アプリをリリースした週の週末、いつも通り現場(ライブ会場)に行きました。そこで、使ってくれている人たちから直接言われました。「ここが動かない」「これが分かりにくい」「これが欲しい」。作った本人が想像しなかった使い方をしている人が、たくさんいました。
7月29日に、個人開発の推し活アプリ「推しスキ」をApp Storeに出しました。初日に55人が登録してくれて、そこで一区切りついたつもりでいました。まちがいでした。本当の仕事は、そのあとに始まりました。
その55人が何なのかを、まず考え直しました。
出すまでは、本当に使いたい人がいるのかどうか分かりませんでした。55人が入ってくれて初めて、このアプリには需要があると分かりました。誰も入らなければ、MVPは失敗したという結果だけが残ります。
そして、もうひとつ大事なことがあります。次の人に届けてくれるのも、この人たちだということです。広めてくれる人がいなければ、作った本人しか使っていないアプリで終わります。
つまり最初のユーザーは、感謝する相手ではなく、成長そのものです。この人たちがアプリを好きになってくれるかどうかが、そのまま次の100人が来るかどうかになります。だから、次の機能を作るより先に、いまいる人たちを満足させることを選びました。
なので8月は、集客をしないと決めました。優先順位をこう置きました。
1. 今使ってくれている人が「使い続けたい」と思えるように
2. 迷っている人が信じられるように
3. そして、広く届ける
広めないほうがいいという判断ではなく、まだ広く出す準備ができていないという判断です。アーリーアダプターは多少雑でも面白がって使ってくれますが、その外側の人は、1回開いて分かりにくかったら二度と戻ってきません。準備の前に広く配ると、いちばん貴重な「初めて開いた瞬間」を人数分だけ捨てることになります。
もらった声は、13項目を1枚の画像にまとめて全部公開しました。すでに対応済みのものも消していません。書いてくれた人は、その中から「自分のやつ」を探すからです。見つからなければ、その人にとっては聞き流されたのと同じです。名前のないお礼ではなく、名前のあるお礼にしたかった、それだけです。
そこからの12日間で、344コミット、396ファイル。アプリ本体とバックエンドの合計です。私には平日40時間の本業があるので、その前と後と週末を全部これに使いました。
この量をこなせたのは、根性ではなく作り方を変えたからです。Claude Codeのセッションを、常時8つ以上同時に開いていました。
なぜ8つなのか。GTDに「2分で終わることは、メモせずその場でやる」という2分ルールがあります。実装は2分では終わりません。でも、セッションを開いて投げるだけなら、本当に2分です。つまりAIエージェントを使うと、ほとんどのタスクがこの2分ルールの対象になります。
「あとでやる」とメモに書いたものは、1週間後もメモのまま残っています。投げてしまえば、少なくとも半分は終わって戻ってきます。8つという数字は目標ではなく、思いついたことを溜めずに全部その場で投げた結果です。フィードバックを聞いた現場のその場で投げたものもあります。
そのぶん、自分の仕事はコードを書くことではなく、上がってきたものをレビューして実機で確認することになりました。正直に言うと、途中で現場に遅刻しました。現場を見逃さないためのアプリを作っていて、です。
結果として、マーケティング施策を何もしていない8月に、ユーザーは55人から87人まで少しずつ増え続けています。広告も出していませんし、キャンペーンも打っていません。やっていたのは、開発の過程を毎日Xに書くことだけでした。
「今日はここを直しました」は、私には作業報告のつもりでした。でも読む人にとっては、アプリが生きていて毎日良くなっている証拠だったのだと思います。宣伝の時間が1分も取れない月に、勝手に働いてくれていたのはこれだけでした。
プロダクトを伸ばすのは、リリース日の数字ではなく、最初に信じてくれた人たちを満足させ続けることでした。ものを作る仕事で私がいちばん大事にしているのは、この順番です。