人の感情が大切であることが分かった。感情さえあれば、人の営みである行動変容は実現できるのだろうか?答えはNO、もう一つ大切なものがある。それはSTORYだ。小説や映画のワンシーンを見ていると、知らずに涙が出てしまったり、思わず身を乗り出し拳を強く握りしめてしまったりしていることはないだろうか?毎回、決まったパターンがあるにも関わらず、脳はそれに抗うことができない。主人公に訪れる「平穏や弛まぬ努力→ピンチ→克服」といったジェットコースターの様な感情の軌道が主なパターンとなるが、ピンチでハラハラして、克服で「よしっつ!」と呟いてしまう。このパターンはAND(そして)、BUT(しかし)、THERFORE(したがって)というストーリーテリングの基本構造と重なる。表現は違うが、ハリウッド脚本術の基本である三幕構成の、設立(Setup)、対立/葛藤(Confrontation)、解決(Resolution)とも本質的には同じである。STORYは過去の耐え難い悔しさを鍛錬により克服した喜びかもしれない。または、同じ悔しさを経験した仲間との出会いと一緒に克服する喜びかもしれない。STORYの主人公と自分自身を重ね合わせ、脳内が同調することにより共感が生まれ当事者意識が芽生える。自分事としてとらえるから、知らず涙が流れ、拳を強く握りしめてしまうのである。今まさにTVで「さば缶、宇宙へ行く」を観ながら、知らずに涙してしまっている自分がいる。子供の頃、亡き母もTVを観ながらよく泣いていた。そして子供たちに涙を見せないように、必ず洗面所に行く姿を今も覚えている。素敵な遺伝子を授かったと思っている。ちなみに、脳内の状態はfMRIで覗くことができるが、共感している人達の脳内の血流は同じパターンになっているらしい。感情的要素や価値観、そしてSTORYを活用した言語化などの定性的要素が大切である理由はここにある。ここで少しだけ脱線をする。世の中にはパレートの法則がある。20%の優秀な人が80%の実績を構築しているという多くの人が知っている法則だ。世の中の優秀な事例は、20%の優秀な事例が多い印象がある。本人の努力もあると思うが、担当しているお客様に恵まれていたなどの外的要因や、たまたまそのお客様に解決策がマッチしただけかもしれない。必ずしも全員が輝かしい20%になれるわけではない。そのような事例に心を動かされないのではないだろうか?それより、80%の環境に恵まれなかったかもしれない人が、苦難の末勝ち取った成功を、もしくは失敗してしまい悔しい想いを事例とした方が、もしかしたら私にもできるかもしれない!、僕も挑戦してみよう!という、沢山の共感を産むSTORYになるのではないだろうか?この方が組織は活性化しそうな気がする。
だが、そのためには心理的安全性が担保された環境が欠かせない。ありのままの自分で居ることが許される、恐れが無い、辱められることのない、自己効力感が不可欠である。このような外的、内的な環境が整って初めて内発的な原動力が生まれる。ここで灯った火はちょっとやそっとの事で消えない。私は、デザイン思テストがきっかけで参加した社内起業のワークショップが、内発的原動力に火を灯す転機となった。昔の自分であれば想像もできないが、社内起業の公募に関連会社の方と一緒に挑戦してしまった。残念な結果に終わってしまったが、そして何が出来るかわからないが、まだ火は燻っている気がする。しかも、定年間際の57歳が…。