私事、スタートアップ(株式会社アジラ)のCFOという役に就いて1年半が経ちました。本当にあっという間でしたが、この間感じたことを一旦書き記しておこうと思います。
さて、最初にひとつお断りしておかなければいけないことがあります。
身も蓋もない言い方になりますが、私はCFOを目指して仕事をしてきたわけではないのです(金融機関で働いた経験ないです。あ、でも、簿記3級、ファイナンシャルプランナー2級、証券アナリスト(CMA)は保有。)。最近はCFOになるためのキャリア戦略みたいな書籍も売られていますが、キャリア論としてみた場合、以下に書くことは役に立たないかもしれません。
私の略歴
1992年東京大学大学院修了(AI専攻)、同年日産自動車入社(開発系)、2001年富士ゼロックス入社(コンサル系)、2014年自分の会社立上げ、今に至る。
では、この1年半で私がやってきたことを少し紹介します。
■CFOの担当領域
組織の大小によってその差はあるものの、管理部門全般を管掌することが多いようです。株式会社アジラは小さな会社で、管理部門担当は私含めて2名しかいません。小さい組織であればあるほど一人が担当する領域が広くなりそうなことは想像に難くないと思います。
分野に分ければ、財務、会計、税務、経理、法務、知財、総務、労務などたくさんに分解できます。そしてそれぞれの分野に専門的な知識とスキルが必要になります。もうこれだけでも気分が悪いですね。
もう少し具体的に書くと、
財務分野:事業計画の策定、資本政策の策定、資金調達の計画と実行、M&A検討、、、
会計・税務分野:BS/PLの作成、決算手続き、月次の予算管理、、、
法務分野:契約書のレビュー(⇒すべて私を通過するのでこれが重い)、規約類の策定、、、
ビジネス分野:見積書や請求書の確認、外部向け文書の校閲、時にプレゼン、、、
総務・労務分野:就業管理や文書管理の方針策定、社内業務フロー構築、イレギュラー事象対応、、、
渉外:ベンチャーキャピタル、監査法人、証券会社、銀行などとのコミュニケーション、、、
経営分野:株主総会や取締役会の対応、議事録作成、IPO準備推進、CEOの相談役、、、
などなど。
何かよく分からないけどとりあえずたくさんあるなと思った人もいるかもしれません。
なんでこんなことになるかというと、スタートアップにおいては、
「誰かが正解を持っている訳ではない。できる人が作ったものが正解になる。」
からです。
要はこんな領域に手を染められる人が自分以外にいなかったという“何もかもが足りていないスタートアップあるある”です。
■実務面
まず大事なのは各分野に関して薄く広く知識を持つことです。私の場合は、二十数年の社会人経験があるのである程度の基礎知識は持っていましたが、それでも実際に何かをやろうとした場合は、その論点に対する詳細な勉強が必要になります。
ここでのポイントですが、いま目の前の問題を解決するための知識にフォーカスすることです。対処すべきことが起こったらその解決のための知識をすばやく吸収して事に当たる。虫食いでいいんです(学者ではないので)。
それに加えて、税理士、弁護士、弁理士などの専門家に助けてもらうこともリスク回避の面からは重要です。
■業務推進の流れ
至ってシンプルです(基本は以下の4つの繰り返し)。
1.調べる
2.考える
3.決める
4.ネゴる
3番と4番の順序が逆ではないかと思った人もいるかもしれません。
しかし、ここがスタートアップマジックなところ。なぜならCxOは責任をもって決めるのが仕事だからです。実態としてはゆっくりネゴっている時間などないという背景もあって、よほどアホな提案をしない限りそのまま通ります。
補足すると、CxOはCEOの部下ではないということも正しく認識しておく必要があります。企業にとって管理コストの低減は大きな課題です。特にスタートアップCEOに無駄な管理コストを払わせるべきではありません。CEOがCxOの管理をしなければならないとしたら本末転倒で、会社が回らなくなります。
■もう一つ
CFOにとって意外と大切なもの、それは営業力です。資金調達の場面などを考えると分かりやすいと思いますが、CFOはCEOと共に、外部の人にいかにその企業が高く売れるかを考え実行するのが仕事です。社内の管理屋なぞに甘んじていてはいけません。
以上がこの1年半を振り返っての感想になります。
CFOという役職に付いているものの、正直CFOの理想形・完成形なんて分からないし、今後も手探り状態が続くのだろうなと思っています。
現時点で、私が一番しっくりくるCFOの定義は、「雑用係の親分」です。
IPOに向けては、もっともっと雑多な仕事が増えると言われています。噂によると主幹事証券会社からいろいろ言われるらしいです。怖いですねぇ。
CEOとの約束でIPO達成するまでは辞められない立場なので、私自身はもう少しこのポジションで頑張らないといけませんが正直めんどくさい。
IPOしたら潔く身を引くつもりなので、次期CFOを狙っている方、お待ちしております。