Portfolio
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個室と共有空間の「あいま」に、もう一つの居場所
それぞれの時間を過ごしながら、気配でつながる距離感
ライフステージに合わせて変化するAimaの使い方
遊びと学びの実験室|0〜12歳
それぞれが没頭できるパーソナルラボ|13〜60歳
家族の記憶が集まる第二のリビング|定年後
Aimaによって変化する、共有空間とプライベート空間の役割
個室が「眠る」ための空間に近づく
共有空間がコミュニケーションの場として整う
コンセプト立案のための調査と問題提起
展示場見学
テキスト分析
ミサワホームのソリューションの整理
間取りの時代ごとの変化の調査
問題提起とAimaの提案
私の担当領域
学びと振り返り
関連リンク
学部3年後期の人間工学実習・演習で、ミサワホームの独自性のあるソリューション構築のための研究に取り組みました。
私が所属する班では、家族と同じ家で過ごしながらも一人一人が心地よい距離感を保てる空間として、「Aima」を提案しました。スマートフォンが普及し生活のパーソナル化が進んだ現代に、家族のつながりを完全に断つのではなく、適度に離れ、自分の時間を持つための「あいま」を生み出すスペースです。
本プロジェクトでは、授業内でミサワホームの方をお招きした説明会や住宅展示場の見学を通して、同社の住まいづくりや空間提案について理解を深めました。その学びをもとに、現代の家族が抱える距離感や生活スタイルの変化に着目し、住まいの中に新しい居場所をつくる提案として構想をまとめました。
最終発表会にもミサワホームの方にお越しいただき、提案に対して貴重なご意見をいただきました。さらに授業終了後も、大学院試験に向けてメンバーで自主的に集まり、ブラッシュアップを重ねました。
授業課題として始まったプロジェクトでしたが、企業のソリューションを理解し、それを自分たちなりの視点で再解釈して、人の暮らしや感情に寄り添った提案へ落とし込む経験になりました。
本記事では、このプロジェクトのコンセプトや制作プロセス、実際に取り組む中で得た学びについて詳しく紹介します。
ミサワホームの収納ソリューションの一つである「蔵」に着目し、その上部空間を活用した新しい居場所として「Aima」を提案しました。
Aimaは、リビングやダイニングのような共有空間と、それぞれの個室のようなプライベート空間の「あいま」に位置するスペースです。家族と一緒に暮らしていながらも、自分の作業や趣味に集中できる場所をつくることで、完全に一人になるのではなく、家族の気配を感じながら過ごせる空間を目指しました。
Aimaの特徴は、家族が別々のことをしていても、互いの存在をゆるやかに感じられる点にあります。
たとえば、親がキッチンで料理をしているとき、子どもがAimaで過ごしていれば、直接様子を見に行かなくても、同じ住まいの中にいる安心感を得ることができます。また、Aimaにいる側も、個室や共有空間への人の出入りを自然に感じ取ることができます。
このようにAimaは、家族同士が近すぎず、離れすぎない「あいま」をつくることで、一人一人の時間と家族としてのつながりを両立する空間として提案しました。
Aimaは、家族の成長や暮らし方の変化に合わせて、役割を変えていく空間として設計しました。
検討にあたっては、ミサワホームが提唱する10段階のライフステージを参考にしながら、Aimaの使われ方を大きく3つの段階に分けて整理しました。具体的には、子どもが0〜12歳の時期、13歳から成人し両親が定年を迎えるまでの時期、そして両親が定年を迎えた後の時期です。
一つの空間を固定的に使うのではなく、家族の関係性や生活スタイルに合わせて使い方を変えていける点が、Aimaの特徴です。
子どもがまだ小さい時期のAimaは、安全に遊びながら自然に学べる「遊びと学びの実験室」として位置づけました。
床にはジョイントマットを敷き、子どもが安心して遊べるスペースを確保します。また、親がリビングやキッチンから子どもの様子を見守れるようにすることで、子どもの自立した遊びと親の安心感を両立させました。
さらに、黒板ボードやローテーブルを組み合わせることで、絵を描く、文字を書く、工作をするなど、「遊び」と「学び」が自然につながる環境を目指しました。低めの収納を設けることで、子ども自身が片づける習慣を身につけやすくなることも意識しています。
