私が「並行世界」というテーマに辿り着いた理由
目次
①並行世界に興味を持ったきっかけ
② オリジナルの並行世界モデル
1. マクロ層:世界線の分岐・統合・特異点
2. ミクロ層:個人による認識世界と共通基盤
③ 創作の設計思想:構造から物語を逆算する
1. 個別の世界観ではなく、一つの巨大な「構造」を作る
2. 「観測者」というシステムの導入
④ 今やっていること:理論の「客観視」と「柔軟な運用」
1. 「個」を封印した、目的志向の作品制作
2. 理論の「要素分解」と「集約」
⑤ 将来やりたいこと:ただ「面白い」を形にし続けたい
①並行世界に興味を持ったきっかけ
私の創作活動の原点は、中学生の頃に遡ります。
当時、有り余る創作意欲の出口として選んだのが、動画投稿という手段でした。ジャンルは「ゆっくり茶番劇」。満足な機材もない中、まずは世界観の構築やキャラクター設定を練ることからスタートしました。
そんな準備期間中、ある投稿者の作品に出会ったことが、私の視点を大きく変えました。
その作品の最大の特徴は、通常一人であるはずの「主役」が複数存在していること。一見カオスに見えながらも強烈な印象を残すその手法に触れ、「主人公は一人であるべき」という固定観念が崩れた瞬間でした。
そこで私は、以前から温めていたものの形にできず風化しかけていた「インディー作品の設定」たちを、一つの物語に統合できないかと考えました。
「バラバラの物語を、矛盾なく、かつ一つの大きな世界として成立させるにはどうすればいいか?」
試行錯誤の末に辿り着いたのが、「並行世界」という概念を組み込むこと。過去のアイデアを資産として再定義し、新たな価値を生み出す。この柔軟なシステム構築への挑戦こそが、現在の私の創作におけるスタートラインとなりました。
② オリジナルの並行世界モデル
ある作品との出会いをきっかけに、私は並行世界という概念に対し「自分なりの論理的整合性」を求めるようになりました。試行錯誤の末に辿り着いたのが、マクロとミクロの2層構造を持つ理論です。
1. マクロ層:世界線の分岐・統合・特異点
宇宙全体という大きな視点では、世界はフレーム単位で常に「分裂」と「統合」を繰り返していると考えます。
- 分岐:無限の可能性
理論上、世界線は些細な変化で無限に分裂していきます。例えば「6面ダイス」を振る瞬間、世界は6つ以上の可能性(世界線)に分かれます。 - 統合:日常の収束
しかし、日常的な些細な分岐の多くは、一つの結果に収束します。 例えば「1回目に6、2回目に1」が出た世界と、「1回目に4、2回目に3」が出た世界。過程は違えど、合計値はどちらも「7」という結果を導き出します。このように、微細な差異は大きな流れの中で統合されていくと考えます。 - 特異的分岐:修復不可能な乖離
ただし、産業革命のような「社会の前提や認識の変革」を伴う出来事は別です。これらは世界線を修復不可能なほど大きく乖離させ、二度と統合されることのない「別系統の世界」を生み出します。
2. ミクロ層:個人による認識世界と共通基盤
マクロな宇宙構造に対し、こちらは「観測者である人間」の視点から定義した構造です。刑事ドラマの証言の食い違いや、脳細胞と宇宙網の類似性から着想を得ました。
- 認識世界仮説:世界は観測者の数だけ存在する
「人は世界を見たいように見る」という心理的側面を極限まで拡張した考え方です。世界は一意に定まった一つではなく、個人の認識(フィルター)の数だけ独立して存在していると仮定します。 - 「個人世界」を起点とした入れ子構造
この理論の核心は、最小単位である「個人世界」が、同時に最大単位にもなり得るという再帰性にあります。 - 内側への展開: 私の個人世界の中にも、他者の認識が存在し、それぞれの「個人世界」が内包されている。
- 外側への展開: 私たちが「客観的な現実」だと信じているこの世界も、実はさらに大きな存在(誰か)の「個人世界」の一部である可能性がある。
- 現実による収束:整合性の維持
それぞれの個人世界がバラバラに崩壊しないのは、「現実」という強固な共通基盤(プラットフォーム)が存在するからです。個人の認識は自由ですが、この共通基盤によって各世界は常に収束され、互いに整合性を保ちながら重なり合っています
③ 創作の設計思想:構造から物語を逆算する
この並行世界モデルは、後から創作に影響を与えたというよりも、私の創作における
「前提条件(OS)」として存在しています。
もともと複数の作品構想を並行して進めていたため、それらを矛盾なく共存させるための「世界構造」を先に定義する必要がありました。そのため、私の創作プロセスは「物語やキャラクターを考える前に、それらが成立するための世界構造を設計する」という、エンジニアリングに近いアプローチをとっています。
1. 個別の世界観ではなく、一つの巨大な「構造」を作る
作品ごとに独立した世界を作るのではなく、一つの大きな構造の中に複数の物語を配置していく。この手法により、異なる作品同士の関係性が整理され、世界観全体の整合性を極限まで高めることが可能になりました。
2. 「観測者」というシステムの導入
この設計思想を象徴するのが、私の全作品に共通して登場する「観測者」という存在です。 もともとは動画投稿時代のメタ的なキャラクターでしたが、今では「各並行世界の情報を収集する」という、世界を成立させるための不可欠なシステム(舞台装置)として定義しています。 作者である私自身も、この「観測者」が持つ制約や論理を無視することはできません。ある種「設定の奴隷」とも言えるストイックな管理体制を強いることで、巨大なスケールを持ちながらも、細部まで矛盾のない強固な世界観を構築しています。
④ 今やっていること:理論の「客観視」と「柔軟な運用」
現在は、長年培ってきた並行世界理論を「自分のアイデンティティ」として大切にしながらも、それをあえて切り離したり、要素分解して活用したりする柔軟な制作スタイルに挑戦しています。
1. 「個」を封印した、目的志向の作品制作
一つは、就職活動や将来の業務を見据えた、個人の作風をあえて排した作品づくりです。 プロの現場では、個人のこだわりよりも「プロジェクトの目的」や「ユーザーのニーズ」に適合することが求められます。あえて「観測者」や特有の理論を封印し、求められる要件に対して的確に応える、汎用性の高いアウトプット力を磨いています。
2. 理論の「要素分解」と「集約」
一方で、自分の理論をすべて詰め込む「集約」の作業も継続しています。 ただし、単に詰め込むだけでなく、「この作品には並行世界の概念だけを抽出する」「この作品には観測者の視点だけをスポットする」といった具合に、理論をパーツごとに切り出し、作品のニーズに合わせて最適化する訓練も行っています。
⑤ 将来やりたいこと:ただ「面白い」を形にし続けたい
私の創作の最終的なゴールに、名声や承認欲求はありません。極論を言えば、自分の名前が残るかどうかすら、どうでもいい。
ただ、自分が納得する作品を作りたい。そして、その作品を誰かがプレイし、楽しんでいる姿を見たい。
その目的のためであれば、個人で開発環境をゼロから整えることも、誰かのためにアイデアを提供し、一から理論構築を行うことも厭いません。私の中に、アイデアが枯渇するという不安はないからです。
世界観、キャラクター、そして物語を支えるロジック。そのすべてを、自分が「心から面白い」と胸を張って言える体験に全力で注ぎ込む。 理論という武器を携え、情熱の赴くままにモノづくりを続けていくこと。それが、私の唯一にして最大のビジョンです。