創立して6年となるAfriMedico。健康と笑顔を届けるべく、アフリカで置き薬事業を展開する認定NPO法人だ。ビジネススクールで生まれたアイデアは、その後、実際に海を越え、今も広がり続けている。その活動を支える山口理事に話を聞いた。
-山口さんは、AfriMedicoの黎明期である2016年に理事に就任されています。そもそもAfriMedicoに参加したのは、何がきっかけだったのでしょうか?
AfriMedicoにはプロボノとして参加していますが、当時、本業ではグローバル・マーケティングを担当していました。もともと発展途上国に興味があり、学生時代にモロッコを訪問した際に、子どもたちへペンをあげたことがあるのですが、その子どもたちが興奮する様子がとても印象的だったのを覚えています。その後、就職をし、ビジネスを通じて途上国発展に貢献したいという気持ちを持ち続けています。
モロッコのこともあり、アフリカにより直接的に関わりを持ちたいと考えていましたが、本業では当時直接関わることが難しかったので、機会をうかがっていました。AfriMedicoという存在を知ったのは、DODAのソーシャルキャリアフォーラムというイベントでした。その後、プロボノ希望者向けの説明会に出て、すぐ参加することを決めました。なぜかというと、NPOでありながらビジネス感覚があり、持続可能な形を目指しているところに共感したからです。
置き薬のルーツである富山を訪問し説明を聞く(右端)
-AfriMedicoに参加してすぐに、ケニアでのTICAD5(日本政府主催「第5回アフリカ開発会議」)があったそうですね。
はい。実はそのタイミングで、個人的にボランティア休暇をとってアフリカに行くことが決まっていました。なぜボランティア休暇をとろうと思ったかというと、ちょうど海外赴任から帰ってきて1年くらいで、今後のキャリアを考えていたためです。アフリカに関わっていくためにも、まずは現地のことを知りたいと思っていました。団体としてもケニアに行ける人を探していたそうで、双方のニーズが一致しました。
TICAD5参加にあたっては、2か月弱と準備時間が短い中で、ブースのデザインやパンフレットなどの更新などの出展準備をし、現地ではAfriMedicoとの企業連携や広報活動を目的に人脈を広げるべく動き回りました。このときのTICAD5参加と、初めての現地の村訪問の体験は、とても印象に残っています。
-帰国後、AfriMedicoの理事に就任されましたが、それまでの活動から変わったことはありますか?
アフリカから帰国する前にreadyforというプラットフォームでクラウドファンディングのプロジェクトが始まることが決まっていました。実際に始めてみると、資金集めは想像以上に大変で、いろいろな方へお願いしてまわりました。このプロジェクトを通じて、理事として率先垂範して団体の活動を進めていく覚悟が決まったのだと思います。実は、クラウドファンディングの進捗があまりよくなく苦しんでいた時に、当時の(本業の)上司に「理事なら頭を下げてまわりなさい」と言われたんですよ。背中を押してもらえ、腹をくくれたと思います。
資金集めのためのチャリティランにて仲間たちと(右から3番目)
-理事に就任して、新たに見えてきたことはありますか?
いちメンバーとしてよりも、決めなくてはいけないことが多いとは思いました。メンバーから最終的な決断をゆだねられること が増えましたから。また、代表理事から壁打ち相手となって組織の相談を受けたり、また、議論することで、彼女の人となりや意思決定のポイントなどについても理解を深めていきました。これはNPOに限りませんが、組織のトップの行動原理ややり方を理解することはとても大切だと思います。
戦略を練るのも理事の重要な職務の一つ
-いろいろ大変なことがある中で、どうして無償のプロボノ活動を続けているのでしょうか?
参画のきっかけである現地との関わりです。アフリカにいる現地メンバーと直接頻繁にやりとりができる、コミュニケーションを通じて事業を進めているという感覚をとても楽しんでいます。
また、AfriMedicoの活動を通じて本業では出会えない人たちと出会えたり、いろいろな経験ができるのも刺激的です。起業家の方や、行政関係など、自分がそれまで思っていた以上の社会を見ることで、視野がとても広がり、また、新しく出会う人によりフラットに接するようになったと思っています。
今は、本業で育児休業を取得中ということもあり、だいたい週に7時間ほどをAfriMedicoの活動や会議などに使っています。もっとも、ニュースを見て「あれは私たちにも影響がありそうだな」と引っかかったり、頭の中で考える時間はもっと長いですが。
AfriMedicoには、アフリカや日本の学生たちも関わってくれています。彼らがAfriMedicoにかかわってよかった、成長した、キャリアに役立つと思ってもらえることが個人的な目標です。AfriMedicoでの経験が人生を豊かにすることにつながるといいと思っています。
タンザニアのメンバーと共に(左端)
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