「使いにくい道具」こそが創造性を刺激する
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こんにちは!栗山和暉です。
最近、あえて切れ味の鈍い鉛筆や、反応が少しだけ遅い古いキーボードを手に取ってみることがあります。私たちは便利さを追求するあまり、指先一つで思い通りに動く道具こそが最高だと信じ切っています。でも、ウェブサイトの設計を突き詰めていると、あまりに滑らかすぎる体験は、時に人の記憶に残らず、思考を停止させてしまうのではないかと危機感を覚えることがあるのです。
例えば、手に馴染みすぎた最新のペンで書く文字は、流れるように滑らかですが、どこか自分の思考を追い越してしまうような感覚があります。一方で、少し引っかかりのある古いペンを使うと、その抵抗に合わせて自分の考えを整理しながら一文字ずつ丁寧に置くようになります。この、わずかな「不自由さ」が、実は脳を刺激し、新しいアイデアを引き出すためのトリガーになっているのです。
デザインの世界でも、ユーザーをあまりに甘やかしすぎると、彼らは情報の海をただ滑り落ちるだけで、何も心に残らないまま立ち去ってしまいます。あえて少しだけ考えさせる余白を作ったり、直感とは少しだけ違う動きを取り入れたりすることで、初めてそこに「対話」が生まれます。完璧に自動化された世界では失われがちな、試行錯誤のプロセスこそが、私たちが何かを深く理解し、愛着を持つための鍵になるのではないでしょうか。
最新のツールを使いこなすことはプロとして当然のスキルですが、それと同時に、あえて不便な環境に身を置いてみる勇気も持ち合わせていたい。効率の先にあるのは完成品ですが、不便の先にあるのは、自分自身の手で何かを成し遂げたという確かな実感です。もしあなたが、今の仕事や環境が整いすぎていて、どこか退屈さを感じているなら、あえて使いにくい道具を一つ取り入れてみてください。
そのわずかなストレスが、あなたの眠っていた感覚を呼び覚まし、誰も思いつかなかったような斬新な答えへと導いてくれるかもしれません。便利すぎる時代だからこそ、私たちは「不便を楽しむ力」を磨くべきだと思うのです。私は、そんな少しの引っかかりを大切にしながら、使う人の心に深く刻まれるような温度感のあるものづくりを続けていきたいと考えています。