賞味期限のないジャムを作るような仕事
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こんにちは!前嶋拳人です
デパートの食品売り場でずらりと並んだ瓶詰めを眺めていたとき、ふと、自分たちの仕事にも賞味期限があるのではないかと恐ろしくなったことがあります。技術の世界は日進月歩で、今日学んだ最新の知識が一年後には古びたガラクタに見えることも珍しくありません。かつて大手企業で基幹システムを支えていた頃、僕は常に「壊れないこと」を第一に考えていました。それはまるで、防腐剤をたっぷりと入れて、何十年も味を変えずに保存することだけを目的とした巨大な缶詰を作っているような感覚でした。確かに安心で安全ではありましたが、そこに作り手としての純粋な喜びや、食べる人の笑顔を直接感じる機会は少なかったように思います。
独立してフリーランスとして活動するようになり、僕の視点は少しずつ変わり始めました。今僕が作りたいのは、保存することだけを目的とした缶詰ではなく、旬の果実を丁寧に煮詰めて作る、手作りのジャムのような仕事です。季節ごとに最も輝いている素材を選び出し、砂糖の加減や火の通り具合を自分の五感で確かめながら、その時にしか出せない最高の一瓶を完成させる。もちろん手作りのものには、いつか美味しく食べられなくなる期限があるかもしれません。でも、その瞬間にしか味わえない感動や、一口食べた瞬間に広がる温かな驚きは、どんなに完璧に保存された工業製品にも勝る価値があるのだと気づいたのです。
多くの人が、キャリアを積み上げることを「資産を増やすこと」だと捉えています。でも、本当に大切なのは、古びていく知識を溜め込むことではなく、常に新しい素材を自分の手で調理し続ける、その「感性」を錆びつかせないことではないでしょうか。失敗を恐れて安定したレシピに執着するのではなく、あえて少しだけ隠し味を変えてみる。そんな冒険心が、誰かの人生を豊かにする新しい仕組みを生み出すきっかけになると僕は信じています。画面の向こう側にいる使い手が、僕の書いたコードを通じて「何だか今日はいい日だな」と感じてくれる。そんな、数値化できないけれど確かな幸せを届けることが、僕にとってのエンジニアとしての誇りです。
もちろん、一人で荒野に立つ不安はあります。自分の判断一つで味が変わってしまう責任の重さに、足がすくむ夜もあります。でも、そんなときこそ、かつて大きな組織で学んだ「丁寧さ」や「誠実さ」という基礎が、自分を支える強固な土台になります。基本を疎かにせず、その上で自分だけの遊び心を加えていく。そんなバランス感覚を持ち続けながら、僕は明日もまた、新しい素材に向き合おうと思います。
世界は常に変化し続けています。昨日までの正解が、今日は通用しないかもしれません。でも、だからこそ面白い。自分自身もまた、変化し続ける果実の一部でありたい。甘酸っぱい挑戦の記憶を瓶に詰め込んで、誰かの手元に届ける。その繰り返しが、いつか僕自身の人生を、誰にも真似できない芳醇な物語へと変えていくのだと確信しています。あなたは今日、どんな素材を手に取りましたか。もし良ければ、一緒に最高の一瓶を作り上げるための冒険に出かけませんか。そこにはきっと、想像もしなかったような鮮やかな未来が待っているはずです。