金型メーカー2社で詰んだ日──「全部できません」と言われた現場で、私が組み直した判断と交渉
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予定通り進む前提は、現場では簡単に裏切られる
製造業PMとして、新しい部品を立ち上げるプロジェクトで
21パーツを新規で金型起こしする案件がありました。
金型メーカーは事前に2社で決定。
顧客も含めてスケジュールを引き、
「この体制なら問題ない」と判断して、
意気揚々と初回の打ち合わせに臨みました。
ところがそこで、想定外の一言が返ってきます。
「すみません。この納期までには、全部はできません」
その場の空気が一気に凍りました。
顧客も、メーカー側も、そしてこちらも、全員が青ざめた瞬間です。
まずやらなかったこと
この時点で、私が最初にやらなかったことがあります。
- 誰が悪いかを詰める
- 無理に納期を押し込む
- その場で感情的に代替案を即断する
どれも一時的には動いた気になりますが、
後で必ず別の歪みを生む判断だと分かっていました。
この段階で重要なのは、
「どう取り戻すか」を決める前に、
何がどこまで崩れたのかを正確に分解することでした。
判断①:21パーツを一括で扱うのをやめる
最初にやったのは、
21パーツを「全部まとめて救おう」とするのをやめることです。
- 納期的に対応可能なもの
- 技術的にリスクが低いもの
- 他社に切り出せるもの
を、その場で切り分けました。
結果として、
一部のパーツは当初の金型メーカーで対応可能。
しかし 9パーツは、どう考えても間に合わない という結論に至ります。
ここで重要だったのは、
「全部を同じ扱いにしない」 という判断でした。
判断②:体制だけでなく「費用前提」も組み替える
次に直面したのは、
納期だけでは終わらない、もう一つの問題です。
それは、
すでに決まっている外注費用をどう扱うか という交渉でした。
依頼先を途中で切り替えるということは、
- 既存メーカーとの費用調整
- 新しいメーカーへの発注条件
- 顧客とのコスト説明
という、別の難しい判断が同時に発生します。
ここで「とにかく間に合わせる」だけで動くと、
コストが崩壊することは目に見えていました。
判断③:切り替え先には「まとめた依頼」で交渉する
そこで取った判断は、
切り替え先の金型メーカーに対し、
- 9パーツを個別発注しない
- まとまったロットとして依頼する
- 納期優先だが、コスト条件も明確に提示する
という形で交渉することでした。
結果として、
- 大幅なコスト悪化は回避
- ただし 約5%程度のコスト増 は発生
という着地になります。
完全に無傷ではありません。
しかし、
納期遅延という致命傷を避け、コストも管理可能な範囲に収めた
という意味では、現実的な判断だったと考えています。
結果:最悪の事態は回避できた
最終的に、
- 一部パーツは当初の金型メーカーで対応
- 9パーツは別メーカーに切り出し
- 納期遅延は回避
- コスト増は最小限に抑制
という形でプロジェクトを着地させることができました。
完璧な計画通りではありません。
調整コストも、交渉の負荷も確実に増えました。
それでも、
「全滅」や「取り返しのつかない遅延」を防げた
という点では、PMとして意味のあるリカバリだったと思っています。
この案件で再確認したこと
炎上しかけた案件で重要なのは、
- 強い言葉で押し切ること
- その場で即断すること
ではありません。
- 前提を疑う
- 問題を分解する
- 納期・品質・コストを同時に見て切り替える
この判断ができるかどうかで、
結果は大きく変わります。
今も変わらないスタンス
炎上している案件でも、関わることは構いません。
ただし、
- 状況整理ができる余地がある
- 判断と交渉を組み直せる余白がある
この条件が前提です。
単なる火消し役としてではなく、
判断と交渉を再設計するPMとして入る。
製造業PMとしての経験は、
いまITやプロダクトの現場でも、
同じ構造で活きていると感じています。
最後に
この話は、
派手な成功談ではありません。
でも、
詰みかけた状況で、
何を見て、何を捨て、
納期・コスト・体制をどう組み替えたか
という意味では、
いまの自分のPMスタンスを最もよく表している実話です。
同じような局面で、
「ここ、どう判断すればいいんだろう」と感じている方がいれば、
カジュアルに話せると嬉しいです。