誰かの物語を編む職人
Photo by Joel Ambass on Unsplash
こんにちは!石田大顕です。
制作会社で七年間ひたすらに手を動かし続けてきた私にとってデザインという仕事はもはや単なる作業を超えた呼吸のようなものになっています。独立してからは自分一人で全ての工程を背負うことになり以前よりもずっと深く制作物の内側に潜り込む日々を過ごしています。多くのクリエイターは個人の感性を追求することに喜びを見出すかもしれませんが私は少し違った視点でこの仕事に向き合っています。
たとえるなら私は仕立て屋に近いのかもしれません。訪ねてくる人の想いを丁寧に解きほぐしその人がまだ気づいていない理想の姿を形にしていく。その作業には常に熱い情熱と冷静な分析が混在しています。華やかな広告やアプリの画面の向こう側には必ず誰かの生活があり誰かの人生が流れています。その流れを少しだけ豊かにするためにどんな色がふさわしくどんな配置が心地よいのかを考え抜く時間は私にとっては何物にも代えがたいものです。
制作会社時代は分業の中で特定のピースを磨く役割が主でした。しかしフリーランスとして全ての工程を統括する今見える景色は随分と変わりました。最初の打ち合わせから最後の納品まで一つの流れとして捉えることでその先にある人々の反応を想像する力が養われたと感じています。何かが完成した瞬間の喜びもさることながらその制作物が社会という大きな海へ漕ぎ出していく様子を見届けるときにはいつも深い感慨を覚えます。
私のデスクには決まった答えが書かれた本はありません。目の前の依頼主が抱える悩みや希望を紐解きながらその都度新しい法則を組み立てていくのです。論理的な裏付けを持ちつつも直感という名の手掛かりを信じる。このバランス感覚を磨き続けることこそが私の武器です。たとえ今の仕事が地味なデータ作成であってもそれが誰かの未来を変える一歩になると信じて手を動かし続けています。
デザインの現場では効率やスピードが重視されがちです。確かにそれらも大事な指標ですが私が大切にしているのはもっと泥臭い対話の積み重ねです。相手が何を求めているのかという問いを何度も自らに投げかけながら形にしていく。その過程で生まれる葛藤や手戻りすらも完成度を高めるためには必要な要素なのだと納得しています。整いすぎたものには血が通わないことがある。だからこそあえて人の手触りを感じさせるような温もりを表現に込めることを意識しています。
これからどんなプロジェクトに出会えるのかいつも胸を高鳴らせています。新しい業種や初めて触れる技術であってもその根底にあるのは変わらず人の想いです。その想いを拾い上げ形を与えていく旅はこれからも終わることはありません。自分が作り出したものが誰かの目にとまりその人の生活の一部として溶け込んでいく。そんな光景を想像しながら今日も私は新しいキャンバスに向き合っています。技術を磨くことはもちろんですが人間としてもっと深く広く世界を捉える視点を養っていきたいと切に願っています。