吹き抜けによる半オープンな構造により、家族の気配を感じながらも、子どもが自分の世界に集中できる空間としました。
子どもが成長し、中学生から高校生、大学生、社会人へとライフステージが変化していく時期には、Aimaを家族それぞれが好きなことに没頭できる「パーソナルラボ」として捉えました。
この時期は、受験勉強、リモート講義、在宅勤務、趣味の制作など、家族一人一人が集中したい時間を持つようになります。そこでAimaでは、完全な個室にこもるのではなく、家族の気配を感じながらも自分の作業に向き合える距離感を大切にしました。
たとえば、イーゼルに向かって絵を描く人の隣で、受験生が参考書を開いて勉強に没頭する。Aimaは、それぞれが別々のことをしながらも、同じ住まいの中でゆるやかにつながっていられる空間です。
集中とくつろぎを自然に切り替えながら、家族それぞれの時間を尊重できる環境を目指しました。
子どもが自立し、両親が定年を迎える時期には、Aimaをゆったりと過ごせる「第二のリビング」として再解釈しました。
畳ラグや座卓、低座ソファを取り入れることで、読書やお茶、趣味の時間を落ち着いて楽しめる和みの空間へと変化させます。書棚には蔵書や思い出の品を並べ、家族の時間の積み重なりを感じられる場所としました。
また、孫が遊びに来たときには一緒に過ごす団らんの場にもなります。リビングほど開かれすぎず、個室ほど閉じすぎないAimaは、静けさを保ちながらも、吹き抜けを通して家族の気配を感じられる空間です。
家族のライフステージが変わっても、Aimaはその時々の暮らしに寄り添いながら、家族の「あいま」を支える場所であり続けます。
Aimaは、遊び、作業、くつろぎなどを受け止める中間的なスペースです。この空間が住まいの中に加わることで、Aimaそのものだけでなく、リビング・ダイニングのような共有空間や、個室のようなプライベート空間の役割も整理されていくと考えました。
これまで一つの空間に混在していた「集中する」「休む」「家族と話す」「一人になる」といった行為を、Aimaがゆるやかに引き受けることで、住まい全体の使い方がより心地よく変化していきます。
Aimaがあることで、個室はより休息に特化した空間へと近づいていきます。
たとえば、読書やスマートフォンの利用、軽い作業、趣味の時間などをAimaで過ごせるようになると、個室にこもる時間は自然と減っていきます。その結果、個室は「何でもする場所」ではなく、主に眠るための空間として役割が整理されます。
個室を休むための場所として整えることは、睡眠の質や日々の心身のコンディションにも関わります。Aimaは、家族との距離感を調整するだけでなく、一人一人のwell-beingにもつながる空間として提案しました。
Aimaがない場合、リビングやダイニングでは、勉強、仕事、遊び、休憩など、さまざまな行為が同時に行われます。そのため、会話に参加したい人と、今は集中したい人、少し一人でいたい人が同じ共有空間にいる状況が生まれやすくなります。
Aimaがあることで、集中したい人や一人の時間を持ちたい人にも、共有空間とは別の居場所が生まれます。その結果、リビングやダイニングは、家族が自然に集まり、会話や食事を楽しむための場として役割がより明確になります。
Aimaは、家族を共有空間から切り離すための場所ではなく、それぞれが心地よい状態で共有空間に戻ってこられるようにするための場所です。
その意味で、Aimaは家族のコミュニケーションを減らすのではなく、より自然で無理のないものに整える役割を持っています。
Aimaのコンセプトを考えるにあたり、まずはミサワホームの住まいづくりに対する考え方や、既存のソリューションについて理解を深めるところから始めました。
授業内での展示場見学や企業説明、Webサイトの分析、時代ごとの住宅の間取りの変化に関する調査を通して、現代の住まいには「家族とつながること」と「一人の時間を持つこと」の両立が求められているのではないかと考えました。
その気づきから、個室と共有空間の間にある中間的な居場所として、Aimaのコンセプトを立案しました。
授業内リサーチの一環として、ミサワホームの住宅展示場を訪れました。展示場では、担当者の方から住まいのデザインや各種ソリューションについて直接ご説明をいただきました。
