工藤正一館長 タイ修行時代|ムエタイ本場バンコク・スクンビット生活とファイトマネーのリアル
工藤正一館長 ムエタイ修行でタイへ
若い頃、俺はムエタイを学ぶためにタイへ渡った。日本で練習しているだけじゃ物足りない。本場でやりたい。強い選手と戦いたい。そんな気持ちだけでタイに行ったんだ。
最初は金なんてほとんどない。だから生活はムエタイジムに寝泊まり。朝はまだ暗いうちから走り込みだ。バンコクの蒸し暑い空気の中をひたすら走る。戻ったらすぐにミット打ち、サンドバッグ、首相撲。昼は飯を食ってそのまま倒れるように寝る。そして夕方になるとまた練習。
とにかく一日中ムエタイ漬け。
これが俺の若い頃のタイ生活だった。
ムエタイジムに寝泊まりした毎日
ジムの生活はシンプルだ。練習、飯、寝る。それだけ。でも、それが一番強くなる近道でもある。
週に1回か2回は試合がある。タイでは試合の数がとにかく多い。だから経験もどんどん積める。仲間が試合に出るときは、みんなで応援に行く。勝てばジム全体で盛り上がるし、負けてもまた練習すればいい。
そんな毎日を続けていると、少しずつ試合にも出るようになる。そしてある時から、ファイトマネーをもらえるようになった。
金額は大きくない。でも自分の拳で稼いだ金だ。これは格闘家にとって特別なものなんだ。
ファイトマネーでスクンビットのマンション生活
ファイトマネーをもらえるようになってから、生活が少し変わった。ずっとジムに寝泊まりしていた俺が、ついにマンション生活になったんだ。
場所はバンコクのスクンビット。外国人も多いエリアで、当時の俺からしたらかなり都会だった。
ジムの床にマットを敷いて寝ていた生活から、マンションの部屋に住む生活。正直言って、それまでの生活が嘘みたいだった。
タイでマンションを借りるのは、日本みたいに難しくない。建物を見つけたら、とりあえず聞く。
「ここ空いてるか?」
空いていると言われたら次。
「いくら?」
値段を聞いて、条件が合えば決まり。
「よし、ここ住むわ」
本当にこんな感じだ。かなりアバウト。でもタイではそれが普通なんだ。
タイのマンション事情 トイレと水問題
ただし、マンションには当たり外れがある。ここはしっかり見ないといけない。
まずチェックするのはトイレだ。
古いマンションだと、とにかくトイレが臭い。排水の匂いなのか、なんとも言えない強烈な匂いがする。これがあると生活はかなりきつい。
それから水だ。蛇口をひねると、茶色い水が出ることもある。最初に見たときはびっくりした。日本ではまずありえない。
だから俺は必ず確認する。
トイレは臭くないか。
水はちゃんと透明か。
これがクリアできれば、とりあえず合格だ。
水道水は絶対飲まない 海外生活のリアル
そしてもう一つ大事なことがある。
水道水は絶対に飲まない。
これはタイ生活の鉄則だ。飲むとすぐ腹を壊す。格闘家が腹痛で動けなくなったら話にならない。
だから水は必ずミネラルウォーターを買う。コンビニでも屋台でもどこでも売っているから、それを飲む。
逆に言うと、日本は本当にすごい国だと思う。
だって水道水が普通に飲めるだろ?
蛇口をひねって、そのまま飲める。これって世界的に見ても本当にすごいことなんだ。海外で生活すると、日本の水のありがたさがよく分かる。
冷房は完璧 タイのマンションの救い
マンションで一番ありがたかったのは冷房だ。
タイはとにかく暑い。昼間は体力がどんどん削られる。でもマンションのエアコンは意外としっかりしている。
スイッチを入れると、しっかり冷たい風が出る。
練習が終わって汗だくで部屋に戻る。エアコンをガンガンにしてベッドに倒れ込む。
これが最高だった。
シャワーは基本、水しか出ない。でもタイは暑いからむしろ気持ちいいくらいだった。
屋台メシとタイの格闘家生活
マンションによってはレストランがついているところもある。そこで食べることもできる。
でも俺は屋台で食べることが多かった。
タイは屋台文化がすごい。ちょっと歩けばすぐ屋台がある。
焼き鳥みたいな串焼き。
タイラーメン。
チャーハン。
フルーツ。
安いし、早いし、うまい。
プラスチックの椅子に座って、汗を拭きながら食う飯。これがまたうまいんだ。
プール付きマンションへの憧れ
スクンビットにはいろんなマンションがある。中にはプール付きのマンションもある。
練習仲間の中には、そういうマンションに住んでいる奴もいた。
「お前のところプールあるのか?」
「あるよ」
正直、羨ましかった。
練習終わりにプールで泳ぐ。そんな生活もあるんだなと思った。
でも俺が住んでいたマンションにはプールはなかった。それでもジム生活に比べたら十分だった。
部屋があって、エアコンがあって、シャワーがある。それだけでありがたい生活だった。
ムエタイ修行時代のバンコク生活
ファイトマネーで生活するのは簡単じゃない。試合がなければ金は入らない。負ければ評価も下がる。怪我をすれば終わりだ。
それでも当時の俺は、とにかくムエタイが好きだった。
本場タイで戦う。
本場の選手と殴り合う。
自分の拳で金を稼ぐ。
これが格闘家としての人生だった。
スクンビットのマンション生活は長くはなかった。でもあの時間は今でも忘れない。
水シャワー。
冷房の効いた部屋。
屋台の飯。
遠くに見えるプール付きマンション。
どれも派手じゃない。でも全部がリアルなタイ生活だった。
若かったからできた生活だと思う。
今振り返ると、本当に濃い時間だった。
工藤正一
泰式拳闘館 館長
若い頃、ムエタイ修行のためタイへ渡り、本場のムエタイジムで生活。
現在は日本でムエタイ指導を続けている。
ムエタイの技術だけでなく、タイで学んだ精神や経験を伝え続けている。