「似合う」だけでは、服は選ばれない。
私はこれまで、ファッションレンタルサービスのスタイリストとして、オンラインを中心に10,000件以上のコーディネート提案に携わってきました。
お客様の好みや体型、ライフスタイル、その服を着る場面などを読み取りながら、一人ひとりに合った服を選ぶ。
その経験を重ねる中で感じるようになったことがあります。
それは、
「似合う服」と「選びたい服」は、必ずしも同じではない。
ということです。
パーソナルカラーや体型に合っている。
トレンド感がある。
デザインも素敵。
それでも、お客様にとって「着たい服」になるとは限りません。
では、実際に女性が服を選ぶとき、何を見ているのでしょうか。
10,000件以上のスタイリングを通して感じてきたことを、改めて考えてみたいと思います。
「似合う」の先にある、生活との相性
スタイリストから見れば似合うと思う服でも、お客様から思うような反応が得られないことがあります。
たとえば、鮮やかなカラーのパンツやトップス。
その方の顔映りが良く、とても似合っていたとしても、
「職場では浮いてしまいそう」
と感じれば、実際に着る服としては選ばれにくくなります。
透け感のあるアイテムも同様です。
ファッションとしては素敵でも、仕事や普段の生活の中で「これは着づらい」と感じれば、手が伸びなくなる。
そして、意外と大きいのが着心地です。
生地がゴワゴワする。
肌に触れると痒い。
動きづらい。
服を見ているだけでは小さく思えることも、何時間も身につけて過ごす人にとっては大きな問題になります。
つまり服は、鏡の前だけで選ばれているわけではありません。
その人が過ごす環境と、実際に身につけたときの身体感覚の中で選ばれている。
「似合う」を考えるときにも、その人の暮らしまで想像する必要があると感じています。
選ばれるのは、「今の自分」から少しだけ世界を広げてくれる服
一方で、スタイリングをしていて特に嬉しい反応をいただくことがあります。
「自分では絶対に選ばなかったけれど、着てみたら似合っていた」
「思っていたよりすっきり見えた」
「こういう服も着られるんだと、新しい発見になった」
「ファッションの幅が広がった」
そんな言葉です。
お客様の好みに100%合わせて、いつも選んでいるものと似た服を届ければ、失敗は少ないかもしれません。
けれど、それだけでは新しい発見も生まれにくい。
反対に、本人の好みや生活からあまりにも離れた服では、「私には着られない」と感じてしまいます。
その間にある、
「自分では選ばない。でも、着てみたら私にも似合う」
というところ。
今の自分からほんの少しだけ外側へ連れていってくれる服との出会いに、スタイリングサービスならではの価値があるのだと思います。
安心して着られることと、新しい自分に出会えること。
その両方が揃ったとき、服は「選びたいもの」になるのではないでしょうか。
女性が選んでいるのは、「服」ではなく、その服を着て過ごす自分
10,000件以上のスタイリングでは、本当にさまざまなご要望をいただいてきました。
「痩せて見える服が着たい」
「自分に似合う服を知りたい」
というお悩みだけではありません。
旅行、友人とのランチ、観劇、ライブ鑑賞、スポーツ観戦、子どもの運動会、学校面談、PTA行事、婚活写真、出張。
「久しぶりに東京へ出かけるので、そのときに着たい」というご希望もあります。
電車や飛行機で長距離を移動するなら、見た目だけでなく動きやすさや着心地も重要になります。
さらに、
「汗染みが目立つ服は避けたい」
「胸元が開きすぎるものは着づらい」
「小さなバックボタンは留めづらい」
「着方がよく分からない服は困る」
「手持ちの服と似たものはいらない」
「安っぽく見える服は嫌」
「おばさんっぽく見えたくない」
「ダサく見えたくない」
といった、とても具体的な声もあります。
こうしたご要望に触れ続けて感じるのは、お客様が求めているのは、単に「素敵な服」ではないということです。
その服を着て学校へ行った自分。
旅行している自分。
ライブを楽しんでいる自分。
久しぶりに東京へ出かける自分。
服を選ぶことは、その服を着て過ごす自分を選ぶことなのかもしれません。
だから商品そのものを見るだけではなく、
「この服を、誰が、どこで、どんな一日を過ごすために着るのか」
まで考えることが、商品やスタイリングを提案するうえで大切なのだと思っています。
ECに必要なのは、「憧れ」と「安心」の両方
