目次
6月末から、企業や自治体のSNSについて、分析記事を12本書いてきた。
アカウントの分け方。
人気投稿のまね方。
社長が出すぎる動画の直し方。
公開情報を見て、数字を拾い、改善案まで考えた。
ここまで書けば、企業からの相談で受信箱が埋まってもよさそうなものだ。
残念ながら、受信箱は静かである。
記事を読めば必ず伸びる、とも言えない。
表彰状を用意するのは、まだ早い。
念のために言うと、今の私は特定の企業アカウントを継続運用しているわけではない。
分析を12本書いたからといって、急に「SNSの仙人」に昇格したわけでもない。
では、分析には意味がないのか。
そうではない。
ただ、改善案は実行するまでは「正解」ではない。
根拠のある仮説だ。
アカウントは増やせる。担当者は生えてこない
飲食店の「1店舗1アカウント」を考えた記事では、アカウントの分け方より、その後の体制が問題だった。
新しいアカウントは数分で作れる。
しかし、撮影する人、編集する人、数字を見る人までは増えない。
アカウントは四つ。
看板も四つ。
厨房は一つのままだ。
Instagramには、担当者まで自動生成してくれる機能はない。
SNSの改善には、少なくとも四つの層がある。
基本の整備。
運用体制。
自社条件との適合。
実行後の検証と修正。
テンプレートや一般論が最も効くのは、基本の整備だ。
後半になるほど、その会社で実際に試さなければ分からない。

図1:SNS改善を「基本」「運用体制」「自社条件との適合」「検証と改善」の4層で整理(筆者作成)
方法はまねられる。現場の条件まではまねられない
人気の飲食アカウントを比較した記事でも、同じことが起きた。
構図、テロップ、動画のテンポ。
使える部分は参考にできる。
ただし、相手には相手の読者、商圏、人員、予算、素材、承認の速さがある。
その条件までは、コピー&ペーストできない。
相手には、業務用の寸胴と火力がある。
こちらは、まだコンロの着火ボタンを探しているかもしれない。
まねられるのは、投稿の形だ。
その投稿を毎週つくれる仕組みまで、ついてくるわけではない。
社長の顔は同じでも、視聴者の疑問は違う
以前、ある企業の直近14本の動画を調べた。
金・プラチナ相場を扱った9本は、平均再生数が400回台。
ダイヤモンドの知識を扱った5本は、平均100回未満だった。
同じ社長。
似た撮り方。
それでも結果は違った。
もちろん、14本だけで因果関係までは判断できない。
ただ、少なくとも「社長の顔だけ」が結果を決めているとは言えない。
もし顔だけで再生数が決まるなら、社長の証明写真1枚で企業SNSを運用できる。
さすがに、そこまで便利ではない。
相場情報には、「今日は売り時か」という切迫した疑問がある。
ダイヤモンドの知識には、別の入口が必要かもしれない。
だから、「社長を減らす」と決め打ちするのも早い。
テーマ、冒頭、見せ方を変える。
そして、小さく試す。
そこで初めて、改善案が結果につながるかどうかが分かる。
プラットフォームも占ってくれない
YouTubeには、タイトルとサムネイルを最大3案まで比較できるA/Bテスト機能がある。
結果は総再生時間で判断される。
明確な勝者が出ないこともある。
つまり、YouTube自身も「これが正解」とは言ってくれない。
渡してくれるのは、答えではない。
試すための機能だ。
再生数が下がっても、管理画面が会議室に入ってくることはない。
「原因は冒頭3秒です」
と、自白もしてくれない。
数字を見る。
仮説を立てる。
次の投稿で確かめる。
ここから先が、運用になる。
AIは案を出せる。運用は勝手に回らない
AIは、よくある問題を整理できる。
投稿案も、改善案も出せる。
便利だ。
私も使う。
ただし、同じ質問をすれば、ほかの人も似た答えを得られる。
一般的な問題を片づけたあとに残るのは、自社固有の面倒だ。
どんな素材なら集められるのか。
誰が承認するのか。
週に何本なら続けられるのか。
実際に投稿したら、数字はどう動いたのか。
AIが「週3回投稿しましょう」と提案しても、金曜17時58分に現場の素材を回収してはくれない。
分析は「こうしたほうがよい」で終えられる。
運用は、その次の月曜日から始まる。

図2:公開分析・AI提案→仮説→小さく実行→データ確認→残す・変える・やめる→次の仮説へ(筆者作成)
この12本で示したいのは、私が「正解を知っている」ということではない。
公開情報から問題を見つける。
データから仮説を絞る。
実行できる単位に落とす。
結果を見て、次を変える。
この流れをつくることのほうが重要だ。
本当の運用力は、いつも正解を当てることではない。
外れたときに、データと口論しないことだ。
さっさと次の一手を変える。
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