行政コンテンツのYouTubeは、なぜ最後まで見てもらえないのか
美郷町YouTubeチャンネルの一覧。定例記者会見、PR動画、CMなどが並んでいる画面
美郷町のYouTubeチャンネルを見たとき、サムネイルを一通り見て、どれもクリックする理由が浮かびませんでした。正直に言うと、「最後まで見る理由が設計されていない」と感じました。
ただし、それは“良い意味での努力不足”ではなく、“設計の問題”でした。
むしろ、きちんと発信しようとしている印象を受けました。
町長の定例記者会見、ふるさと納税の案内、PR動画、短いCM動画。動画の本数もあり、サムネイルも一定の統一感があります。
ただ、外部の人間として見ると、ひとつ大きな問題を感じました。
それは、動画が「外の人に見てもらう入口」ではなく、「行政情報の公開アーカイブ」に見えてしまうことです。
たとえば「令和8年6月 美郷町長定例記者会見」という動画があります。
しかし、このタイトルを見て「クリックする理由」を説明できる外部の人はほとんどいません。
もちろん、定例記者会見を公開すること自体には意味があります。行政の透明性、町内向けの情報共有、記録としての価値もあります。
しかし、もし視聴者が町外の人、移住を考えている人、地域おこし協力隊に関心がある人、あるいは偶然YouTubeで見かけた人だった場合、このタイトルだけで「見てみよう」と思う人はかなり限られるはずです。
問題は「中身」ではなく、「外部視点での再編集プロセスが設計されていないこと」です。
たとえば、記者会見の中には「ひなたフェス出店による関係人口創出事業」という内容があります。
ここには、かなり強い素材があります。
日向坂46のファン。
ひなたフェス。
美郷町の特産品。
観光PR。
ふるさと納税。
関係人口。
900千円の事業予算。
これらは、本来なら外部向けコンテンツとして十分に使える要素です。
しかし、それが「定例記者会見」という行政分類の中に入ってしまうと、外の人には価値が見えにくくなります。
問題は素材不足ではなく、「編集」と「言語設計」にある。
一方で、同じ美郷町でも、SMOUTの募集ページを見ると印象が少し変わります。
同じ美郷町でも、YouTubeでは「行政の記録」として整理され、SMOUTでは「人材獲得のための言語」に翻訳されている。
「まちづくりマネージャー」「ローカルベンチャーに挑みたい人へ」
こうした表現は、少なくとも「誰に向けたページなのか」が見えます。人物写真もあり、活動内容もあり、地域で何をするのかというイメージも持ちやすい。
つまり、美郷町にストーリーがないわけではありません。外部に向けて語れる材料もあります。
ただ、YouTube側では、その材料がまだ「見る理由」に変換されていないように見えます。
タイトルは情報ではなく、「クリック理由の設計」である。
もし私が改善するなら、まずタイトルを変えます。
たとえば、元のタイトルはこうです。
「令和8年6月 美郷町長定例記者会見」
これは行政分類としては正確です。でも、外部の人にとってはクリックする理由が弱い。
同じ内容でも、切り口を変えるだけで印象は変わります。
たとえば、
「なぜ美郷町はひなたフェスに出店するのか?」「日向坂46ファンと美郷町をつなぐ900千円の実験」
このように変えると、少なくとも視聴者は、「何の話なのか」「なぜ見る意味があるのか」を先に理解できます。
もちろん、元の記者会見動画を消す必要はありません。行政記録としての完整版は残すべきです。
ただし、それだけで終わらせるのはもったいない。
理想は、ひとつの行政情報を複数の形に再編集することです。
まず、完整版の記者会見は公開アーカイブとして残す。次に、外部向けに3分の解説動画を作る。さらに、SNS向けに30秒のショート動画にする。
そして、動画を見た人が次に動けるようにする。
移住に関心がある人には、移住相談へ。特産品に関心がある人には、商品ページへ。ふるさと納税に関心がある人には、寄附ページへ。地域で働くことに関心がある人には、SMOUTや地域おこし協力隊のページへ。
動画は、公開しただけでは「発信」で終わります。
でも、見た人の次の行動まで設計できれば、それは「運用」になります。
地方には、すでに多くの素材があります。
人がいる。事業がある。予算がある。地域の魅力がある。外部とつながるきっかけもある。
しかし、それらが行政資料のまま出てしまうと、外部の人には届きにくい。
人口減少時代の地方に必要なのは、ただ情報を公開することではありません。
行政の言葉を、外部の人が理解できる言葉に変えること。記録を、入口に変えること。発信を、次の行動につなげること。
小さな設計の差が、「見られない動画」と「行動につながる動画」の差になる。問題は「内容」ではなく、「外部視点に翻訳されているかどうか」である。
そしてこの問題は、美郷町に限らず、多くの自治体コンテンツに共通している。