こんにちは。anveil の音田です。
現在、私たちはプロダクト開発チームのアシスタントを募集しています。
それに合わせて、今日は「anveilにおける商品開発とは何か?」ということに関して、少し深い話をしたいと思います。
一般的にメーカーの開発職というと、PCに向かってCADで図面を引いたり、レンダリング画像を作ったりする姿を想像されるかもしれません。
もちろん、最終的にはそれもやります。ですが、私たちが日々向き合っていることの本質は、もっと泥臭く、もっと人間的な部分にあります。
PIECE OF SIGNのプロダクト開発とは「当事者になりきること」
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そもそも、なぜ私たちはプロダクトを作るのか?
それは「お客様の課題を解決するため」です。
私たちのプロダクトにお金を払っていただくということは、そこに解決すべき課題があり、それが解決される期待があるからです。
では、どうやってその課題を発見するのか?
ここで最も重要なのが、「いかに当事者になりきれるか」ということです。
PIECE OF SIGN の場合、なりきるべき「当事者」は、全く立場の異なる2種類の人間です。
一つは、「店舗オーナー(買う人)」。
彼らは、自分のお店を繁盛させたい、もっと集客したい、ブランドを良く見せたいという切実な願いを持っています。
看板や什器は、そのための「投資」であり「武器」です。
もう一つは、「一般消費者(見る人)」。
街を歩き、ふと看板を目にし、「あ、なんかいいな」「入ってみようかな」と無意識に感じる人々です。
開発者である私たちは、この相反するようにも見える二つの視点を、高い解像度で自分の中に同居させなければなりません。
消費者視点:「0.3秒の直感」を捕まえる
まず、「一般消費者としての視点」についてお話しします。
これは簡単に聞こえるかもしれませんが、実はプロであればあるほど難しいことです。人間は誰しも、生まれながらに「何が美しいか」を判断するセンサーを持っています。
「美しいカフェ」を作ることは難しくても、二つのカフェを見て「どっちが美しいか」を判断することは、実は万人ができることなんです。しかし、大人になるにつれ、あるいは知識が増えるにつれ、そのセンサーは様々なバイアスで覆い隠されてしまいます。
「一般的に看板のサイズはこれくらいが正解だから」
「この素材の価格はこうだから」
開発会議で飛び交いがちなこうした議論は、消費者からすれば単なるノイズでしかありません。
街中で看板と出会う瞬間。その勝負は、わずか0.2秒から0.3秒で決まります。
その一瞬で、本能的に「好き」と感じるか、「何となく嫌だ」と感じて通り過ぎるか。
私たち開発者の仕事は、自分の中にこびりついた知識やバイアスを意図的に取り除き、この「一瞬で消えてしまいそうな純粋な直感」を捕まえることです。
これは、実際にデザインを決めていく工程でも同じです。
1ミリ単位でサイズを調整している時も、「理論的にどうか」ではなく、
「それを見た瞬間の自分の心がどう反応したか?」という微細な感覚を信じ、言語化し、保存する。このピュアな感性を取り戻す作業こそが、anveilの商品開発の第一歩です。
だからこそ、私たちはモニターの前ではなく、「現場」を最重視します。Pinterestで綺麗な画像を見るのではなく、実際にアメリカへ、オーストラリアへ、ソウルへと足を運び、その街の空気を吸いながら、現地の看板と出会う。
その時感じた「リアルの手触り」こそが、何よりも信頼できる一次情報だからです。
店舗オーナー視点:「店舗経営の痛み」を憑依させる
一方で、感性だけではプロダクトは売れません。
そこで必要になるのが、もう一つの「店舗オーナーとしての視点」です。
「綺麗な看板ですね」で終わってしまっては意味がない。
その看板が、実際にお店への入店率を上げたのか?
ブランドの価値を高めたのか?
お店を経営する人たちの、ヒリヒリするような「数字への責任」や「現場の悩み」を、どれだけ“我がこと“として感じられるか。
私たち自身、渋谷で漢方薬店「LAOSI」を運営しています。
また、開発チームには元カフェ経営者もいます。
自分たちが実際に店舗を運営し、「看板一つで客層が変わる」「什器の配置で売上が変わる」という経験をしていることは、開発において計り知れない強みになっています。
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もちろん、全員が店長経験者である必要はありません。
大切なのは、店長やスタッフの方々と「対話」をすることです。アンケートのような二次情報ではなく、実際に現場で汗をかいている人と話し、その表情や言葉の端々から、彼らの抱える課題を自分自身に憑依させる=ダウンロードする。
消費者としての「美しさへの感度」と、経営者としての「課題解決への執着」。
この二つの視点の解像度を高めていくこと。これが、anveilの開発者にとっての「OS(基礎能力)」になります。
開発の現場は、実はハイテクで合理的
ここまで「感性」や「憑依」といった精神的な話をしてきましたが、実際の開発現場がどうなっているかというと、意外と「ハイテク」です。
昔ながらの職人のように、木材やダンボールを切って何十回も試作を作る……ということは、実はあまりやりません。私たちは、テクノロジーで解決できることは徹底的に効率化するというスタンスをとっています。
例えば、企画段階では「Meta Quest 3」などのVRゴーグルを活用します。
3DモデルをVR空間に配置すれば、実物がなくても5mm単位、いや2〜3mm単位のサイズ感まで追い込むことができます。
また、卓上什器などの小さなものであれば、3Dプリンターで何パターンも出力し、実物としての佇まいを検証します。
なぜそこまでやるのか?