特に印象に残ったのは、住宅を単なる「ハウス」という物質的な空間としてではなく、「ホーム」という精神面も含めた生活空間として考える姿勢です。
住まいは、部屋や設備を組み合わせた箱ではなく、家族の関係性や安心感、心の拠り所をつくる場でもある。その考え方が、Aimaのコンセプトを考えるうえで大きな手がかりになりました。
次に、ハウスメーカー各社のWebサイトを対象に、頻出語分析と共起ネットワークを用いたテキスト分析を行いました。
その結果、ミサワホームは他社と比べて「心の拠り所」という概念を前面に打ち出しており、生活者の感情や暮らしの価値を重視していることが見えてきました。
この分析を通して、ミサワホームらしさを活かした提案を考えるには、単に便利な機能を追加するのではなく、家族の関係性や居心地のよさに踏み込む必要があると考えました。
展示場見学や資料調査をもとに、ミサワホームの特徴的なソリューションを整理しました。
「蔵のある家」は、中間階に天井高1.4m以下の大容量収納空間を設けることで、床面積を増やさずに収納量を拡張できる住まいです。同時に、高天井のリビングを実現できる点も特徴です。
また、「蔵」によって生まれる床レベルの違いを活かした「フロアステップ」は、空間をゆるやかに分けながら、多様な居場所をつくることができます。上下階で視線や気配がつながるため、完全に分断されることなく、家族の存在を感じられる点に可能性を感じました。
さらに、「ホームコモンズ」は、家の中心に共用の学び場を配置し、子どもの成長や家族の暮らしに合わせて使い方を変えていく考え方です。加えて、ミサワホームが提唱する「10段階のライフステージ」からは、住まいを一時点のものではなく、家族の人生に長く寄り添うものとして捉える視点を学びました。
これらを整理する中で、Aimaでは「収納」「段差」「学び」「ライフステージ」という要素を組み合わせ、家族の距離感を調整する新しい空間を提案できるのではないかと考えました。
Aimaの必要性を考えるために、住宅の間取りが時代とともにどのように変化してきたのかも調査しました。
昭和の住まいでは、台所や居間などの機能が分かれ、それぞれの部屋が独立している傾向がありました。家族は茶の間に集まり、団らんを楽しむ一方で、子ども部屋はプライバシーを重視した独立した空間として扱われていました。
平成になると、LDK形式が普及し、家族全員が同じ空間を共有する暮らしが一般的になりました。リビングに集まりやすくなった一方で、スマートフォンや個人用デバイスの普及により、自室で過ごす個人の時間も増えていきました。
令和では、リモートワークやオンライン学習の普及により、住まいの中に小型のワークスペースや可動間仕切りを使った小部屋が求められるようになっています。自宅で過ごす時間が長くなり、家族それぞれが同じ家にいながらも、デバイスを通して外部とつながる生活が広がっています。
この変化から、現代の住まいでは「家族で集まる空間」と「一人でこもる空間」だけではなく、その中間にある居場所が必要なのではないかと考えました。
調査を通して見えてきた現代の「ホーム」の課題は、個室化によって家族の帰属意識や関係性が弱まりやすくなることです。
もちろん、個室そのものが悪いわけではありません。一人で集中する時間や、安心して休める場所は必要です。しかし、勉強、仕事、趣味、休息、デジタルコミュニケーションなど、生活の多くが個室の中で完結してしまうと、家族の気配を感じる機会や、自然な会話が生まれるきっかけは減っていきます。
家族は、日常の中で最も近くにいる存在であり、困ったときに支え合える大切な関係性です。そのつながりが弱まると、同じ家に暮らしていても孤独を感じやすくなり、安心感や幸福感の低下につながる可能性があります。
だからこそ、個室のように一人で過ごせる場所と、共有空間のように家族と関われる場所の間に、ゆるやかに家族の存在を感じられる中間的な空間が必要だと考えました。
Aimaは、各自がやりたいことに集中しながらも、家族の存在をゆるやかに感じられる空間です。完全に一人になるのではなく、かといって常に誰かと一緒にいるわけでもない。家族との程よい距離感を保ちながら、自分の時間を過ごせる場所を目指しました。
この「あいま」を形にする方法として、ミサワホームの「蔵」によって生まれる上部空間と、「フロアステップ」の考え方を応用しました。蔵の上部空間を、収納の副産物としてではなく、家族の気配を感じながら過ごせる中間的な居場所として活用することで、ミサワホームらしい新しい住空間を提案できると考えました。
