ゲーム開発でよく起きるチュートリアル離脱の問題|理解度を憶測してしまうケース
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本記事では、「ソーシャルゲームのチュートリアルで離脱率が高くなる理由」について整理します。特に、説明を増やしても改善しないケースで、現場では何が起きているのかを構造的に見ていきます。
チュートリアルは、ゲームの第一印象を決める重要な工程です。しかし、離脱率の改善施策がうまくいかないという相談は、決して珍しいものではありません。
反応の多かった“説明不足”という仮説
以前、ソーシャルゲームを開発していた際、チュートリアル中の離脱率が想定より高いという状況がありました。当時の現場で共有された仮説は、「説明が足りないのではないか」というものでした。
実際に、Xでも同様の反応をよく見かけます。「ユーザーが理解できていないのではないか」「もっと丁寧に説明すべきではないか」といった意見です。
これは自然な発想です。離脱という結果を見ると、「理解不足」という原因を想定しやすいからです。
ただ、この仮説には一つ前提があります。
それは、「ユーザーは説明を読んでいる」という前提です。
表面の問題と、実際に起きていたこと
当時の現場でも、説明文を増やす対応を行いました。テキストを丁寧に書き直し、補足文を追加し、画面内の案内も増やしました。
しかし、離脱率はほとんど変わりませんでした。
そこで、プレイログを詳細に確認しました。ボタンの押下タイミング、滞在時間、画面遷移の順序を追っていくと、別の事実が見えてきました。
プレイヤーは、ほとんど説明文を読んでいなかったのです。離脱の直前には、特定の演出中に操作できない時間がありました。さらに、入力を求められる箇所が複数に分かれており、操作の流れが断続的になっていました。
離脱の原因は、「理解できなかったこと」ではなく、「操作できず、待たされていたこと」に近い状態だったのです。
なぜ“説明を増やす”方向に進みやすいのか
ここには構造的な問題があります。
表面上の問題は、「ユーザーが離脱している」という事実です。そこから推測されやすいのが、「理解できていないのではないか」という仮説です。
しかし実際には、
・操作のテンポが分断されている
・入力待ちの時間が長い
・演出と操作が噛み合っていない
といった体験設計の問題が潜んでいることがあります。
それでも説明不足に目が向きやすいのは、開発側が“伝えたい情報”を中心に設計を考えてしまう構造があるからです。
ユーザーの行動を計測せずに、「きっと分からなかったのだろう」と憶測してしまう。その瞬間に、改善の方向性がずれていきます。
テンポを整えたときに起きた変化
当時の現場では、説明量を減らし、操作を一つにまとめ、演出を整理しました。チュートリアル全体を約30秒短縮しました。
その結果、離脱率は明確に改善しました。
不足していたのは情報ではなく、テンポでした。ユーザーが理解する前に、まず「触れる」状態を作ることが重要だったのです。
以前関わった別の現場でも、似たケースがありました。演出の完成度を優先した結果、操作待ち時間が積み重なり、序盤の継続率が下がっていました。演出を一部簡略化し、操作までの距離を短くしただけで、数値は改善しました。
情報量ではなく、体験の連続性が影響していた例です。
憶測するな、計測せよ
私は、改善施策を考える際に「何を"計測"してるか、もしくは"憶測"しているか」を確認するようにしています。
・ユーザーは本当にその説明を読んでいるのか
・どこで手が止まっているのか
・待ち時間はどれくらいあるのか
ログで確認できるものは、必ず確認します。
理解度を想像する前に、行動を計測する。
この順番を守るだけで、施策の精度は大きく変わります。
ゲーム業界で共有されてきた知見「憶測するな、計測せよ」を愚直に行っているわけです。
まとめ:説明より先に、体験を整える
チュートリアルで離脱が起きるとき、原因は必ずしも説明不足ではありません。体験のテンポや操作の流れが分断されている可能性もあります。
問題を個人の理解力に帰属させるのではなく、設計の構造として整理することで、改善の糸口が見えてきます。
説明を増やす前に、まず触れる状態を整える。
この視点を共有しておくだけでも、チュートリアル設計は少し楽になります。
離脱率は、ユーザーの能力ではなく、体験設計の結果として現れる数値です。その前提を置き直すことが、改善の第一歩だと私は考えています。
おわりに
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