🌺海に生かされて – Okinawa Days
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vol.4「カメと過ごした午後 ― 命と静けさの交わり」
午後の陽がやわらかくなり始めたころ、
海の色が、少しだけ深くなった。
潜降ロープを伝って静かに降りていくと、
水の底でゆっくりと動く影が見えた。
それは一匹のアオウミガメ。
白い砂の上で、目を閉じたまま、
まるで夢を見ているように呼吸をしていた。
私はその少し先、距離を置いてただ漂う。
近づかない。
けれど、確かに“同じ時間”を生きていると感じる。
泡の音、遠くのクジラの低い声、
そして、静けさ。
この海の中では、すべてが穏やかにひとつに溶け合っていく。
カメがゆっくりと目を開けた。
その瞳の奥には、言葉では言い表せない深さがあった。
何千もの波を見てきた命だけが知る、
静かな確かさのようなもの。
やがて彼は、私のすぐそばを通り過ぎ、
光の方へと泳ぎ出した。
その背中を見送りながら、私は思う。
“生きる”とは、抗うことではなく、
この静けさの中に身をゆだねることなのかもしれない、と。
浮上したとき、海面には柔らかな陽光が広がっていた。
風が頬を撫で、潮の匂いが一瞬、甘く感じられる。
あのカメも、今ごろ同じ光を見上げているのだろうか。
命のリズムは違っても、
海の中では、すべてが共鳴している。
今日という午後もまた、その証のように。
🌿あとがきメモ
海の中では、言葉はなくても、通じ合える瞬間がある。
それは“命と命のあいだ”に流れる、
目に見えない静けさの言葉。