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アンドパッドの第三事業本部のエンタープライズ顧客を担当する部署は、大きなストレッチ目標を掲げています。その目標は2年後に現状から250%増のMRRを目指すとのこと。今回その組織を率いる部長 西野史記さんにインタビューを実施し、なぜそのストレッチ目標を目指せるのか、組織戦略と事業戦略についてきいてみました。
西野 史記
2018年にVertical SaaS企業へ入社。セールス&マーケティング部の責任者を経て、2020年にアンドパッドに入社。大手企業へのセールス及びカスタマーサクセスを担当。2021年にエンタープライズの部署の新設に伴い、部長に就任。2023年、本部長就任。
「Vertical SaaS」から「Vertical SaaS」へ
━まず西野さんがアンドパッドへ入社した経緯を教えてください。
前職はインターンでお世話になった会社で、アンドパッドと同様にVerticalSaaS事業の展開をしている企業に所属していました。小さな組織ではありましたが、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスなどを統括する立場を任されていました。
━大きな役割を任されていたのですね。なぜアンドパッドだったのでしょうか。
転職を考えていたわけではなかったのですが、きっかけは知り合いからの紹介でした。話を聞いてみると、前職では単一のプロダクトを提供しているのに対して、アンドパッドでは「施工管理」をはじめ、「引合粗利管理」「受発注」などサービスの幅広さがあることと、前職とは比較にならないほどの開発体制があったため、顧客の課題をより深く解決できるのではないかと。それで建設業界という大きな産業に対して深い提案をしている企業という印象をもちました。その成長の先に、大きな組織や裁量を持たせてくれそうなイメージが湧きました。
━なるほど。
前職では、当時25歳の年齢で組織を束ねるという大きな役割を持たせてもらっていましたが、市場として本当に自分自身に価値があるのか疑問に思っていた点もありました。だからこそ、組織が整っていない状況で、もう一度プレイヤーとしてやり直してスキルを磨き、前職と同様のキャリアがたどれるのか再現したいとも考えました。
━キャリアを再現したかったと。勇気がいる選択でもあったかと思います。
私が入社した当時のアンドパッドは、組織もこれからというタイミングでもありましたから、これまでの経験やスキルで価値提供できるのではと、魅力を感じたのも大きかったと思います。
チャーンが目の前に迫っている中とった行動
━現在部長の職位でもあるので、再現性は一定あったのではと思います。入社後はどのような業務を担当されていたのでしょうか。
営業として入社し、ハウスビルダーさんを数件担当させてもらった後、現在でも継続ご利用いただいている大手企業様の担当させてもらいました。
━いきなり大手企業様だったのですね。
既にご契約はいただいていたのですが、プロダクトの利用率に課題がありました。そこで改めてお客様のところへ訪問すると「別サービスに切り替えようと思ってますので、次の更新で契約を終了しようと思っています」と。
━大ピンチですね。
ええ、いきなりチャーンの宣告で冷や汗が止まらない状態でしたね。現本部長である藤井と同行していたのですが、訪問の帰りに藤井から「この案件を君に任せたい」と相談がありました。今思い出しても無茶ぶりでしたが(苦笑)、入社して早々、大きな壁にぶつかりました。
━そこからどのように挽回していったのでしょうか。
「絶対に貴社関係者の方々に浸透させてみせます。私に任せてほしい。」と強い意志をお客様へ丁寧かつ早急にお伝えしました。そこから各支社全員の連絡先を教えていただき支社の担当者にコンタクトを開始していきました。
━どのような状況だったのでしょうか。
そこで判明したのが、ANDPADの利用率は全アカウント数のわずか数%しかご利用いただけていない状況でしたので、現状で満足いただいているご担当者の方を中心に利用方法や業務フローのヒアリングに足しげく通い、効果的な活用方法の成功事例を整理していきました。
例えば、支社と協力会社との業務のやりとりにおいてメールや紙が当たり前でしたが、さらなる効率化に向けANDPADの活用をご提案しました。共有や報告すべき資料や情報をANDPADに取り込んでおけば、メール連絡も不要、添付パスワードも不要、重たいデータ添付を数回のメールに分けて送信などももちろん不要など、積もると膨大な時間とストレスを要する作業を削減でき、業務時間の短縮と効率化に繋がるなどの成功事例を地道に案内していきました。
━全支社に説明して回ったのですか。
最終的には全支社にはなりますが、まずはその時点で満足度が高いユーザ―様の満足度をさらに高めて、コアユーザー化していけば各支社に伝播していくと信じて、徹底的に対応していくことを決めてやりきりました。
━なかなか大変な業務だったかと思いますが、やり切る原動力は何だったのでしょうか。
一つは、前職の業務をやりきれたかと自問すると疑問があったため、絶対にやりきろうという想いが強かった点ですね。ゆくゆく事業を任せてもらえるチャンスがあった時に備えて、自分なりの実績を作り、先ほども話したようにキャリアを再現したかったのもあります。
また、社内に「一人アンドパッド」というワードがあるのですが、営業担当として顧客に導入販売したら終了ではなく、時には自分の職域を限定せずにオンボーディングといったカスタマーサクセスの動きも行い、利用率の増加や顧客のコアユーザー化を実現させていく。顧客にどれだけコミットできるかによって、将来のアップセル・クロスセルなど大きな成果につながっていくという認識を以前から持っていたからです。
