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生徒一人一人に合った学ぶ「環境」を用意するということ。

英語塾

私は英語塾でアルバイト教師として生徒に英語を教えています。私が勤めている塾は一般的な塾とは少し異なります。先生が教壇に立って生徒が先生の話を聞く、一方通行型の授業スタイルはとっていません。生徒は、基本的に自分に用意されたカリキュラムを自習形式で進めていきます。

その分、先生は生徒とのコミュニケーションを大切にし、本当に生徒が理解できているかのサポートに徹底しているのです。生徒にとってどういうことが課題で、どういうことでつまづいているのかヒアリングをし、適切なアドバイスをします。それだけでなく、生徒が成長した点については生徒にしっかり伝え、自分のことのように喜びます。

自習形式を採用しているものの、生徒との一対一の対話を通して生徒一人一人の英語力に適した学習カリキュラムをカスタマイズしています。


英語嫌いの生徒

ここではとある生徒の話をしたいと思います。授業が始まっても作業に取りかかってくれない小学4年生の子がいました。彼女はこちらから声をかけても無反応で、ひたすら絵を描き続けていました。

彼女なりの授業を始めたくない理由があり、無理に授業を始めようとしても辛いだけだと思い、しばらく自由に過ごしてもらうことにしました。元から英語に対して苦手意識を持っていた彼女は、親に無理やり塾に来させられていたので、彼女が素っ気ない態度を取ってしまうのは無理もありませんでした。

私は彼女が描いていた鬼滅の刃の絵を見て、鬼滅の刃のアニメを見たという話を彼女にしてみたところ、彼女は好きなキャラクター(善逸)について話してくれました。授業とは関係なく日本語で、彼女の話を聞くことに徹底しました。しばらく雑談を続けていたら、彼女は学校の宿題を家に忘れ、先生に叱られて落ち込んでいると教えてくれました。私はその話をただ聞いて頷くだけでした。それで何かが解決したわけではありませんでしたが、その後、彼女はもくもくと作業に取り組んでくれました。

彼女の話を聞いてあげることだけでよかったのだと気付きました。やり場のない怒りと悲しみをどのように処理したらいいのか分かっていなかったのかもしれません。それを誰かに聞いてもらうことで、気持ちを落ち着かせることができたのかもしれません。タネも仕掛けもないなんともないことかもしれませんが、彼女の話を聞き、心情に寄り添えたことが、彼女の悲しい気持ちを和らげ、授業に集中できる準びを整えることができたのだと思いました。

その日以降、私は授業の冒頭では彼女に学校で何があったかを聞くようにしています。彼女の話の多くは学校であった嫌なことについてですが、最近は楽しみにしているテレビ番組について笑顔で話してくれることがあります。


話を聞くということ

話を聞くということは、その人のことを認めることと同じなのかもしれません。自分はここにいる、自分はこういう気持ちだ。人の根っこの部分にあるそうした感情を肯定し、認めることが、孤独感から救い上げるのかもしれません。

一般的に、塾の先生の仕事は、生徒の学力を向上させるために勉強を教えるということ。しかし、その前提には、生徒が勉強をするという心構えができているということあります。私は、生徒の心の準備をすることも先生の役割の一つであり、生徒の心の準備をするための一歩として、生徒の話を聞くのではないかと思います。

このような経験は、私が自分なりの気付きで誰かの環境を整える仕事をしたいと思うようになった理由の一つでもあります。

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