第6回:店長から学んだ“不動産の心得”
第6回:店長から学んだ“不動産の心得”
バイトを始めてから、店長の言葉にハッとさせられる瞬間がたびたびあります。
業界歴30年以上。口数は多くないけれど、時々こぼれる言葉には“人と暮らし”に向き合ってきた重みがありました。
今日は、その中でも特に心に残っている店長の言葉を紹介したいと思います。
■ 「部屋じゃなくて、“人”を見るんや」
ある日、店長と一緒に接客をしていたときのこと。
お客様が希望条件を箇条書きのように伝えてくれたあと、店長は少し笑って言いました。
「条件は大事やけどな、
どんな暮らしがしたいか聞くほうが、ええ部屋に出会えるんよ」
部屋探しは、チェックリストを埋める作業ではない。
その人の人生の“これから”を一緒に想像する時間なんだと気づきました。
■ 「丁寧な一言は、信頼につながる」
電話対応を練習していたとき、店長が気にしていたのは言葉遣いよりも“声の表情”でした。
「言葉の正しさより、相手が安心できる声かどうか。
不動産は信頼で成り立っとるけんな」
「この人なら任せられる」と思ってもらえるかどうか。
それは、たった一言の“丁寧さ”に宿ると知りました。
■ 「家は売って終わり、貸して終わりじゃないんよ」
契約が決まったお客様が帰られた後、僕が「よかったですね」と言うと、店長は少し真面目な顔で答えました。
「ここから始まるんや。
喜んでもろたその先まで、ちゃんと面倒みるんが仕事よ」
契約はゴールじゃなくスタート。
そこから、修繕、更新、引っ越し…とお客様の暮らしは続いていく。
“人生の一部”を預かる責任を感じました。
■ 「数字より、“ありがとう”が嬉しいもんや」
家賃や契約数の話になると、店長はいつもこう言います。
「数字が上がるのはもちろんええこと。
でもな、『ありがとう』って言われた日が一番ええ日になるんや」
その言葉には、長くこの町で信頼を積み重ねてきた店長の生き方が滲んでいました。
僕もいつか、誰かにそう言ってもらえる人になりたい。
■ 店長の言葉が教えてくれたこと
店長の言葉を聞いていると、不動産の仕事って、
“建物”より“人”を大切にする仕事なんだと感じます。
家を紹介する前に、
その人の気持ちに寄り添えるかどうか。
丁寧さと誠実さは、どんな物件より価値がある。
そんなことを、店長はさりげなく教えてくれている気がします。
今日の学び:
暮らしに寄り添う姿勢は、言葉の端々から伝わる。