━そのような原動力というか原体験もあったからこそ、やりきるという意思を強く持てたのですね。
ええ。現在そのお客さまは関連企業様、協力会社さまを含めて数千IDをご契約いただくまでに大規模になり、継続してご活用いただいています。
成長フェーズと位置づけ、組織も倍に
━続いて西野さんが牽引する組織について教えてください。
エンタープライズを中心とした顧客折衝・対応がメインの部署です。住設メーカー、ガスや電気などのインフラ、小売り、ゼネコン・サブコン、ハウスメーカーといった業種を問わず、規模の大きな企業様が中心です。組織として立ち上がったのは、2年ぐらい前になります。
━立ち上げは2年前。
立ち上がりの当初は、どの業種が顧客になりえるのか手探りの状況でしたが、検証結果を同様の業界にアジャストさせる成功事例がでてきましたし、業種内の縦の成長に加え、エンタープライズ領域内の横軸においての営業活動の再現性も見えてきました。今後の成長の見込みも見えてきたので、ストレッチした目標ではありますが現状のMRR250%を目指して、成長フェーズとして人員を含め部署を強化しています。
━なかなかのストレッチ目標かと思いますが、組織体制はどのような構成なのでしょうか。
2023年の上期と比較し、現在倍程度の組織規模となっています。1顧客との折衝及びプロジェクトの全責任を担うアカウントマネージャー(以下AM)をはじめ、プロダクトの継続利用のフォローやサポートを行うカスタマーサクセス、商談の獲得を行うインサイドセールスなどのメンバーで構成しています。専門領域はそれぞれ異なりますが、最終ゴールであり共通の認識として各顧客のビジネスの成功を目指して取り組んでいます。そのため部署では、職能でグループやチームをわけているのではなく、1社ごとにAMとカスタマーサクセスがチームとして連動して動ける体制にしています。SaaSビジネスではありますが、いわゆる”THE MODEL”のようにファンクションでわけた動きをしてしまうと、ビジネス規模の増大にはつながりにくいでしょうし、チャーンリスクなどを考えているからです。
━そのような組織体制をとられている背景を教えてください。
というのもこの領域特有かもしれませんが、お客さまに契約開始段階からご活用いただくのではなく、一部の部署や支店から開始し、しっかり根付かせていくことが鍵だと考えているからです。そこから年月をかけてしっかり信頼関係を構築することで、将来のビジネスを作っていけると思っています。そのためには、AMとカスタマーサクセスの連動した動きは必要不可欠です。
━その連動した動きについてもう少し詳しく教えてもらってもよろしいでしょうか。
AMが大枠の骨子としてサクセスプランを描きます。そのサクセスプランを実現していくためには、最初の契約からどの支店や協力会社に、いつまでにどれくらいのどんな状態を目指していくのか、カスタマーサクセスに実行してもらうためにも、言語化し共有していかなければなりません。カスタマーサクセスより「○○の部分で利用率がなかなかあがらない」「推進がうまくいっていない」と課題があがれば、顧客側の関係者全員に発信してもらうためにAMが顧客の推進者や決裁者に働きかける必要もでてきます。そのように計画を立てて、契約後のフォローといった可動範囲の広いプロジェクトマネジメントがAMには求められます。一方カスタマーサクセスには、高い利用率で継続いただけるプランを検討してもらいます。このコラボレーションとその積み重ねが、お客さまの事業成功につながり、ゆくゆくは将来の大きなビジネスのベースとなると考えています。
━難易度は高そうですが、現在所属しているメンバーはそのような動きができているのでしょうか?
仰るとおり難易度は高いと思いますが、できているメンバーも出てきています。中には、外資系のIT企業でエンタープライズセールスをやっていた経験者もいますが、その過去の知見があるからできているわけではないでしょう。むしろサクセスプランを実現するために、契約したら終わりではなく、いかにカスタマーサクセスの動きや、足りてないピースをどこまで埋めにいくアクションを積極的に実行できるかを理解しているのではないかと思います。この体制では、AM側に営業だけの動きではなくなるので、どうしても負荷をかけ気味にはなりますが、先ほど述べたようにサクセスプランが実行できれば、売上のExpansionが最大化につながるでしょう。
━なるほど。そのような戦略のための体制ということが理解できました。とはいえ、最初からできる方は少ないのではないでしょうか?
そうですね。それが最初からできるのは難しいと思います。むしろアンドパッド特有でも思いますので、その経験がつめるように社内体制を設計していきたいと思います。個人としては、教育体制や連携においてまだ課題はあると思っていますので、整理していきたいと考えています。
━話を聞いていると、まさに今拡大期、成長フェーズという段階ですね。となると、キャリアとしても大きなチャンスがありそうです。
そうですね。ストレッチ目標もあるように経営からも大きな期待が寄せられています。組織においても拡大中ですので、ポストや裁量は当然のこと、キャリアも積んでいけるでしょう。まだこの事業部には顧客のビジネス成功のための知見や経験を求めているものの、言語化できていない共通スキルも模索中です。だからこそ、走りながら模索しながら経験を積んでいけますし、エンタープライズ領域におけるAMやカスタマーサクセスなどにおいて、キャリアモデルを作っていけるチャンスがあるのではないかと思っています。