こんにちは。1PACデザイナーの塩屋です。
前回の記事「100年続く醤油蔵のリブランディングのお手伝い。能登のカネヨ醤油さんとの出会い。|カネヨ醤油プロジェクト vol.1」では、カネヨ醤油さんのプロボノ支援を始めることになったきっかけや、ワークショップを通しての課題設定、理念やビジョン・ミッション等の策定を行った様子をご紹介いたしました。
今回は、ワークショップで整理した課題をもとに、カネヨ醤油としてのアイデンティティの定義(ロゴ、ブランドガイドライン)やECサイトへと展開し、カネヨ醤油さんらしさをどのようにかたちにしていったのかをご紹介します。
現状のデザインを知ることからのスタート。
カネヨ醤油さんが持っている想いを形にするために、はじめにカネヨ醤油ロゴのリニューアルに取り組みました。
まず行ったのは、ロゴがどのように使われているかを把握することでした。
各商品のパッケージ、パンフレット、サイトなど、さまざまな箇所でロゴが使用されていたものの、明確なルールが決められていない状態でした。
- パッケージによって「カネヨ醤油」のロゴタイプの入れ方が異なっている
- Webサイトでのみ「能登」という文言が入ったロゴを使用しており、使用ルールが曖昧になっている
- 一部パッケージでは能登の地図まで含まれたロゴとなっている
など、細かな違いのあるロゴが複数存在しており、パッケージや媒体によって与える印象にばらつきが生まれてしまう問題が見えてきました。
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現状使用されているロゴを一覧で整理
続いて、醤油づくりと販売をしている他社の調査も行いました。
各社の商品やサイト内でどのようにロゴが使い分けられているのかを確認しながら、企業理念や主力商品なども整理していきました。
その中でも、ブランディングに注力している企業がいくつかあり、それらの共通点が見えてきました。
- ロゴの使用ルールが明確で、使われているロゴの種類が最小限に抑えられている
- 掲げている理念と、ロゴやパッケージから受ける印象に乖離がない
- 多くの商品を展開している場合も、各パッケージでブランド全体の印象が統一されている
これらの調査を踏まえ、ばらついているロゴのルールを理念に沿って整備し、より想いが伝わるロゴへとリニューアルしていくことにしました。
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競合他社の調査シート
歴史ある形を残しながらも、挑戦や進化が伝わるロゴへ。
醤油蔵のロゴが持つ意味とは?
ロゴのリニューアルをするにあたって、まず醤油蔵のロゴが持つ意味について調べました。
醤油は江戸時代に大量に作られ普及していったのですが、江戸時代は武士以外苗字を持てなかったため、商人は「屋号」を暖簾や看板に用いて他の店と区別しました。
それにより、「シンボル化されたマーク」+「漢字またはカタカナ」という構成が全国的に醤油蔵のロゴに使用されるようになりました。
また、どの醤油蔵のロゴも基本的に重心がセンターにあり安定感や安心感を与えていることで、変わらない美味しさであることを表現しています。
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骨格はそのままに、生まれ変わったロゴ
カネヨ醤油のロゴは
- シンボル化されたマーク:カネ
→曲尺のように真っ直ぐであることという意味 - 漢字:ヨ
→創業者の名前「上江 与(かみえ あとう)」に由来している「与」
という意味合いがあります。
これらは、歴史ある意味合いを持っており、これからも変わらないものになります。
そのため、今回これらの形は残しつつも、常に先を見据えて進化を続けているカネヨ醤油さんの姿勢を反映させたデザインへとリニューアルしていきました。
シンボルマークは、安定感や安心感を伝えるため、曲尺の太さを調整しました。
縦線を太く、横線を細くすることで、今までのロゴにあった少しの不安定さが無くなり、安定した形へと生まれ変わりました。
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基本的な要素は変えずに安定感が出るようバランスを調整
ロゴタイプは、バランスが整っておらず安定していない状態となっており、シンボルマークとの印象の乖離も生まれてしまっていました。
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そこで、シンボルマークの「与」に合わせてはね・はらいをあしらいつつ、これからの進化・挑戦に向けての力強さも感じさせるロゴタイプへと進化しました。
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ロゴの検討画面
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新旧のロゴ比較
ブランドを正しく届けるためのガイドライン。
これまでブランドコンセプトやロゴリニューアルを進めてきましたが、ただ単に定めただけでは意味がありません。これらが適切なルールのもとで使われることで、はじめて会社が掲げる想いやブランドのイメージが適切に発信できると考えています。そのため、ブランドガイドラインの制作もあわせて行いました。
ブランドガイドラインは主に以下の内容を記したものになります。
- ブランドコンセプト
- ロゴコンセプト
- ロゴの使用サイズ、余白エリアなどのルール
- カラーコンセプト
例えば、ロゴは基本的にシンボルマークとロゴタイプの組み合わせで使用するルールとなっていますが、
- 企業の伝統を示したい場合は創業年と地名が入ったロゴを使用する
- ロゴの印象を際立たせたい場面ではシンボルマークが赤いロゴを使用する
など、使用用途に応じた明確なロゴの使い分け方もあわせて定めました。
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ブランドガイドラインのロゴシステム