本プロジェクトでは、調査やアイデア立案はメンバー4人全員で行いました。その中で私は、チーム全体の進行を支える役割を担いました。
明確なリーダーとして役職があったわけではありませんが、メンバーそれぞれの得意分野や性格、他の課題との兼ね合いを見ながら、ミーティングの日程調整や議論の整理を行いました。話し合いの中では、出てきた意見をまとめたり、次に考えるべきことを確認したりしながら、プロジェクトが前に進むように意識して動いていました。
また、最終的な提案を伝えるためのCGビジュアル制作も担当しました。Blenderを用いて空間のベースとなるCGを制作し、ChatGPTで生成した人物のシルエットをPhotoshopでコラージュすることで、Aimaでの過ごし方が伝わるビジュアルに仕上げました。
家具などの一部アセットにはBlenderKitのフリー素材を活用しつつ、空間の見え方や雰囲気が伝わるように、ライティングや構図、コンポジティングも調整しました。単に完成イメージを見せるだけでなく、Aimaが家族の暮らしの中でどのように使われるのかを想像しやすくすることを意識して制作しました。
本プロジェクトは授業内の課題ではありましたが、企業の持つソリューションや思想を理解し、それをもとに新しい提案を行うという点で、インターンに近い実践的な経験になりました。
ミサワホームの住宅展示場見学や資料調査、説明会を通して、同社の住まいづくりに対する考え方を学びました。さらに、ハウスメーカー各社のWebサイトを対象としたテキスト分析や、時代ごとの間取りの変化に関する調査を行い、ミサワホーム単体の理解にとどまらず、住宅や暮らしを取り巻く大きな文脈から問題提起を行うことを意識しました。
その結果、個室と共有空間の「あいま」に位置する新しい居場所として、Aimaのコンセプトを立案しました。単に新しい部屋を提案するのではなく、スマートフォンが普及し、パーソナル化が進む現代においての家族の距離感や帰属意識、暮らしの中での安心感に着目しながら、ミサワホームの「蔵」やフロアステップの特徴をどのように活かせるかを考えました。
最終発表会では、ミサワホームの方から「ミサワの社員になった気持ちくらい、蔵の空間の独自性をどう活かすかが伝わってきてよかった」という趣旨のお言葉をいただきました。企業の方に実際に提案を見ていただき、フィードバックをいただけたことは、自分たちのスキルやデザインの考え方が、企業の視点から見てどこまで伝わるのかを知る貴重な機会になりました。同時に、提案の背景をより深く言語化することや、社会的な文脈まで踏まえて伝えることの重要性も実感しました。
また、授業終了後も大学院試験に向けてメンバーで自主的に集まり、コンセプトや表現のブラッシュアップを続けました。長期的に一つの提案に向き合い続けたことで、最終的なアウトプットには大きな達成感がありました。
特に学びになったのは、問題意識を丁寧に言語化することの重要性です。当初は「個室化」や「パーソナル化」をなんとなく問題として捉えていましたが、最終発表会では、その理由を十分に説明しきれていませんでした。個室そのものが悪いのではなく、生活の多くが個室の中で完結してしまうことで、家族の気配や自然な会話が生まれる機会が減り、つながりや安心感が弱まってしまう可能性がある。そのように、課題の背景をより深く掘り下げて伝える必要があったと感じています。
また、ミサワホームの方からは、家を閉じた空間として考えるのではなく、家庭の中により社会的な関係性を生み出す視点についてもご意見をいただきました。この視点は、ブラッシュアップ後の提案の中でも十分に整理しきれなかった部分であり、住まいを考えるうえでの新たな課題として印象に残っています。
このプロジェクトを通して、住宅をデザインすることは、単に空間をつくることではなく、そこで暮らす人の関係性や時間の過ごし方を考えることなのだと学びました。ライフスタイルそのものをデザインすることの難しさと奥深さを実感した経験でした。
Aimaの制作メンバーである白石快さんのポートフォリオサイトです。
白石さんは本プロジェクトにおいて、コンセプト立案、テキスト分析、共起ネットワークの作成を担当しました。Aimaをはじめ、これまでの制作活動や作品についても紹介されています。