Webサービスを作っていると、公開前にどうしても不安になります。文章は本当に分かりやすいだろうか。デザインに違和感はないだろうか。必要な機能が足りていないのではないか。細かい部分が気になり、修正を繰り返しているうちに、公開するタイミングを逃してしまうこともあります。しかし、個人でWebコンテンツを運営する中で実感したのは、最初から完成されたサービスを作ることは難しいということでした。本当の改善点が見えてくるのは、サービスを公開し、実際に誰かに使ってもらってからです。
作り手の「分かりやすい」と、利用者の「分かりやすい」は違う
制作中は、ページの内容も機能もすべて把握しています。そのため、ボタンの意味や操作の流れを、自分では自然に理解できます。しかし、初めて訪れた人にとっては、作り手が当たり前だと思っていることも当たり前ではありません。どこを押せば始まるのか分からない。説明が長くて、目的の情報までたどり着けない。便利な機能を追加したのに、その存在に気づいてもらえない。こうした問題は、制作画面を一人で見続けているだけでは、なかなか発見できません。私はオンラインで恋愛運を楽しめる「恋みくじ」を運営しています。サービスを改善する際に大切にしているのは、機能を増やすことよりも、利用者が迷わず楽しめるかどうかです。説明文を短くする、ボタンの位置を見直す、スマートフォンでの文字サイズを調整する。目立たない変更でも、体験全体の分かりやすさにつながります。
大きな変更より、小さな違和感を見逃さない
Webサービスの改善というと、大規模なリニューアルや新機能の追加を想像しがちです。もちろん、それらが必要な場合もあります。しかし、日々の運営で本当に多いのは、小さな違和感を一つずつ取り除いていく作業です。例えば、文章の意味が一度で伝わらないなら、言葉を置き換える。押してほしいボタンが目立たないなら、色や余白を調整する。表示が少し遅いなら、画像やプログラムを軽くする。一つひとつの変化はわずかでも、それを積み重ねることで、サービスは少しずつ使いやすくなっていきます。完成したものを守るのではなく、利用者の反応を受け取りながら育てていく。その姿勢が、長く利用されるWebサービスには必要だと考えています。
「情報」ではなく「体験」を届ける
現在は「恋みくじ」に加え、日本語学習を支援する「漢字書き順」のコンテンツも制作しています。漢字の意味や読み方、画数、筆順を掲載するだけであれば、情報を整理して並べることでページは完成します。しかし、利用する人が求めているのは、情報そのものだけではありません。知りたい漢字をすぐに見つけられること。書き順の動きを直感的に理解できること。スマートフォンでも快適に確認できること。そして、調べ終わったあとに「少し分かった」と感じられること。情報が正しくても、そこへ到達するまでに迷ってしまえば、良い体験にはなりません。だからこそ、何を掲載するかだけでなく、どのような順序で見せるか、どの言葉なら伝わるか、利用したあとにどんな気持ちが残るかまで考えるようにしています。
流行を追うより、思い出してもらえる場所を作りたい
Webの世界では、新しいサービスや技術が次々と登場します。変化を学び続けることは大切ですが、流行だけを追いかけていると、「何のために作っているのか」を見失ってしまうことがあります。私が目指しているのは、短期間だけ注目されるサービスではありません。恋に迷った日に思い出してもらえる「恋みくじ」。漢字の書き方を知りたいときに自然と訪れてもらえる「漢字書き順」。必要になった瞬間に思い出してもらい、安心して使ってもらえる場所を作ること。それが、現在の一禅堂の目標です。そのためには、公開した時点を完成と考えず、利用者の声や行動に向き合いながら、地道に改善を続ける必要があります。
完璧を待たず、まず届けてみる
自分の中だけで考え続けていると、いつまでも正解は見つかりません。まず形にして届けてみる。使ってもらい、反応を受け取り、必要な部分を直す。そして、また届ける。この繰り返しの中で、サービスだけでなく、作り手自身の考え方も少しずつ変化していきます。公開することはゴールではなく、利用者との対話の始まりです。これからも目立つ変化だけを求めるのではなく、小さな違和感を丁寧に拾いながら、何年後も安心して利用してもらえるWebコンテンツを育てていきたいと思います。一禅堂の活動内容や制作への考え方、現在取り組んでいるコンテンツについては、こちらのプロフィールでも紹介しています。一禅堂|日本文化・Webコンテンツ運営|Procom