それは、「脳のリソースを『直感の精査』に全振りするため」です。
先ほどお話しした「0.3秒の直感」は、街中でのインプットだけでなく、ものづくりのアウトプットの場面でも重要になります。
1mm、2mmの違いに対し、自分の直感がどう反応するか。
「こっちの方が美しい」「これは何か違う」という心の動きを、ノイズなく見つめるためには、試作作りで疲弊していてはいけません。
VRや3Dプリンタという武器があるからこそ、私たちは最後の1mmまで、純粋な感性で判断することができるのです。
なぜ「アシスタント」から始めるのか?
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さて、今回の募集は「アシスタント」というポジションです。
私は個人的に、どんなに経験がある人でも、anveilでは一度このアシスタントの期間を経ることが理想的だと思っています。
なぜなら、良いデザインとは「パズルのピースの組み合わせ」で生まれるからです。
“この工場ではどんな加工が得意か、どんな素材が使えるか、コストはどうなるか。“
こうした無数の「手札(ピース)」を持っていなければ、コストパフォーマンス良く、かつ美しいものを作ることはできません。
アシスタントの期間は、まさにこの「パズルのピースを集める旅」です。
日々の業務を通じて、anveilが持つリソースや制約条件を体で覚え、自分の中に引き出しを増やしていく。
それが、将来プロのデザイナーとして活躍するための、確かな土台作りになります。
私たちが特に大切にしている、二つの素養
私たちが開発メンバーに求めている資質はシンプルです。
スキルは後からついてきますが、以下の二つだけは、特に大切にしている素養です。
一つは、「目的意識を持ち続けられること」。
「これはお客様のどんな課題を解決するためなのか?」「何のためにこれを作っているのか?」この問いを常に忘れず、最初に設定したゴールから逆算して、計画的に物事を進められるかということです。
開発の途中では様々な迷いが生じますが、そんな時こそ、この目的意識がブレない羅針盤になります。
もう一つは、「息をするように『街』を観察できること」。
通勤中でも、休日の買い物中でも、
「あ、これいいな」「なんでこの看板はこういう形なんだろう?」
と、ナチュラルに観察してしまう癖がある人。オン・オフ関係なく、街全体をインプットの場として楽しめる「ナチュラリスト」な感性を持っている人です。
「開発はやめられない」と思う瞬間 ー開発の仕事の「報酬」
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最後に、個人的な話をさせてください。
正解がなく、自分の感性をすり減らすような仕事ですが、それでも私が「開発はやめられない」と思う瞬間があります。
最初は、仮説が形になった時。
二つの当事者視点で「これが欲しいはずだ」と仮説を立て、パズルを組み、困難を乗り越え、ついに試作が届いた瞬間。「めっちゃいいじゃん!」とテンションが上がる、最初の小さな幸せです。
次は、リリースして「最初の一台」が売れた時。
私たちの仮説が正しかったことが証明された瞬間です。それが早ければ早いほど、「よしっ!」とガッツポーズをしたくなります。
そして、一番の喜びは「街中での偶然の出会い」です。
自分が住む街だけでなく、例えばニューヨークのような「世界で一番センスの良い」と言われる街を歩いている時に、ふと自分たちが作ったプロダクトを見つける。しかも、私たちのプロダクトを選んでくれるのは、その街でも特にセンスのあるお店ばかりです。
そんなお店の店頭に、苦労して作ったプロダクトが置かれている。
そして店員さんと話すと、「これ、めっちゃいいんだよね」と笑顔で言ってもらえる。この瞬間が、開発者として最高に嬉しく、報われる時です。
プロセスごとに訪れる小さな幸せと、最後に待っている大きな感動。
anveilでの商品開発は、そんな喜びに満ちた仕事です。
「0.3秒の直感」を信じ、テクノロジーを使いこなし、世界中のスモールビジネスの課題を解決する。そんな思考の冒険を、一緒に楽しみませんか?
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