書体のコミュニケーションは楽しい
学問的・デザイナー向けタイポグラフィの話ではなく、言葉のコミュニケーションをあそぶ「書体と言葉のカンケイ」シリーズです。
デザイナーとして書体を選ぶ作業のとき、同じ言葉でも書体一つでこんなにもイメージが違って見えるのか、と毎回面白い驚きがあります。この緊張感に書体を選ぶときの楽しさ、難しさ、醍醐味を感じています。
このシリーズではそのたのしい時間をちょっと体感できるような内容を考えていく予定です。
あなたはどんな景色を想像しますか?
"The quick brown fox jumps over a lazy dog."
この言葉を知っていますか?
デザイナーなら誰しも見たことがあるこの言葉。
英語のパングラム*のひとつで、欧文フォントのサンプル表示によく利用されています。
「すばしっこい茶色の狐はのろまな犬を飛び越える」
言葉だけ聞いて(読んで)どんな狐や、犬、状況、風景をイメージしますか?
当然、人それぞれ多かれ少なかれ違うと思います。そこでここにフォントという情報を追加してみます。
たとえば…
もしくは…
と、書いてあった場合どちらのフォントにせよ、人ぞれぞれバラバラだったイメージに書体というヒントが加えられ、みんなのイメージがすこしだけ近づいていきます。
例えば上の「Comic sans」フォントだとアニメや漫画のようで、すっとぼけた狐と、ぼてっとしたおじさんみたいな犬がでてくる絵本みたいな世界観を想像するかもしれません。
下の「Trajan」フォントでは、格言など何か厳格でご立派なことが込められていたり、映画のタイトルのようにも見えるかもしれません。書体によって、見えないはずの色や音などにつながるいわゆる“イメージ”が少しみえてきます。
もちろん誰もが一緒のイメージとなるわけではないですが、書体一つで情報がふえ、書き手が伝えたいイメージに近づくんですね。
今後は偉人たちの名言や、商品名、ブランドロゴなどで遊ぶ予定です。 でわでわまた。
おすすめリンク
DNPさんの「もじもじくらべ」では絵柄に相性の良いフォントは何かを考えるコンテンツが公開されています。とても楽しいので是非。
* パングラム
パングラム (pangram) は、アルファベットを使用する言葉遊びである。ギリシア語で「すべての文字」という意味がある通り、すべての文字(26個のアルファベット)を使い文章を作るのが目的である。
「ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典」より引用