【話者プロフィール】 吉川 千里(Senri Yoshikawa) / 取締役CFO 国立東京工業高等専門学校(東京高専)出身。AIdeaLab代表の冨平とは高専時代の同級生であり、学生時代に共同開発したシステムで全国高専プログラミングコンテスト優勝、およびものづくり大賞内閣総理大臣賞を受賞。その後、筑波大学、同大学院へと進学し、博士(工学)の学位を取得。2021年の創業期から取締役CFOとして参画。現在は財務管理やバックオフィス全体の統括だけでなく、プロダクトのPMやAIアバター事業の事業責任者も兼任し、技術と経営の両面から組織を支えている。趣味はDIYと鉄道。
1. 「ものづくり」の原点から博士課程へ。技術を社会に届けるためのCFOという選択
―― 代表の冨平さんとは高専の同級生だそうですね。当時から現在に至るまでの吉川さんのキャリアについて教えてください。
冨平とは高専の同級生で、当時から一緒にものづくりに取り組んでいました。学生の頃から、ただ授業で学ぶだけではなく、「自分たちでアイデアを考えて、実際に動くものを作って人に触ってもらう」という経験を重ねてきました。その活動の延長線上で内閣総理大臣賞をいただいたことは、今振り返っても大きな原体験になっています。
高専卒業後は筑波大学の大学院に進み、コンピューターサイエンスの研究に取り組みました。博士課程では、プロセッサアーキテクチャや回路設計に近い領域で、FPGA(Field Programmable Gate Array)を使った研究をしていました。研究活動は地道で、すぐに成果が出るものではありませんでしたが、「よくわからないものを分解して、仮説を立てて実験し、少しずつ前に進める」という姿勢は、今のスタートアップでの仕事にも強くつながっています。
大学院修了後は、技術を社会実装していくことへの関心がより強くなりました。研究として面白いだけでなく、「それをどう事業にし、どうユーザーに届けるか」という部分に魅力を感じており、2021年の創業期からAIdeaLabに参画し、現在は経営、財務、プロダクト開発、事業推進など幅広く関わっています。
―― 「博士(工学)」という技術・研究バックグラウンドを持ちながら、AIdeaLabで「CFO」の役割を担うことになった経緯を教えてください。
もともと「財務だけを専門にやりたい」と思ってCFOになったわけではありません。AIdeaLabのような技術スタートアップでは、経営判断と技術判断がかなり密接につながっています。「どの技術に投資するのか」「どのプロダクトを伸ばすのか」「どの案件を受けるのか」「どこまで自社で作り込むのか」。こうした判断を下すには、技術の理解と事業の理解の両方が不可欠です。
私自身、研究開発のバックグラウンドがあるので、技術の難しさや不確実性はよく理解できます。一方で、会社としては売上、利益、資金繰り、契約、採用、組織づくりも見なければなりません。そうした領域をつなぐ役割として、自然と財務やバックオフィスも担当するようになりました。
CFOという肩書きではありますが、実際には「会社が継続して挑戦できる状態をつくる役割」だと思っています。研究開発や新規事業は、どうしても不確実性が高い領域です。その中で、攻めるべきところは攻めつつ、会社として倒れないように支える。そのバランスを取ることが、自分の役割だと捉えています。
吉川さん (画像右)
2. 財務・バックオフィスから、AIアバターのPMまで「境界をまたいで動く」
―― 現在の具体的な業務範囲について改めて教えてください。CFOの枠に収まらない広さだとお聞きしています。
現在の業務はかなり広範囲です。CFOとしての財務管理、契約、請求、経理、バックオフィス全般を見ている一方で、AIアバター関連の事業ではプロダクトマネージャー(PM)として、企画、要件定義、開発方針、顧客提案、運用まで一貫して関わっています。
AIアバターは、音声合成、動画生成、LLM、リアルタイム対話、配信・SNS連携など、複数の最先端技術が絡み合う非常に難度の高い領域です。単に技術的に面白いものを作るだけでなく、「それを使ってお客様が何を実現したいのか」まで深く落とし込む必要があります。
また、共同開発のプロジェクトに提案段階から入ることがあります。お客様の課題を聞き、技術的に何ができるか、どこにリスクがあるか、どのくらいの工数で実現できるかを整理しながら、プロジェクトとして形にしていく。その意味では、経営、開発、営業、PMの境界をまたいで動いている感覚ですね。
3. モデル開発からAPI活用まで。研究室のような熱量で泥臭くプロダクトへ落とし込む
―― 技術者や研究者にとって、AIdeaLabの開発環境にはどのような魅力があるのでしょうか?