また、Webサイト、パッケージ、パンフレットなどを制作していくにあたって、ブランドを表現していくために必要なブランドカラーの制定も行いました。
基本の3色である「黒・白:赤」に加え、伝統と挑戦を表現する日本の伝統色を3色用いました。
能登半島の日本海を想起させる「瑠璃紺」をはじめとしたカラーが入ることで、よりブランドイメージが感じられる色合いとなりました。
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ブランドガイドラインのカラーコンセプト
想いをより多くの人へ届けるECサイトへ。
ここまでワンパクが進めてきた「理念・ビジョン・ミッション策定」「ロゴリニューアル」「ガイドライン作成」と並行して、カネヨ醤油さん側でECサイトリニューアルの実施も検討をしていました。
当初は、ブランドガイドラインの作成までをワンパクが行い、その後のWebサイトのデザインも含めてリニューアルはすべて別の制作会社が行う想定となっていました。
しかし、ワンパクがこれまでカネヨ醤油さんから聞いてきた、今までの歴史とこれからの想いをより多くの人に伝えていきたいという想いを、カネヨ醤油の木村さんにお伝えし、ECサイトのデザインについてもワンパクで制作させていただくことになりました。
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カネヨ醤油の木村さん
まずはじめにデザイン方針を設定していきました。
ブランドコンセプトで定めた”能登半島の漁師とつくった地域の文化として根付く「刺身に合う甘い醤油」”というコアバリューをもとに、
“能登の文化として根付く「刺身に合う甘い醤油」を受け継ぐ姿勢と、進化し続ける姿勢を視覚化”
という方針としました。
ただ単に商品を並べて表示させるのではなく、漁師との関わりや土地に根付いた食文化の背景を、写真や文章を使って多くの人に届けることを目指しました。
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以下の要素を盛り込むことでカネヨ醤油が持つブランドイメージを効果的に伝えるデザインとしました。
- 甘口醤油の”優しい味わい”や”手仕事感”を感じられる柔らかいラインをあしらう
- 能登の風景を由来とした自然色を全体に配置
- ブリ、イカ、山(高爪山)など、能登の情景が感じられるイラストを配置
- 醤油ということから、「和」を想起させる余白多めの「間」を活かした構成
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リニューアルしたECサイトのデザイン
さらに、カネヨ醤油が持つ想いをより多くの人に伝えるため、コンテンツの見直しも行いました。
ECサイトに必要な商品一覧・商品詳細の導線に加え、カネヨ醤油の木村さんが想いを綴る「日常の綴り」や、今回制定したブランドコンセプトを情緒的に伝える「カネヨ醤油について」などのコンテンツを新たに作成しました。
また、商品画像も今回のリニューアルに伴い新たに商品撮影をおこないました。
現状サイトでは、背景がある画像と背景が切り抜かれている画像が混在しており、統一感が出ていない状態となっていたため、今回作成したデザインに馴染み、統一感が出るよう全商品を撮影し直しました。
私は昨年から、案件内で写真撮影を担当する機会が増え、デザイン制作だけではなく、撮影にも積極的に関わっていきたいと思うようになりました。ちょうどそのタイミングでECサイトリニューアルが始まったため、カネヨ醤油さんにも許可をいただき、商品を送っていただいてワンパクのオフィスの地下にあるラウンジスペースに仮設のスタジオを設置し撮影を進めていきました。
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ワンパク社内で撮影している様子
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新たに撮影した画像を使用した商品一覧ページ
その後、実装を担当している制作会社さまとも何度も打ち合わせを重ね、細かい要望も汲み取っていただきながら、実装を進めていただきました。
そして、先日無事にリニューアルされたECサイトが公開されました!
今までワンパクとカネヨ醤油さんで進めてきた内容と想いが詰まったECサイトになっておりますので、ぜひ、ご覧ください!
さいごに
今回のプロボノ支援のきっかけは、実際にワンパクのメンバーが能登に足を運んで、現地の農家や生産者・企業の方々のもとを訪ねたことから始まりました。
はじめは「100周年ロゴをつくりたい」という一つの要望でしたが、現地でカネヨ醤油さんの想いに触れ、毎週のように対話を繰り返していくことで、少しずつ今抱えている課題やこれから目指していくべき姿が見えてきました。
結果として、ロゴをつくるだけではなく、ブランドのあり方を見つめ直し、理念を言葉にし、デザインとして表現していくプロジェクトへと広がっていきました。
1~2回のヒアリングのみでは、ここまでブランドイメージを言語化して落とし込むことは難しかったと思っています。
繰り返し対話して向き合い、時間をかけながら段階を踏んで紐解いていくという地道なプロセスがあったからこそ、カネヨ醤油さんらしさをかたちに出来たのだと思っています。
これまで、ロゴ、ブランドガイドライン、ECサイトを作成し、目に見える形でカネヨ醤油さんの想いを表現をしてきましたが、私たちはこれで終わりだとは考えていません。
今後は、パッケージデザインや商品開発など、さらに多くの接点を通して、カネヨ醤油さんのブランドをより深く体現していきたいと考えています。
今回の取り組みが、カネヨ醤油さんのこれからを支える一歩となり、能登で受け継がれてきた味や想いが、より多くの人へ届いていくきっかけになれば嬉しく思います。
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