これまで複数のオンラインスタイリングサービスで商品を選定してきた中で、特に「選びやすい」と感じた商品ページがあります。
私が初めてオンラインパーソナルスタイリストとして業務委託で携わった、株式会社ワンピースのブランド「CAWAII」です。
CAWAIIの商品ページで印象的だったのは、商品の特徴だけではなく、
「どんな人に向いているのか」
「その服を着ることで、どんな悩みを解決できるのか」
が、商品名や画像から直感的に伝わってきたことです。
たとえば「肌をあとちょっと隠せるレースインナー」。
「レースインナー」という商品の種類だけでなく、この商品が何を叶えてくれるのかまで伝わってきます。
スタイリストとして商品を探しているときにも、
「胸元の開きが気になると言っていた、あのお客様にいいかもしれない」
と、顧客の悩みと商品をすぐに結びつけることができました。
また、他のレンタルサービスとは異なり、お客様が見るのと同じ商品ページをスタイリストも見ながら、まるで通販で買い物をするように商品を選べたことも印象に残っています。
商品スペックだけではなく、お客様からその商品がどう見えるのかまで共有しながら選べる。
スタイリストにとっても、商品の魅力を理解し、提案につなげやすい環境でした。
「分かりやすさ」で、商品の魅力を失わない
CAWAIIでもう一つ印象に残っているのが、サイズや体型に関する情報の見せ方です。
ECでは、異なる身長のモデルが同じ商品を着て、丈感を比較する画像を見かけます。
サイズ感を確認するうえではとても便利です。
一方、スタイリストとして商品を選ぶ立場では、見せ方によっては商品のシルエットがきれいに見えず、本来の魅力が弱く感じられてしまうこともありました。
CAWAIIでは、商品の魅力を伝えるメインビジュアルとは別に、さまざまな体型のスタッフについて、身長や普段の着用サイズとともに、丈感や着用感などを確認できる情報が用意されていました。
サイズを知るための情報と、商品を魅力的に見せるビジュアルの役割が分かれている。
私はこの見せ方がとても好きでした。
「素敵。着てみたい」という憧れと、
「私にも着られそう」という安心。
ECの商品ページには、その両方が必要なのではないかと思います。
10,000件の「選ぶ」経験を、これからは「つくる」側へ
スタイリングを続ける中で、最近は「この人にはどの服を選ぼう」と考えるだけではなく、
「こんな服があったら、もっと毎日がラクなのに」
と、商品そのものについて考えることが増えました。
たとえば、さっと腕まくりできるブラウス。
ブラウスは可愛いけれど、カフスにゴムが入っていないと、家事をするときや少し袖を上げたいときに不便を感じることがあります。
きれいなデザインはそのままに、もっと日常の動作に寄り添う仕様にできないだろうか。
産後も長く気になりやすいお腹まわりを自然にカバーしながら、可愛く穿けるボトムス。
重ね着が苦手な人でも、一枚着るだけでコーディネートが完成するドッキングやレイヤード風のアイテム。
そして、デニムと合わせるだけで可愛く決まる「究極の白ブラウス」。
私が作ってみたいのは、ただ便利な服でも、ただ可愛い服でもありません。
実用性と、ときめきの両方がある服。
毎日の小さな「着づらい」「困った」「決まらない」を減らしながら、それでも鏡を見たときにはちょっと嬉しくなる。
そんな服を、これからは「選ぶ」だけではなく「つくる」側でも考えてみたいと思っています。
「その服を着る人の一日」から考える
10,000件以上のスタイリングを経験してきても、「選ばれる服とはこういう服です」と一つの正解を出すことはできません。
人によって生活も、体型も、好みも、心地よいと感じるものも違うからです。
ただ、たくさんのお客様と向き合ってきたからこそ、確かに感じていることがあります。
「似合う」だけでは、服は選ばれない。
その人の生活に無理なく馴染むこと。
小さな悩みや不便を解決してくれること。
そして、ときには自分では選ばなかった新しい魅力に出会わせてくれること。
商品ページなら、商品の魅力にときめきながら、「私にも着られそう」と安心できること。
私はこれから、企業が「何をつくりたいか」だけではなく、
「その服を着る人は、どんな一日を過ごすのか」
というところから、商品やサービス、ECコンテンツを考える仕事にも携わっていきたいと思っています。
これまで10,000件以上のスタイリングで培ってきた顧客理解を、今度は**「選ぶ」から「企画する・つくる」へ。**
女性の毎日に、実用性と、ときめきの両方を届けられる仕事をしていきたいです。