AIdeaLabの面白さは、技術のレイヤーを限定していないところだと思います。LLMや画像生成、音声合成などのAPIを組み合わせて素早くサービス化することもあれば、必要であればモデルを調べたり、チューニングしたり、場合によってはより深い技術検証に入ることもあります。
研究寄りの人にとっては、「技術的な興味を実際のプロダクトや顧客課題に接続できること」が魅力だと思います。一方で、プロダクト志向のエンジニアにとっては、「最新技術を使いながら、非常に短いサイクルで価値検証ができる環境」です。技術的に深く潜ることも、ユーザーに届けるために素早く組み上げることも、どちらも大事。研究だけ、実装だけ、運用だけではなく、技術が価値になるまでの全体像を経験できるのは、大きな魅力だと思います。
―― 最新の技術トレンドをプロダクトへ落とし込んでいく、開発現場のリアルな空気感を教えてください。
たとえば「AI議事録取れる君」では、LLMの登場初期にいち早く自動要約機能を実装し、サービスを急成長させました。しかし、LLMが出てきたときも、最初からきれいな形でプロダクトに組み込めたわけではありません。要約の品質、処理時間、コスト、入力の長さ、発話者分離、ユーザーごとの期待値など、実際にサービスとして提供しようとすると、考えるべきことが一気に増えます。
新しい技術は、デモではすごく見栄えが良いものです。ただ、プロダクトにするには、例外処理や失敗パターン、運用コスト、ユーザーが本当に欲しい出力の形で詰めなければいけません。そこはかなり泥臭い世界です。プロンプトを何度も調整したり、出力フォーマットを変えたり、処理の分割方法を見直したり、ユーザーからのフィードバックを受けて改善したりする。その積み重ねで、ようやく使えるものになっていきます。
AIdeaLabの開発現場は、新しい技術に飛びつくスピードは速いですが、単に流行を追うだけではありません。「これは本当に使えるのか」「どうすれば価値になるのか」をかなり現実的に見ています。技術への好奇心と、プロダクトとして成立させる粘り強さの両方がある現場ですね。
吉川さん (中列左)
4. 肩書を超えたフラットな議論と、ものづくりの熱量を共有する「カルチャー」
―― 吉川さんの大学院(博士課程)での経験は、現在のスタートアップ経営や組織づくりにどう活きていますか?
研究室の面白さは、「まだ誰も正解を知らないことに向き合う」ところにあると思います。教科書に答えが載っているわけではなく、自分で仮説を立てて、実験して、失敗して、また考える。その繰り返しです。スタートアップ経営もかなり近いものがあります。特にAIの領域は技術の変化が非常に速いので、昨日まで難しかったことが急にできるようになったり、逆に期待していた技術が実用ではうまく機能しなかったりします。そうした不確実な状況で、楽しみながら粘り強く試せるかどうかが重要です。
また、研究室には、雑談からアイデアが生まれたり、誰かが変なことを始めて周りが乗っかったりする空気感があります。AIdeaLabでも、そうした雰囲気は大事にしたいと思っています。社内には高専出身者や研究経験のあるメンバーが多く、技術的な話で自然と盛り上がる文化があります。誰かが新しい技術を見つけてくると、そこから雑談が始まり、気づいたら実装方針の議論になっていることもあります。そういう意味では、会社でありながら研究室や部室に近い雰囲気がありますね。
肩書や職種で線を惹きすぎず、エンジニアも経営陣も一緒に議論します。コミュニケーションもかなりフラットで、役職に関係なく、「それはなぜですか?」「こちらのほうがよくないですか?」と率直に言える空気があります。変に構えずに議論できることは、居心地の良さにつながっていると思います。
―― 不定期開催されている「開発合宿」も、そうしたカルチャーを象徴するイベントだそうですね。
はい、開発合宿もAIdeaLabらしいイベントです。普段の業務から少し離れて、集中的にアイデアを出したり、プロトタイプを作ったりします。技術の話で盛り上がることもありますし、普段は別々の案件を担当しているメンバー同士が一緒に手を動かすことで、新しい発見が生まれます。単なる親睦イベントではなく、ものづくりの熱量を共有する場になっています。
吉川さん (画像前列中央)
5. 役員でありながらプライベートも全力。成果を前提とした「柔軟な働き方」
―― ご趣味であるボランティア活動や鉄道旅など、プライベートもかなり充実されているとお聞きしました。多忙な日々の中で、オン・オフのバランスはどう保たれていますか?
私は趣味でもかなりものづくりに近いことをしています。実際に手を動かして部品を作ったり、イベントを運営したりしますし、鉄道旅も含めて、仕事とは違う角度で刺激を受ける時間になっています。
趣味で得た経験が、仕事に返ってくることも多いです。たとえば、限られた予算や材料で仕組みを作ること、人を巻き込んでイベントを成立させること、現場で起きるトラブルに対応すること。こうした経験は、スタートアップの仕事にも通じています。仕事と趣味を完全に切り分けるというより、それぞれが良い刺激になっている感覚ですね。
6. 未来のメンバーへのメッセージ:不確実性を楽しみ、技術を「人の価値」に変えたい人へ
―― 技術を使って世の中に新しい価値を生み出したいエンジニアや、研究者のような熱量で難しい課題に挑みたいと考えている方へ向けて、メッセージをお願いします。
自分の担当範囲を狭く決めすぎず、プロダクトや事業全体に関わりたいエンジニアにとっては、とても面白い環境だと思います。AIdeaLabでは、アイデア出し、技術検証、実装、運用、顧客提案まで一貫して関われます。単に仕様書通りに作るだけでなく、「そもそも何を作るべきか」から考える機会が多いです。
また、最新技術に触れるだけではなく、それを現実の課題に落とし込む力が求められます。AIは変化が速く、正解がすぐに古くなります。その中で、自分で調べ、試し、判断し、改善していける人には向いていると思います。
研究が好きな人、プロダクトが好きな人、顧客課題を解くのが好きな人、そのどれか一つだけでなく、複数を横断したい人にとっては最高のフィールドです。逆に言えば、「ここからここまでが自分の仕事」と決めすぎない人ほど、楽しめる会社だと思います。
研究室のように、まだ答えのない課題に向き合い、仮説を立てて、手を動かして、失敗しながら前に進む。そういうプロセスが好きな人には、とても合っていると思います。AIの領域は変化が速く、昨日までの常識がすぐに変わります。その変化を楽しみながら、粘り強く形にしていける人と一緒に働きたいです。
技術を深く理解したい人も、プロダクトを作りたい人も、事業や社会実装に関心がある人も、それぞれの強みを活かせる余地があります。自分の手で新しい価値を作りたい、難しいけれど面白い課題に挑みたい。そう思う方には、ぜひAIdeaLabに興味を持っていただきたいです。