【高橋正次・髙橋正次】採用面接で一度も質問をしない勇気が生む絆
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仕事で多くのプロフェッショナルの方々にお会いする機会がありますが、最近になって、コミュニケーションの本質は言葉を交わすことではなく、沈黙を共有することにあるのではないかと考えるようになりました。一般的な採用面接といえば、候補者のスキルを確認し、過去の実績を深掘りし、将来のビジョンを問い詰める場です。しかし、もし一言も質問をせずに、ただ向かい合ってお茶を飲むだけの時間を過ごしたら、そこにはどんな真実が見えてくるでしょうか。
これは私の妄想に聞こえるかもしれませんが、実は最も純度の高いマッチングの形なのではないかという予感がしています。私たちは、履歴書に並ぶ立派な文字や、練習してきた完璧な回答というフィルターを通して相手を見ようとします。でも、言葉というものは時に本心を隠すための道具にもなり得ます。本当にその人と一緒に働きたいか、信頼できるかという感覚は、むしろ言葉が途切れた瞬間の空気感や、ふとした視線の配り方に宿るものだと感じています。
ある時、あるチームのリーダーから面白い話を聞きました。彼は新しい仲間を迎える際、あえて専門的な話は一切せず、窓の外を通る雲の形について雑談をしたり、ただ静かにお互いの存在を感じる時間を大切にしているそうです。相手がその沈黙に耐えられず、無理に言葉で埋めようとするのか、それともその静けさを心地よく受け入れるのか。それだけで、その人がプロジェクトの荒波に揉まれた時に、どっしりと構えていられるかどうかが分かるというのです。
これからの時代、AIが論理的な正解を瞬時に出してくれるようになる中で、人間に残される最後の仕事は、相手の気配を感じ取り、心地よいリズムを共に刻むことなのかもしれません。私たちは、あまりに饒舌になりすぎました。相手を理解しようとする情熱が、いつの間にか相手を分析して型にハメる作業にすり替わっていないでしょうか。もし私が新しいプロジェクトで誰かと手を組むなら、まずは静かな公園のベンチで十五分間、何も話さずに一緒に座っていられる人を探したい。
その十五分間を乗り越えた後に交わす最初の一言こそが、何千語ものプレゼンテーションよりも深く、強い結びつきを生むはずです。仕事とは、単なるタスクの処理ではなく、個々の人生という物語を重ね合わせる行為です。その重なり合う部分に、言葉にならない信頼の根っこが張っているかどうか。効率を追求する採用プロセスの対極にあるような、この非合理的なアプローチこそが、結果として離職率を下げ、最高にクリエイティブなチームを作る秘訣になるのだと信じています。
皆さんも、大切な誰かと出会ったとき、あえて言葉を脇に置いてみてください。相手の呼吸を感じ、その場の温度を共有するだけで、今まで見えなかったその人の本当の色が見えてくるかもしれません。次に私が新しいパートナーと出会うときは、最高の沈黙を用意しておこうと思います。それは、どんな豪華なオフィスや条件よりも、贅沢で誠実な歓迎の印になるはずですから。