先日、Xでこんなポストをしました。
個人的な体験を軽く書いただけだったのですが、思っていたよりも多くの反応をいただきました。
「とてもよく分かる」という声もあれば、「電話くらい出ればいいのでは」という意見もありました。
そのやり取りを見ながら、これは単に「電話が好きか嫌いか」という話ではないのだろう、と感じました。
もう少し整理すると、これは仕事の進め方の構造の話なのかもしれません。
「電話キャンセル界隈」という言葉
最近SNSでは「電話キャンセル界隈」という言葉を見かけるようになりました。エンジニアが電話を避ける、という文脈で使われることもあるようです。
ただ、この話は時々「エンジニアはコミュニケーションが苦手だから」
「人と話すのが嫌いだから」といった説明で語られることがあります。
現場の感覚としては、少し違う印象があります。
これは性格というより
深い思考が必要な仕事の構造
に関係している部分が大きいように思います。
そしてこの構造は、エンジニアだけのものではありません。
例えば
・デザイナー
・研究職
・ライター
・企画職
など、深く考えながら作業する職種では、似た感覚を聞くことがあります。
深い思考の仕事は同時に多くの情報を扱う
例えばプログラミングの作業では、単にコードを書いているわけではありません。
頭の中では
・仕様はどうなっているか
・このコードは何をしているのか
・データはどこから来てどこへ流れるか
・例外ケースは何があるか
・他の機能に影響はないか
といった情報を同時に扱っています。
頭の中に小さなシステムのマップを作っているような感覚に近いかもしれません。こうした状態で作業を続けることで、複雑な問題を整理しながら前に進めることができます。
認知負荷という考え方
心理学の分野では、こうした状態を説明する概念として認知負荷(cognitive load)という言葉があります。
簡単に言えば
人が情報を処理するときに、頭の中で扱う情報量の負担
のようなものを指す概念です。
人の作業記憶には限界があると言われていて、同時に扱う情報が増えるほど、処理の負担も大きくなるとされています。
もちろん私は心理学の専門家ではないので、ここで厳密な議論をするつもりはありません。
ただ、現場の感覚としては「同時に多くの情報を持ちながら考えている状態」という説明は、かなり近い気がしています。
コンテキストスイッチという現象
ソフトウェア開発の現場では、これに近い文脈でコンテキストスイッチという言葉がよく使われます。
簡単に言うと作業の途中で別のタスクに切り替わることです。
例えば
・コーディング
・設計
・デバッグ
の途中で
・電話
・チャット
・会議
・別タスク
が入ると、思考の対象が切り替わります。
この切り替えが起きると、元の作業に戻るときに「どこまで考えていたか」「なぜこの設計にしていたか」といった前提を思い出す必要が出てきます。
これが体感として
思考の流れが途切れた
という感覚につながることがあります。
電話が話題になりやすい理由
電話が特に話題になりやすいのは、いくつか特徴があるからだと思います。
・突然発生することが多い
・その場で対応が必要になる
・記録が残りにくい
つまり
コンテキストスイッチが起きやすい
コミュニケーション手段でもあります。
もちろん電話が悪いわけではありません。
トラブル対応や緊急連絡では、電話の方が早いことも多いと思います。
「突然の営業電話」
この手のトピックでよく話題に出るのが突然の営業電話です。
例えばコードを書いているときに、直接・取次ぎを問わず
「サービスのご紹介でお電話しました」
「御社の採用についてお話がありまして」
という電話が入ることがあります。
営業の方も仕事として連絡されているので、それ自体を否定する意図はありません。
ただ開発の作業の流れの中では、
・緊急でもない
・予備知識がない情報について返事を求められる
という特徴があるため、作業の流れと相性が難しいことがあります。
最近の開発組織の工夫
最近の開発組織では、こうした事情を踏まえて
コミュニケーションの取り方を少し工夫しているケースも増えています。
例えば
・取引のない外部からの連絡は問い合わせフォームに集約する
・メールでの提案をお願いする
・チャットで「今少し話せますか」と確認する
・集中時間(コアタイム)を設定する
といった取り組みです。
これは電話を否定するというより、コミュニケーションの使い分けに近い考え方です。
電話か文面かではなく設計の問題
結局のところ、この話は電話か文面かという二択の話ではありません。
重要なのはどのコミュニケーションを、どの場面で使うかを整理することだと思います。
例えば
・緊急対応 → 電話
・提案や営業 → メールやフォーム
・相談 → ミーティング
・確認事項 → チャット
といった形で使い分けることで
・集中して作業する時間
・コミュニケーションする時間
の両方を確保しやすくなります。
まとめ
「電話キャンセル界隈」という言葉だけを見ると、少し極端な印象を受けるかもしれません。
ただ実際には
・認知負荷
・コンテキストスイッチ
・深い思考が必要な作業
といった観点から見ると、一定の理由がある行動でもあるように感じます。
エンジニアに限らず、深く考える仕事では
集中する時間と、コミュニケーションの時間をどう分けるか
というテーマはこれからも重要になりそうです。
電話かチャットかではなく、それぞれの特徴を活かしたコミュニケーション設計が求められているのかもしれません。
おわりに
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