【映画レビュー】戦後80年、私たちがペリリュー島から受け取るべき「命のバトン」:『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』
こんにちは、戸川みゆきです。
先日、劇場アニメーション映画『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』の試写を拝見し、映画公式Instagramにオピニオンコメントを寄せさせていただきました。
実は私にとって、ペリリュー島は非常に思い入れの深い場所です。実際に現地へ足を運び、そこで眠る戦車や静かな海、そして語り継がれる歴史を肌で感じてきた経験があります。
今回の映画を鑑賞し、あの島で感じた空気感、そして現代を生きる私たちが決して忘れてはならない「記憶」が、鮮烈な映像となって胸に迫ってきました。今回は、140文字のコメントでは書ききれなかった想いを、このストーリーに綴りたいと思います。
「可愛い絵柄」が描き出す、直視できないほどの現実
本作の原作は、第46回日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した武田一義先生の漫画です。初めてこの作品に触れた時、多くの人がその「絵の可愛らしさ」に驚くかもしれません。丸みを帯びたキャラクターたちは、一見すると戦争映画の重苦しさを感じさせない柔らかさを持っています。
しかし、その可愛らしいキャラクターたちが置かれている状況は、あまりにも過酷です。
舞台は太平洋戦争末期、パラオ諸島のペリリュー島。そこはかつて「東洋一の飛行場」と呼ばれ、激戦の地となりました。主人公・田丸(CV:板垣李光人さん)は漫画家を夢見る青年であり、どこにでもいるような「普通の人」です。そんな彼らが、極限の飢え、乾き、そして死と隣り合わせの戦場に放り込まれます。
絵が柔らかいからこそ、欠損や死、そして精神が摩耗していく描写が、より一層「現実」として突き刺さってくる。これは、単なる悲劇の物語ではなく、そこに確かに生きていた「人」の記録なのだと感じました。
実際にペリリュー島を訪れて感じたこと
私は2018年、実際にパラオのペリリュー島を訪れました。今のペリリュー島は、驚くほど透明な海に囲まれた、静かで美しい楽園のような場所です。
しかし、一歩森の中へ入れば、そこには今も錆びついた戦車が置かれ、日本軍が立てこもった洞窟(ガマ)がそのまま残っています。南国の強い日差しの中で、静かに朽ちていく鉄の塊を目の当たりにした時、「ここで本当に、何万人もの命が散っていったのだ」という事実が、言葉にならない重みで押し寄せてきました。
映画の中で、中村倫也さん演じる吉敷の視点や田丸の葛藤を見ていると、現地で見たあの景色が重なりました。彼らが見上げていた空と、私が現地で見上げた空はつながっている。そう思うと、戦後80年という月日が、決して遠い昔のことではないのだと痛感させられます。
戦うしかなかった人々、決して美化してはいけない歴史
公式コメントでも述べましたが、この映画は決して戦争を美化するものではありません。
そこにあるのは、英雄としての姿ではなく、ただ「生きたい」と願い、あるいは「死ぬのが怖い」と思いながら、それでも戦うしかなかった人々の、むき出しの姿です。
現代を生きる私たちは、平和が当たり前の日常を過ごしています。好きな仕事をし、美味しいものを食べ、大切な人と笑い合える。しかし、その「当たり前」の礎には、この映画に描かれたような壮絶な歴史があることを忘れてはならないと思います。
「戦うしかなかった人々」の想いを、私たちはどう受け止めるべきか。それは、彼らの犠牲を嘆くことだけでなく、今私たちが手にしている「平和な日常」をどれだけ大切にし、全力で生き抜くかということではないでしょうか。
なぜ、今この映画を観るべきなのか
2025年は、戦後80年という大きな節目の年でした。戦争を体験された方々が少なくなり、記憶の風化が危惧される今、アニメーションという手法でこの物語が描かれることには、非常に大きな意味があると感じています。
実写では生々しすぎて目を背けてしまうような凄惨な場面も、アニメーションというフィルターを通すことで、私たちは「自分たちの問題」として受け入れる準備ができます。そして、板垣李光人さんや中村倫也さんといった、今の時代を代表する表現者たちが命を吹き込むことで、若い世代にも届く力強い作品になっています。
この映画は、私たち日本人が必ず観るべき一本です。
終わりに:未来へのメッセージ
『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』を観終わった後、劇場を出て見上げた空は、いつもより少しだけ特別に見えました。
私が経営や活動を通じて大切にしているのは、「いかにして次世代に良いバトンを渡していくか」ということです。ペリリュー島で散っていった先人たちが、命がけで守ろうとした未来が、今の私たちの生きる世界です。
私たちは、そのバトンをしっかりと受け取り、より良い未来を創る責任がある。この映画は、そんな勇気と覚悟を私に与えてくれました。
2025年12月5日公開からの上映期間中、ぜひ多くの方に劇場へ足を運んでいただきたいです。そして、観終わった後に、皆様の大切な人や、今ある幸せについて、静かに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
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