1970年代、日本の電卓メーカーは世界を席巻した。特にカシオ、シャープ、そして後発ながらもキヤノンやソニーも加わり、電卓戦争が激化していた。だが、当時のアメリカでは電卓はまだ「高級品」。一台200ドル(今の価値で20万円以上)もするものだった。そこに日本勢が登場し、価格を一気に10分の1まで落とした。
なぜこんなことができたのか?
理由は2つ。①IC(集積回路)の進化と大量生産、②異常なまでのコスト削減だ。日本企業は部品メーカーと一体になってICを開発し、コストを大幅に下げた。さらに「1円単位のコスト削減」に命をかけた。例えばカシオは、ネジ1本削るために設計を見直し、プラスチックの厚みをミリ単位で調整した。
一方、アメリカ勢は「電卓は高級品であるべき」という考えに固執し、価格競争についていけなかった。そして、あっという間に市場を奪われた。あのテキサス・インスツルメンツ(TI)ですら、日本の低価格モデルに押され、業績を落とした。
この話から学べることは何か?
「市場はプライドよりも合理性で動く」ということだ。アメリカ企業は「高級品としての電卓」にこだわったが、顧客は「計算できればOK」と考えた。そして、日本メーカーはその本質を突いた。結局、「自分たちの理想」よりも「顧客が本当に求める価値」を見極めた者が勝つのだ。
…ところで、今の日本企業はこういう勝負、ちゃんとできてる?