こんにちは!植田涼介です。
一枚の紙を何度も折りたたんでいくと、そこには複雑に入り組んだ筋が刻まれます。一度ついた折り目は二度と消えることはなく、広げても独特の立体感や陰影となって紙の上に残り続けます。どんなに綺麗にアイロンをかけたとしても、その軌跡が消え去ることはありません。先日、机の引き出しを整理していたときに出てきた古い折り紙を眺めながら、ふとそんなことを考えました。折ったり開いたりした経験があるからこそ、一枚の薄い紙は立体的な形となり、他にはない特別な表情を持つようになるのです。そしてこの折り目という存在は、人が歩んできたキャリアや生き方そのものと深く重なっているように感じられます。
瀬戸内を臨む海岸沿いを歩くと、対岸へと続く雄大な橋の姿や、絶え間なく行き交う船の姿が目に飛び込んできます。穏やかな波音と心地よい潮風が吹き抜けるこの街で日々を過ごしていると、人の歩みもまた海を渡る航海のように、様々な風に向き合いながら続いていくものだと実感させられます。人生の途中で直面する壁や方向転換、一度立ち止まって悩み抜いた経験は、まさに心に刻まれた折り目のようなものです。一見すると失敗や回り道に思えるような出来事であっても、それは決して無駄な傷ではありません。むしろ、その折り目があるからこそ、その人にしか描けない深みのある立体的なキャリアが作られていきます。
私たちはつい、折り目のない真っ白で綺麗な一枚の紙を目指してしまいがちです。挫折のないスムーズな経歴や、他人が羨むような分かりやすい成功ばかりを求めてしまうことがあります。しかし、本当に魅力的な人物やその人らしい強みというのは、葛藤しながら何度も思考を折 折り重ねてきたプロセスの中にこそ宿るのではないでしょうか。自分がこれまでにどんな出来事に直面し、どのように心を折りたたんで前を向いてきたのか。その折り目の形をじっくりと観察し直すことで、今まで気づかなかった自分だけの固有の価値や、次に向かうべき方向性が自ずと見えてくるはずです。
波が寄せては返す海岸線のように、人生には予期せぬ変化や試行錯誤が何度となく訪れます。そのたびに刻まれる新たな折り目を恐れるのではなく、自分だけの物語を形作る大切なプロセスとして愛おしく受け入れていくこと。まっすぐな一本道ではなくても、いくつもの折り目が交差するからこそ、人はしなやかで強い自分らしい形をつくり上げることができるのだと思います。風が優しく吹き抜ける日常の中で、自分の足元にある折り目を静かに見つめ直す時間は、これから先の道を自分らしく歩んでいくための揺るぎない土台となってくれるのではないでしょうか。