予約サイトだけでは、わからないことがある
数年前、海外のある街でホテルへ向かっていたときのことです。
予約したのは、中心部に近く、宿泊者の評価も悪くないホテルでした。地図を見る限り、最寄り駅からもそれほど離れていません。
ところが、駅から数分歩いたところで、街の空気が変わりました。
街灯が少なくなり、人通りが途切れ、背後から聞こえる足音がこちらの歩幅に合わせるように速くなったり、遅くなったりする。
首の後ろが冷たくなるような感覚を、今でも覚えています。
幸い、何も起こりませんでした。しかし、この経験から一つのことを学びました。
安全とは、危険な状況をうまく切り抜けることではなく、最初からその場所に足を踏み入れないこと。
そして、その判断ができるのは、現地に着いてからではありません。ホテルの予約ボタンを押す前です。
これが、海外ホテルの立地とエリアについて詳しく調べるようになった原点です。
ホテルより先に、エリアを選ぶ
ホテルを予約するとき、多くの人は料金、部屋の写真、口コミ評価から候補を探します。そのあとで、「この場所に泊まっても大丈夫だろうか」と確認します。
しかし、私は順番を反対にしたほうがよいと考えています。
最初に泊まるエリアを決め、そのエリアの中から予算や条件に合うホテルを選ぶ。
滞在の快適さを左右するのは、部屋の広さや内装だけではありません。
- 夜になっても人通りがあるか
- 駅からホテルまで、どのような道を歩くのか
- 空港から夜でも安全に移動できるか
- 数ブロック先に、雰囲気が変わる境界線がないか
- 食事や買い物を徒歩圏内で済ませられるか
どれほど評価の高いホテルでも、一歩外へ出るたびに緊張する場所では、旅の疲れ方が変わります。
反対に、エリア選びさえ間違えなければ、ホテルの候補は自然に絞られます。安全性だけでなく、移動時間や予約時の迷いも減らせます。
旅行情報を「受け取る側」から「つくる側」へ
私は長年、Webマーケティング、SEO、コンテンツ企画・編集、Webディレクションに携わってきました。
旅行関連の大規模プラットフォームでは、検索の仕組みやコンテンツ設計、外部メディアの開拓、編集ディレクションなどを経験しました。
旅行情報を受け取る側ではなく、組み立てる側に10年以上いたことになります。
そこで学んだのは、画面に表示されている情報だけでなく、表示されていない情報を見ることの大切さです。
設備欄に「冷房あり」と書かれていても、暖房がないことは書かれていないかもしれません。
「駅から徒歩1分」と表示されていても、それが改札からなのか、地上出口からなのかはわかりません。
周辺が夜も歩きやすいか、部屋が静かか、坂道や石畳の上をスーツケースで移動できるか。こうした情報には、そもそも入力項目がないこともあります。
書かれていないことは、自分で調べなければなりません。
私は、この情報の隙間を埋めたいと考えるようになりました。
世界350以上の都市を、エリア単位で調べる
現在は、海外ホテルのエリア選びに特化したWebメディア「ShortCut Traveler」を運営しています。
世界350以上の都市を対象に、治安、交通、夜間の移動、ホテル価格、観光地へのアクセスなどを調査し、エリアごとに比較できるガイドを制作しています。
私が目指しているのは、観光名所を紹介するだけの旅行メディアではありません。
旅行者が予約前に抱える、
「どのエリアなら安心して泊まれるのか」
「夜に到着しても移動できるのか」
「安いホテルを選ぶことで、何を失う可能性があるのか」
といった、具体的な不安に答えられるメディアです。
Webサイトでは、エリア比較、地図、予約前のチェックリストなど、意思決定に必要な情報を整理しています。
一方、noteでは「タケシ」という登場人物に、旅行でよくある失敗を体験してもらっています。
エレベーターのない建物の4階まで、23kgのスーツケースを運ぶ。切符を持っているのに無賃乗車と判断される。地図では徒歩12分だった道が、坂道のため25分かかる。
どれも、旅行者が実際に経験し得る失敗です。
「暖房の有無を確認しましょう」と説明されても、人は忘れてしまいます。しかし、寒くて一晩中眠れなかった人の話なら、次の予約時に思い出してもらえるかもしれません。
正確な情報を届けるだけでなく、読んだ人の記憶に残り、行動につながる形にする。これは、私がコンテンツをつくるうえで大切にしていることです。
データとコンテンツで、迷いを減らしたい
SEO、アクセス解析、編集、Webディレクションは、それぞれ別の仕事に見えるかもしれません。
しかし、私の中ではすべてつながっています。
検索データからユーザーの悩みを見つけ、必要な情報を調査し、わかりやすい構成に整理する。そして、公開後の行動を分析し、さらに改善する。
私が得意としているのは、この一連の流れです。
これからは、SEOやコンテンツ制作だけにとどまらず、アクセス解析、CRM、広告、顧客データなども横断しながら、事業全体の成果につながるマーケティングに取り組みたいと考えています。
単にアクセス数を増やすのではなく、ユーザーの不安や迷いを減らし、その先の予約、購入、問い合わせ、継続利用につなげていく。
情報を届ける側と、必要としている人との間には、まだ多くの「書かれていないこと」があります。
その隙間を見つけ、データとコンテンツの力で埋めていくことが、私の仕事です。
同じような課題を持つ方や、コンテンツとデータを生かしたマーケティングに取り組んでいる方と、ぜひお話しできればと思っています。
ShortCut Traveler
https://www.shortcuttraveler.com/