが身近に感じられる仕事がしたい”と思うようになりました。かつての自分は勉強することで人生の幅がぐんと広がったので、教育の分野はそれに当てはまるなと思い、ベネッセへ入社することにしました。
ベネッセではどんな仕事をしていたのですか?
進研ゼミ高校講座(東大受験向け)の数学編集部を担当しました。すごく良い教材を作っている自信はあるのにこれが全然売れていなくて。せっかくならたくさんの人に知ってもらいたいと思い、自分で教材のプロモーション企画を考えて実行しました。その結果、教材の認知度や売上が伸びたのは嬉しかったですね。
その後、ブラジルに駐在したんですよね。どのような経験をされたんですか?
結果的には2度目の挫折を経験しました。でもかけがえのない経験、出会いがあったと思っています。
新しいことを考えて実行するのが楽しいなと思い、ブラジル法人の立ち上げメンバーに立候補しました。ベネッセの海外駐在員としては史上最年少でしたが、希望がかなってラッキーでしたね。
atama plus代表の稲田さんと出会ったのもブラジル駐在がきっかけでした。ベネッセブラジルはベネッセと三井物産の合弁会社だったのですが、当時の彼は三井物産側の代表でした。ブラジルという日本とは180度違う環境で苦楽を共にしたことで、お互いへの信頼が強固なものになりましたね。彼は仕事の能力も非常に高いんですが、それ以上に一生懸命さがとても信頼できました。
いろんな事情があって、ベネッセブラジルは撤退することになったのですが、これが2度目の挫折です。僕は新規事業担当の部長をしていたのですが、自分が採用した現地採用のブラジル人スタッフを解雇しなければならなかったのがつらくて。それまでエンドユーザーのことを考えて仕事をすべきだと思っていたのですが、スタッフの幸せも考えながら仕事をしようと強く心に刻むきっかけになりました。
ブラジルから帰国した後、リクルートに転職されたんですね。どういうきっかけがあったのですか?
ブラジルで撤退という経験をしたことで、自分を責めることが多くなりました。自分の努力や能力次第で撤退しない選択肢もあったのではないかと。高い視点で状態を俯瞰して、先を読みながらプロジェクトを遂行できる力を身に着けるためには、環境を変えて、エンドユーザーだけではなく、企業に対するビジネスを経験する必要があるなと思いました。
ちょうど、リクルートの派遣領域であたらしいコンサルチームを作るためのリーダーを募集していると声をかけられたんです。人の人生の幅を広げる手助けを出来るという意味では派遣も興味のある分野で、企画から実装まで寄り添えるユーザーに近い仕事だったので入社を決めました。
リクルートではどのような仕事をしていたのですか?
ノウハウが全くない中でのチーム立ち上げでした。とにかく、エンドユーザーのことを考えて問題を発見し、それを課題に昇華して、優先順位をつけて解決する、ということを繰り返しました。必死にマーケティングなどの知識を身に着けて、提案の幅を広げていきました。
次第に、経営課題に即したCRMの提案や、AIを使ったマッチングシステムの構築など複数のプロジェクトを遂行することが出来るようになりました。売上も順調で、社内のMVP受賞や表彰を受けたときは嬉しかったです。挫折がスタートラインでしたが、結果的に自分の自信につながり、良い経験が出来ました。
atama plusへの入社を決めたきっかけを教えてください。
atama plusを立ち上げる数か月くらい前だったと思います。稲田さんから、日本の教育のために事業を立ち上げるので力を貸してくれないか、という連絡がありました。その時はまだ事業の詳細は聞いていなかったのですが、教育を通じて人の人生の幅を広げる手助けをするというのは本来僕がやりたいことでしたし、彼を信頼していたので、これはチャレンジすべきだと即決しました。
現在の仕事内容について
atama plusでどのような仕事をしているか教えてください。
atama plusではAI(人工知能)によって生徒一人ひとりの学習状況を分析し、「自分専用レッスン」を作成する塾向けのアプリケーションを作っています。アプリケーション内には膨大な学習コンテンツが収められているのですが、そのコンテンツの全体統括が僕の仕事です。
学習コンテンツは有名予備校の講師や学校の先生の英知を集めて、オリジナルの教材を作っています。より生徒に分かりやすいコンテンツになるように全体の構成や編集、各コンテンツ毎の学習データの分析を行っています。使っている生徒さんが実際に満足しているかが一番重要なので、生徒さんの意見をリアルタイムで吸い上げて、編集に反映するようにしています。同時にatama plusに賛同してくれる先生方を新規開拓もしていますね。
学習コンテンツは受講している生徒さんが日常的に触れるatama+の顔になる部分です。コンテンツの良し悪しは生徒さんの満足に影響するので、責任重大ですがやりがいがありますね。
atama plusメンバーに共通して言えることはありますか?メンバーに求められていることなどもあれば教えてください。
メンバーそれぞれ、モチベーションのあり処は違うと思うのですが、日本の教育を良くするためにやり遂げるんだという強い意志は共通しています。そういう環境なので、何事も議論しながらスピーディーに進められている感覚はあります。
すべてが新しい事へのチャレンジで、ルールがない中での最善を目指しているので、物事を体系的にとらえて、問題点と課題とその解決策を見出す力は求められますね。加えて、現在の状況をどういう定性的、定量的指標でモニタリングしていくのか、結果をどう改善につなげるのか、自ら考えて取り組む力も必要だと思っています。そういう環境で力を発揮したいという人がいたら是非仲間に迎えたいと思っています。
今後について
atama plusのサービスを通じてどういう世の中になったらいいと思いますか?
一人ひとりの人生の選択肢がぐんと広がっているような世の中になったらいいですね。人の幸せは人それぞれですし、選択肢の幅が狭かったとしても不幸ではないと思います。ただ、人生の選択肢の幅が広いと、本当にやりたいことを見つけられたり、チャレンジできる可能性が広がりますよね。かつての自分の経験からも基礎学力を身に着けることはその手段の一つだと思っています。
atama plusの学習プログラムはそれぞれの状況にあったオーダーメイドの組み立てが可能なので、どんな生徒さんでも基礎学力の習得がスムーズにできることが強みです。このサービスが世の中に広がっていく手ごたえは感じているので、この先が楽しみですね。