幼い頃から、鉄道が好きだった。路線図を眺め、駅の配置を調べるうちに、鉄道の背後にある地域の産業構造や政治的判断に興味が広がっていった。鉄道を通して「歴史の構造」を読み解く姿勢が自然と身につき、これが後の研究人生の原点となった。
大学では法制度や政治思想を学びながら、日本史だけでなく台湾・中国・韓国・東南アジア・アメリカなど多様な地域史に触れた。複数の文化圏を並行して学ぶことで、国内だけでは捉えきれない構造や歴史認識の差異に気づき、「日本史を外側からも見たい」という問題意識が芽生えた。
卒業後は一度民間企業に就職したが、社会の中で働く経験を通じて、自分が本当に深めたい領域が歴史研究であることが明確になった。そこで上智大学史学科へ学士入学し、比較史・史料批判・地域研究を体系的に学び、研究の基盤を固めた。
博士前期・後期課程では、膨大な一次史料を読み込み、語彙・文体・時代背景・政治的文脈まで踏まえた複層的な読解を積み重ねた。史料の差異を比較し、記述の背後にある構造を読み解く力を磨くことで、歴史研究に不可欠な分析力が形成された。
研究を深める過程で、「日本史を外側から見るためには、実際に外側に身を置く必要がある」と考えるようになった。制度的な支援を受けて台湾へ渡り、長期滞在しながら研究を進めた経験は、異文化環境での協働や言語の違い、歴史認識の差異を体感する貴重な機会となった。台湾での生活は、専門的な知識をどのように伝えれば相手に届くのか、背景の異なる人々とどう共通理解を築くのかを深く考える契機となった。
研究と並行して、学部教育の補助、日本語教育、教材作成、著書の執筆、NHK番組制作にも携わった。教育の現場では、学習者中心の指導を重視し、理解度に応じて説明の構造を調整した。メディア制作では、公共放送の厳密な制作環境の中で、事実確認の徹底と情報の扱いへの慎重さを身につけた。
鉄道雑誌での経験を活かした番組構成、終戦記念特番での一次資料の検証、台湾の視聴者を意識した企画提案など、研究・教育・メディアの三領域が互いに補完し合う形で専門性が発展していった。
研究で得た知見を教育で伝え、教育で得た視点を社会発信に活かし、社会発信で得た経験を再び研究へ還元する──この循環が、三つの力を総合的な専門性へと育ててきた。
日本と台湾という二つの文化圏を往復しながら形成されたこの総合的な力を、今後は台湾の教育・研究・文化発信の現場で活かし、両国を繋ぐ実践的な架け橋として貢献していきたいと考えている。