最初、飯田市公式YouTubeの再生数が伸びない理由は、動画の作り方にあるのではないかと思っていた。
しかし、実際にShortsをいくつか見て、その考えを改めた。
現在中国にいる私は、飯田市の情報を「地域の外にいる視聴者」の立場から見ている。
字幕、映像、音楽、カットのテンポは決して雑ではない。縦型画面に合わせて情報を整理し、インタビューを短くまとめ、図やテロップも加えている。一本の動画を公開するまでに、撮影だけでなく、関係部署との調整や内容確認にも時間をかけているはずだ。
それでも、多くの動画は数百回から千回程度の再生にとどまっている。

同じアカウントの中でも、結果には明確な差がある。
「飯田焼肉給食」は約338回。「エシカル宣言」シリーズの多くは、数百回から千回台だった。
一方、「リニア駅はどこにできるの?」は1.2万回を超え、「イイダのイイネ!スペシャルムービー」は約1.4万回。「リニア発生土をどうやって運ぶの?」も4000回以上再生されている。
もちろん、公開されている数字だけで原因を断定することはできない。広告配信の有無、公開時期、視聴維持率、流入経路など、外部からは見えない条件があるからだ。
それでも、一つの仮説は立てられる。
このアカウントには、動画を作る力がないのではない。視聴者が一瞬で「これは自分に関係がある」と判断できるテーマと、そうでないテーマが混在しているのではないか。
「リニア駅はどこにできるの?」は、非常に具体的な疑問だ。交通、生活、地域の将来に関係するため、飯田市民でなくても内容を理解できる。
一方、「エシカル宣言」は行政側が伝えたい重要なテーマではあるが、視聴者はまず行政用語を理解し、その後で「自分とどんな関係があるのか」を考えなければならない。
前者は、視聴者の疑問から始まっている。
後者は、発信者の業務から始まっている。
自治体SNSで起きやすい「努力しているのに届かない」という問題は、制作担当者の能力不足が原因ではないのかもしれない。
動画制作を始めるのが早すぎて、需要を確認するタイミングが遅すぎるのだ。
テーマは「見てもらえるか」を決め、制作は「見続けてもらえるか」を決める。飯田市は、後半の制作力をすでに持っている。改善の余地があるとすれば、その前のテーマ選定だと思う。
では、何を根拠に「正しい方向」を選べばよいのか。
その手がかりは、すでに外部に存在している。
飯田市を一人で旅行した民間YouTuberの動画は、私が確認した時点で6.7万回再生され、95件のコメントが付いていた。
コメントには、宿泊先や夕食、温泉、鉄道、徒歩ルート、季節のイベントなど、次に知りたい具体的な情報が書き込まれていた。
これは単なる感想欄ではない。無料で行われたユーザーインタビューであり、次の企画会議でもある。
私なら、テーマを本格的に制作する前に、次の5項目を確認する。
- 検索、コメント、問い合わせの中に、すでに需要があるか
- 誰のための動画かを、一文で説明できるか
- 「どう行く」「どこに泊まる」「いくらかかる」など、具体的な不安を一つ減らせるか
- 他の地域ではなく、飯田市だから成立する内容か
- 視聴後に、保存、訪問、相談、応募などの次の行動につながるか
各項目を0〜2点で評価する。7点以上は正式制作、4〜6点は低コストのShortsでテストし、3点以下は切り口を作り直す。テストでは、再生数だけでなく、視聴維持率、コメント、共有なども同じ期間で比較する。

すべての行政動画が、高い再生数を目指す必要はない。
記者会見、政策記録、市民向けのお知らせには、情報を保存し、必要な人に届ける役割がある。再生数が少ないからといって、失敗とは限らない。
しかし、外部からの関心を集める目的でShortsを作るなら、管理すべきなのは編集スケジュールだけではない。
撮影を始める前に、「誰が、なぜ、この動画を見るのか」を検証する必要がある。
飯田市には、すでに丁寧に動画を作る力がある。
次に必要なのは、さらに予算を増やすことでも、担当者にもっと努力を求めることでもない。
制作に入る前に、少し答えにくい質問をする人だ。
「この動画は、いったい誰が見ずにはいられないのか」
もし私がこのSNS運用に関わるなら、需要の証拠を探し、対象となる視聴者を定義し、テーマを組み直す役割を担いたい。
チームがすでに持っている制作力を、結果につながる方向へ向けるために。
地方SNSに必要なのは、ただ力を増やすことではない。
検証された方向へ、正しく力を使うことだ。
こうしたSNS運用やコンテンツ企画、外国人向け・中国向け発信に関するご相談があれば、メッセージからご連絡ください。