光の塔でのプロジェクションマッピング
目次
荘厳でスピリチュアルな空間にスカイランタンを舞わせる
インタラクティブなプロジェクションマッピング
制作のプロセス
光の塔の分析
プロトタイピング
リハーサル
制作経緯と私の担当領域
学びと振り返り
引用・参考・外部リンク
学部3年次、私は学生視覚効果研究チーム「Red Skill Lab.」の一員として、東京都立大学のランドマークである「光の塔」内部でプロジェクションマッピングを行うプロジェクトに参加しました。
本プロジェクトは、東京都立大学 企画広報課からの依頼を受け、2025年2月22日に開催された「光の塔 感謝の日」の一環として実施されたものです。当日は多くの方にご来場いただき、光の塔ならではの空間を活かした幻想的な映像体験を届けることができました。都立大の大橋隆哉学長にもご覧いただき、激励のお言葉をいただきました。
私にとって本プロジェクトは、授業課題を中心に制作してきた中で、初めて正式な依頼を受けて取り組んだ実践的な制作経験でした。多くの来場者に体験していただく中で、技術的に実装するだけでなく、仕組みや体験の意図が伝わるように設計することの重要性を学びました。
本記事では、このプロジェクトのコンセプトや制作プロセス、実際に取り組む中で得た学びについて詳しく紹介します。
荘厳でスピリチュアルな空間にスカイランタンを舞わせる
私たちが本プロジェクションマッピングのコンセプトに設定したのは、「スカイランタン」でした。
光の塔は、東京都立大学のランドマークです。東京都立大学の紹介ページでは、光の塔は「人間も自然の一部であることを自覚するための空間」として建てられたものだと説明されています。また、訪れた人が「宇宙、自然、時間といった絶対的な概念に想いを馳せる」場所であるとも紹介されています。
そのような荘厳でスピリチュアルな空間にふさわしい表現として、私たちはスカイランタンに着目しました。スカイランタンには、願いや想いを光に託して空へ放つようなイメージがあります。光の塔の内部に、やわらかな光がゆっくりと舞い上がる情景を重ねることで、塔が持っている神秘性をより印象的に体験してもらうことを目指しました。
インタラクティブなプロジェクションマッピング
本プロジェクションマッピングでは、鑑賞者が映像体験に参加できるインタラクティブな仕組みを取り入れました。
塔の中央に設置した5つのセンサーに手をかざすと、投影されるランタンの明るさや動きが変化します。一方的に映像を鑑賞するのではなく、光の塔という空間に鑑賞者自身が関わっているように感じられる体験を目指しました。
制作のプロセス
光の塔の分析
制作の最初のステップは、光の塔という空間を知ることでした。
普段は何気なく通り過ぎてしまう場所でしたが、改めて中に入り、塔を見上げ、光の入り方や音の響き方を感じることで、その荘厳さや神聖な雰囲気を肌で感じました。
そこから、メンバーで「この空間にどのような体験がふさわしいか」を話し合いました。光の塔が持つスピリチュアルな印象を活かす表現として、最終的に「スカイランタン」というコンセプトにたどり着きました。
プロトタイピング
テーマ決定後は、まず簡単なイラストを作成し、メンバー間で完成イメージを共有しました。当初は、塔の中央に置いたスカイランタンの模型を持ち上げると、プロジェクション上のランタンも上へ舞い上がっていく、というインタラクションを構想していました。
最終的に、制作期間や作業量の都合から模型を用いた演出は見送りました。その代わりに、手をかざす動作によってランタンの明るさや動きが変化する仕組みへと調整し、実現可能な形でインタラクティブ性を取り入れました。
簡単なイラストでイメージを共有した後は、使用ソフトであったArduino、Blender、Unity、Resolume Arenaのそれぞれのパートをメンバーで手分けして制作しました。またプロジェクターの選定や手配なども同時に進めていきました。
プロトタイプ制作で、私はArduinoとUnityの通信部分、そしてUnity上でのランタンの動きの実装を担当しました。センサーに手をかざしたときの入力をArduinoで取得し、その情報をUnityへ送ることで、映像内のランタンの明るさや動きが変化する仕組みをつくりました。また、ランタンの動きについては、単に上へ移動させるだけではなく、空間内で複数のランタンが互いに一定の距離を保ちながら浮遊するように制御しました。これにより、スカイランタンがゆっくりと漂っているような、自然で幻想的な動きを目指しました。
リハーサル
本番の約2週間前から、レンタルしたプロジェクターを用いてリハーサルを繰り返し行いました。映像の投影位置や見え方を調整するだけでなく、プロジェクターの配置、電源設備、来場者の動線なども事前に確認しました。実際の会場で検証を重ねることで、本番当日に安定した映像体験を届けられるよう準備を進めました。
制作経緯と私の担当領域
本プロジェクトは、東京都立大学 企画広報課からの依頼を受け、学生視覚効果研究チーム「Red Skill Lab.」として実施したものです。プロジェクターのレンタル費用や機材準備などに充てるため、80万円の予算が支給され、学生主体の活動としては比較的大規模なプロジェクトとなりました。
制作は、学部4年生2人、学部3年生3人、学部1年生1人の計6人で進めました。私はその中で、作品全体の方向性となる「スカイランタン」というコンセプトの立案に関わり、技術面ではArduinoとUnityのシリアル通信、センサー入力に応じた映像変化、Unity上でのランタンのモーション実装を担当しました。
また、複数人でUnityプロジェクトを進めるために、GitHubを用いた共同編集環境のセットアップも行いました。映像表現だけでなく、センサー入力、リアルタイム制御、チーム開発の環境づくりまで幅広く関わったプロジェクトでした。
学びと振り返り
本プロジェクトは、それまで授業課題を中心に制作を行ってきた私にとって、初めて正式な依頼を受けて取り組んだ実践的なプロジェクトでした。
限られた期間の中でチーム制作を進め、本番当日には運営にも関わりながら、実際に来場者の方々とコミュニケーションを取る機会がありました。自分たちがつくったものを多くの人に体験してもらえたことは、大学3年間の学びの集大成のように感じられる大きな経験でした。
一方で、反省点として、インタラクティブな機能が来場者の方に十分に伝わりきらなかったことが挙げられます。センサーに手をかざすことでランタンの明るさや動きが変化する仕組みを実装していましたが、センサーの反応が不安定な場面や、映像上の変化がわかりにくい場面がありました。また、予想を大きく上回る人数の方に来場いただいたため、一人ひとりに仕組みを丁寧に説明する時間を取ることも難しい状況でした。
実際にはUnityを用いてリアルタイムレンダリングを行っていましたが、「この映像は事前に準備していたものですよね?」と質問を受けることもありました。大規模な映像体験にインタラクティブな要素が組み込まれていること自体が、来場者の方にとっては想像しづらかったのだと思います。
普段からインタラクティブな体験に触れている自分にとって、それに慣れていない人がどのように受け取るのかまで考える必要があったというのは、大きな気づきでした。今後は、技術的な実装だけでなく、体験の伝わり方まで含めて設計できるようになりたいと感じました。
引用・参考・外部リンク
- 東京都立大学「学舎に佇む荘厳な建物、光の塔」
https://www.tmu.ac.jp/campus_guide/hikarinotoh.html
- 学生視覚効果研究チーム Red Skill Lab.