領収書の裏に書かれた銀河の設計図について
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こんにちは!崔志遠です。
昨夜、仕事帰りに立ち寄った深夜のコンビニで、店員から手渡された一枚の領収書を眺めていました。そこには、私が買ったはずのコーヒーやサンドイッチの名前ではなく、見たこともない複雑な数式と、銀河の渦のような奇妙な図形がびっしりと書き込まれていました。私はエンジニアとして、あらゆる情報を正しく処理し、整理整頓することに人生を捧げてきましたが、その紙切れ一枚が、私の信じていた論理の壁を静かに突き崩していきました。
私たちは、自分が立っている地面には確かな手触りがあり、空から降ってくる雨には重さがあることを疑いません。しかし、その領収書の裏側を指でなぞってみると、指先から微かな振動が伝わり、頭の中で古い蓄音機が回り出すような音が聞こえてきました。それは、かつてこの場所で誰かが口ずさんだ鼻歌のようでもあり、あるいは、まだ誰も見たことのない未来の都市が崩壊していく時の断末魔のようでもありました。
机の上にその領収書を置くと、驚いたことに、部屋の隅に置いてあった古い観覧車の模型が、音もなくゆっくりと回転を始めました。窓の外では、街灯の光が一つ、また一つと、規則正しいリズムで点滅を繰り返しています。それはまるで、巨大な生き物が深い眠りの中で呼吸をしているかのようで、私は自分が、この精巧に作られた箱庭の一部に過ぎないことを悟りました。
私たちは技術を駆使して、世界をより便利に、より分かりやすく作り替えようとしています。でも、その過程で私たちが捨て去ってきた「意味のないノイズ」の中にこそ、世界の本当の姿が隠されているのかもしれません。蓄音機の針が溝を外れ、静寂が部屋を満たしたとき、私は自分が書いているコードの一行一行が、実は星々の配置を決めるための呪文だったのではないかという、根拠のない確信に囚われました。
観覧車の模型は、いつの間にか加速し、回転の遠心力で小さな光の粒を撒き散らしています。その光の粒が壁にぶつかり、弾けるたびに、私の記憶の一部が少しずつ書き換えられていくのが分かりました。昨日までの私が誰であったか、明日からの私がどこへ向かうのか、そんな些細な情報は、この回転し続ける宇宙の仕組みの前では、何の意味も持ち得ないのです。
夜が明ける頃、机の上には真っ白な領収書だけが残されていました。そこには数式も図形もなく、ただ「ありがとうございました」という定型句だけが、虚しく印刷されていました。私は窓を開け、冷たい朝の空気を吸い込みました。街はいつも通りに動き出し、人々はそれぞれの目的地へと急いでいます。でも、私の耳の奥では、まだあの蓄音機のノイズが微かに響き続けていました。
私たちが「仕事」と呼んでいる営みは、もしかすると、この巨大な装置の歯車が狂わないようにするための、終わりのないメンテナンス作業に過ぎないのかもしれません。私は使い古したカバンを手に取り、部屋を出ました。ドアを閉める直前、鏡の中に映った自分の影が、私よりもほんの一瞬だけ早く、会釈をしたような気がしました。